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第4章 学園生活
第20話 予想外の出来事
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「バッカス、もう大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫。ごめんな。」
バッカスはだいぶ身体に力が戻ってきたようで、自力で立ち上がることが出来た。
それを遠目で見ていたハリーも一安心といったところであった。
ルーズハルトはハリーからの依頼もあったため、快くとはいかないまでもバッカスに教えることはやぶさかではなかった。
「じゃあ、バッカス。もう一度おさらいするよ?まずは魔力励起。」
ルーズハルトの合図で、バッカスは魔力を取り出すために【魔力炉】に火をともす。
するとバッカスの身体から微かに蒸気が立ち上り始める。
「いい調子いい調子、次は魔力循環。間違ってもさっきみたいに調子乗るなよ?」
バッカスは一瞬びくりとしたが、それでも集中を途切れさせることはなかった。
先ほどまでとは打って変わって、慎重に魔力に回転力を与えていく。
そしてゆっくりと手足に向かって魔力を流し始めた。
それはあまりのゆっくりさに、見ているものからしたらのろまに見えるだろう。
しかしそれをルーズハルトは笑うことはなかった。
なぜなら、それは制御ができているという証拠でもあったからだ。
その速度を自在に操るのが最終目標。
図らずしもさっき経験した事が、ここで生かされていたのだ。
「そうゆっくり……ゆっくり……」
「やっと右手の先に……で、これを……戻……す。」
時間をかけてゆっくりと魔力を動かしていくバッカス。
さすがのあまりの遅さにクラスメートたちはクスクスと笑いをこらえることが出来なくなっていた。
だがハリーや補助講師それと数名のクラスメートたちはそのことについて驚きを覚えていた。
確かに早く動かそうと思えば動かせる。
現にクラスメートたちも早く動かすことは出来る。
だが、逆にここまで意識して遅く動かすことは出来ない。
「よし戻った……ここからさらに上乗せして……流す。」
バッカスはまたゆっくりと魔力を身体にいきわたらせていく。
上乗せさせれた魔力は、バッカスの身体能力を徐々に上げていく。
それは脳なども同様で、思考がどんどんクリアになっていく感覚が不思議でならなかった。
「バッ……カ……ス……!!や……め……ろ……!!」
「え?」
バッカスの耳に届いたのは焦るルーズハルトの声だった。
だがその声は酷く遅く聞こえる。
不意に周囲を見渡すと、世界の色が色褪せて見える。
「【マジックキャンセル】!!」
パリン!!と訓練場に響くガラスが砕け散るような音。
バッカスは何が起こったのか分からなかった。
魔力暴走なら先程みたいに倦怠感が襲ってくる。
だが、バッカスにはその感覚は全く無かった。
「大丈夫かバッカス!?」
「あ、あぁ。大丈夫。なんともないよ……でもどうしてそんなに慌ててるのさ?」
キョトンとした表情を浮かべるバッカス。
当の本人は自分が起こしたことの意味を全く理解してはいなかった。
「バッカス君も回復したようですね。ルーズハルト君に任せれば、循環までは問題ないでしょう。」
バッカスとルーズハルトが訓練を再開した頃、ハリーはバッカスの体調を気にかけていたが、問題はないだろうと意識を他の生徒に向けた。
生徒たちは徐々にコントロールの初期段階になるつつあった。
補助講師とともに生徒へ指導を行っているとき、違和感を感じ始めた。
生徒たちが途端にコントロールを失い始めたのだ。
最初は小さな失敗だったり、僅かな乱れ程度だった。
ハリーも少し根を詰めすぎたかと、一度授業を止めるかと考えていた。
だがその判断はすでに遅いものとなってしまった。
今度は魔力励起ができない生徒が現れ始めたのだ。
流石にこれはおかしいと魔力の流れを探った。
ハリーはこの時自分の判断の甘さを痛感した。
周囲の魔力がある一点に集中し始めていたのだ。
「ルーズハルト君!!」
「ハリー先生!!バッカスが周りの魔力を!!」
ルーズハルトの必死な叫びがハリーに届く。
異常事態を知らせるルーズハルトの叫びに内心舌打ちをしてしまう。
それはバッカスに向けたものではなく、己の配慮のなさにだ。
ハリーは一気に自身の限界まで魔力を励起させていく。
このあたりは流石というべきか。
ハリーは消失するよりも高速で魔力励起をすることによって、加速させていったのだ。
十分に行き渡った魔力を感じたハリーは、ギシリと奥歯を噛みしめる。
それはこれから訪れる衝撃に耐える為であった。
「【アクセル】!!」
ハリーの叫びとともに魔力の爆発を感じたルーズハルト、しかし先程までハリーが居た場所には誰もいなかった。
「【マジックキャンセル】!!」
次にハリーの声が聞こえたときには、ハリーはすでにバッカスの元へたどり着いていた。
あたりには高密度で集められた魔力が霧散していく。
キラキラと輝くそれは、ふきんしんにも美しく幻想的であった。
「大丈夫ですかバッカス君?」
「え、あ、はい。大丈夫……です。」
バッカスはハリーの問の意味が分からなかった。
バッカスとしては問題なくコントレールができていたのだ。
ただそれは自身の魔力だけではなかったが。
「大丈夫かバッカス!?」
「あ、あぁ。大丈夫。なんともないよ……でもどうしてそんなに慌ててるのさ?」
ルーズハルトまで慌てたようにしていたため、バッカスは余計混乱していたのだった。
「あぁ、大丈夫。ごめんな。」
バッカスはだいぶ身体に力が戻ってきたようで、自力で立ち上がることが出来た。
それを遠目で見ていたハリーも一安心といったところであった。
ルーズハルトはハリーからの依頼もあったため、快くとはいかないまでもバッカスに教えることはやぶさかではなかった。
「じゃあ、バッカス。もう一度おさらいするよ?まずは魔力励起。」
ルーズハルトの合図で、バッカスは魔力を取り出すために【魔力炉】に火をともす。
するとバッカスの身体から微かに蒸気が立ち上り始める。
「いい調子いい調子、次は魔力循環。間違ってもさっきみたいに調子乗るなよ?」
バッカスは一瞬びくりとしたが、それでも集中を途切れさせることはなかった。
先ほどまでとは打って変わって、慎重に魔力に回転力を与えていく。
そしてゆっくりと手足に向かって魔力を流し始めた。
それはあまりのゆっくりさに、見ているものからしたらのろまに見えるだろう。
しかしそれをルーズハルトは笑うことはなかった。
なぜなら、それは制御ができているという証拠でもあったからだ。
その速度を自在に操るのが最終目標。
図らずしもさっき経験した事が、ここで生かされていたのだ。
「そうゆっくり……ゆっくり……」
「やっと右手の先に……で、これを……戻……す。」
時間をかけてゆっくりと魔力を動かしていくバッカス。
さすがのあまりの遅さにクラスメートたちはクスクスと笑いをこらえることが出来なくなっていた。
だがハリーや補助講師それと数名のクラスメートたちはそのことについて驚きを覚えていた。
確かに早く動かそうと思えば動かせる。
現にクラスメートたちも早く動かすことは出来る。
だが、逆にここまで意識して遅く動かすことは出来ない。
「よし戻った……ここからさらに上乗せして……流す。」
バッカスはまたゆっくりと魔力を身体にいきわたらせていく。
上乗せさせれた魔力は、バッカスの身体能力を徐々に上げていく。
それは脳なども同様で、思考がどんどんクリアになっていく感覚が不思議でならなかった。
「バッ……カ……ス……!!や……め……ろ……!!」
「え?」
バッカスの耳に届いたのは焦るルーズハルトの声だった。
だがその声は酷く遅く聞こえる。
不意に周囲を見渡すと、世界の色が色褪せて見える。
「【マジックキャンセル】!!」
パリン!!と訓練場に響くガラスが砕け散るような音。
バッカスは何が起こったのか分からなかった。
魔力暴走なら先程みたいに倦怠感が襲ってくる。
だが、バッカスにはその感覚は全く無かった。
「大丈夫かバッカス!?」
「あ、あぁ。大丈夫。なんともないよ……でもどうしてそんなに慌ててるのさ?」
キョトンとした表情を浮かべるバッカス。
当の本人は自分が起こしたことの意味を全く理解してはいなかった。
「バッカス君も回復したようですね。ルーズハルト君に任せれば、循環までは問題ないでしょう。」
バッカスとルーズハルトが訓練を再開した頃、ハリーはバッカスの体調を気にかけていたが、問題はないだろうと意識を他の生徒に向けた。
生徒たちは徐々にコントロールの初期段階になるつつあった。
補助講師とともに生徒へ指導を行っているとき、違和感を感じ始めた。
生徒たちが途端にコントロールを失い始めたのだ。
最初は小さな失敗だったり、僅かな乱れ程度だった。
ハリーも少し根を詰めすぎたかと、一度授業を止めるかと考えていた。
だがその判断はすでに遅いものとなってしまった。
今度は魔力励起ができない生徒が現れ始めたのだ。
流石にこれはおかしいと魔力の流れを探った。
ハリーはこの時自分の判断の甘さを痛感した。
周囲の魔力がある一点に集中し始めていたのだ。
「ルーズハルト君!!」
「ハリー先生!!バッカスが周りの魔力を!!」
ルーズハルトの必死な叫びがハリーに届く。
異常事態を知らせるルーズハルトの叫びに内心舌打ちをしてしまう。
それはバッカスに向けたものではなく、己の配慮のなさにだ。
ハリーは一気に自身の限界まで魔力を励起させていく。
このあたりは流石というべきか。
ハリーは消失するよりも高速で魔力励起をすることによって、加速させていったのだ。
十分に行き渡った魔力を感じたハリーは、ギシリと奥歯を噛みしめる。
それはこれから訪れる衝撃に耐える為であった。
「【アクセル】!!」
ハリーの叫びとともに魔力の爆発を感じたルーズハルト、しかし先程までハリーが居た場所には誰もいなかった。
「【マジックキャンセル】!!」
次にハリーの声が聞こえたときには、ハリーはすでにバッカスの元へたどり着いていた。
あたりには高密度で集められた魔力が霧散していく。
キラキラと輝くそれは、ふきんしんにも美しく幻想的であった。
「大丈夫ですかバッカス君?」
「え、あ、はい。大丈夫……です。」
バッカスはハリーの問の意味が分からなかった。
バッカスとしては問題なくコントレールができていたのだ。
ただそれは自身の魔力だけではなかったが。
「大丈夫かバッカス!?」
「あ、あぁ。大丈夫。なんともないよ……でもどうしてそんなに慌ててるのさ?」
ルーズハルトまで慌てたようにしていたため、バッカスは余計混乱していたのだった。
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