60 / 97
第4章 学園生活
第18話 魔力循環
しおりを挟む
「では講義を始めます。皆さん、魔力励起についてはできるようになりましたね。これは基礎を行うための基礎。言わばできることが前提で魔導師としての訓練があります。次に皆さんに挑戦してもらうのが〝魔力循環〟です。ではイーラロマン君、その効果はわかりますか?」
次の講義が始まり、ハリーの説明にバッカスは肩を落としていた。
隣りにいたルーズハルトの耳にやっと届くかの声で『マジか……』の呟き、今にも崩れ落ちそうなほど悲壮感を漂わせていた。
ハリーに指名されたイーラロマンとルーズハルトは一瞬視線があった。
イーラロマンはルーズハルトをひと睨みすると、ハリーに向き直った。
「魔力励起によって高められた魔力を魔力循環によって肉体を巡らせる。その効果は2つです。一つは体を強くすること。もう一つは高速循環させることで魔法の威力・効果を高めます。」
「はい、正解です。ただし一つだけ皆さんに伝えておくことがあります。それはその説は今のところ正しいということです。おおよそ間違いではないでしょう。魔法師の先人たちがその説を実行し、そして効果を得ていますからね。それを踏まえた上で皆さんにお願いです。今までの常識を鵜呑みにしてはいけません。常に疑い、常に思考し、常に自分実行する。それが魔導師の本質です。」
正解と言われ一瞬喜色ばんだ顔を、今度は一転して落胆の顔にしたイーラロマン。
何をそんなに焦っているのかルーズハルトには分からなかった。
それについて理解しているのは、教師であるハリーだけであった。
「では理論についての説明です。特に難しいことはありません。みなさんは魔力励起を行ったとき、どこからその魔力が湧いてきたか感じたはずです。その魔力を身体の内か外どちらでもいいので渦を作るイメージをしてみてください。」
いまいち抽象的な説明に困惑する生徒たち。
こればかりは本人の感覚でしかないため、ハリーもこう説明せざるを得なかった。
そんな中一番に魔力循環をしてみせたのは、意外にもルーズハルトであった。
これもオーフェリアとの特訓の賜物で、コントロールが上手く行かない中で試行錯誤した末、なんとかギリギリ形にできていた。
それがハリーから制御用魔導具を受け取ったことで、容易に魔力コントロールができるようになっていたのだ。
ただし出力そのものは大幅に下がっており、以前フェンガーを圧倒したときのような身体能力強化などは難しくなっていた。
「うん、無駄のない良い循環です。試しにそのまま足に集中させてみてください。」
ルーズハルトはハリーに促されるように魔力循環を下半身に集中させる。
今までの無理矢理感があった制御も、かなりスムーズにでき、ルーズハルト本人が驚いてしまった。
「そのままその場飛びを。」
ルーズハルトは軽くのつもりで地面を蹴った。
ダガ本人のイメージとは違い、優に2メートルは足が地面から離れていた。
「え?」
驚きを隠せないルーズハルト。
周りを見回しても、クラスメートたちも驚いた表情を浮かべていた。
「このように、魔力循環を制御できれば魔法を使わずとも、このくらいのことが出来るようになります。」
百聞は一見に如かずとはこのことであろうか。
現実を目の当たりにした生徒たちの目の色が変わった。
我先にと魔力励起を始め、魔力循環に移行していく。
しかし言うが易し行うは難し。
試行錯誤するもなかなかうまく行かなかった。
数名の生徒は成功したようで、その中には当然のようにイーラロマンも含まれていた。
意外なところではリンドも成功していたようであった。
成功した本人も驚いたようで、ハリーの助言を受けてその循環速度のコントロールを行っていた。
「なぁ……」
「わかってるって。」
バッカスは例に漏れず魔力循環に失敗していた。
ルーズハルトも乗りかかった船と、バッカスの面倒を見ていたのであった。
「バッカス、一番魔力を感じる場所はどこなんだ?」
ルーズハルトに言われた通り魔力励起を行うと、バッカスはその出処に集中していく。
幾分経った頃だろうか……
やっとその場所が掴めたようで、バッカスは嬉しそうにしていた。
「やっと見つけたぁ~。丁度この辺りだね。」
そう言って指さしていたのは胸骨の中央辺りであった。
「じゃあ、そこから体中に魔力が流れているのは感じる?」
「あぁ、それはなんとなくわかる。」
手をグーパーと動かしたら足を動かしたり、バッカスは何故か奇妙な動きをしていた。
「じゃあ、〝螺旋〟とか〝渦巻〟のイメージはできる?」
「いや、俺はそれ知らない。」
ルーズハルトはこのとき初めて気がついた。
知識量の差が魔法を使うのにこれほどまで影響を与えるということに。
どうやって伝えればいいかと悩んでいると、ハリーが助け舟を出してくれた。
「バッカス君。ルーズハルト君が言いたいことは、君がよく知るネジの形のことですよ。」
「あぁ~あれか!!あのグルグルしたやつ!!」
ハリーのヒントにイメージが湧いたのか、バッカスはすぐに魔力の供給速度を上昇させてみせた。
「そうそう、それ。あとはその行ったきりの魔力を体に沿ってまた元の場所に戻すんだ。」
「ちょっと待って……こう……か?」
体の端まで行き届いた魔力が、一気に戻っくる感覚。
バッカスはこれまでに経験したことの無い感覚に戸惑いを覚えたのだった。
次の講義が始まり、ハリーの説明にバッカスは肩を落としていた。
隣りにいたルーズハルトの耳にやっと届くかの声で『マジか……』の呟き、今にも崩れ落ちそうなほど悲壮感を漂わせていた。
ハリーに指名されたイーラロマンとルーズハルトは一瞬視線があった。
イーラロマンはルーズハルトをひと睨みすると、ハリーに向き直った。
「魔力励起によって高められた魔力を魔力循環によって肉体を巡らせる。その効果は2つです。一つは体を強くすること。もう一つは高速循環させることで魔法の威力・効果を高めます。」
「はい、正解です。ただし一つだけ皆さんに伝えておくことがあります。それはその説は今のところ正しいということです。おおよそ間違いではないでしょう。魔法師の先人たちがその説を実行し、そして効果を得ていますからね。それを踏まえた上で皆さんにお願いです。今までの常識を鵜呑みにしてはいけません。常に疑い、常に思考し、常に自分実行する。それが魔導師の本質です。」
正解と言われ一瞬喜色ばんだ顔を、今度は一転して落胆の顔にしたイーラロマン。
何をそんなに焦っているのかルーズハルトには分からなかった。
それについて理解しているのは、教師であるハリーだけであった。
「では理論についての説明です。特に難しいことはありません。みなさんは魔力励起を行ったとき、どこからその魔力が湧いてきたか感じたはずです。その魔力を身体の内か外どちらでもいいので渦を作るイメージをしてみてください。」
いまいち抽象的な説明に困惑する生徒たち。
こればかりは本人の感覚でしかないため、ハリーもこう説明せざるを得なかった。
そんな中一番に魔力循環をしてみせたのは、意外にもルーズハルトであった。
これもオーフェリアとの特訓の賜物で、コントロールが上手く行かない中で試行錯誤した末、なんとかギリギリ形にできていた。
それがハリーから制御用魔導具を受け取ったことで、容易に魔力コントロールができるようになっていたのだ。
ただし出力そのものは大幅に下がっており、以前フェンガーを圧倒したときのような身体能力強化などは難しくなっていた。
「うん、無駄のない良い循環です。試しにそのまま足に集中させてみてください。」
ルーズハルトはハリーに促されるように魔力循環を下半身に集中させる。
今までの無理矢理感があった制御も、かなりスムーズにでき、ルーズハルト本人が驚いてしまった。
「そのままその場飛びを。」
ルーズハルトは軽くのつもりで地面を蹴った。
ダガ本人のイメージとは違い、優に2メートルは足が地面から離れていた。
「え?」
驚きを隠せないルーズハルト。
周りを見回しても、クラスメートたちも驚いた表情を浮かべていた。
「このように、魔力循環を制御できれば魔法を使わずとも、このくらいのことが出来るようになります。」
百聞は一見に如かずとはこのことであろうか。
現実を目の当たりにした生徒たちの目の色が変わった。
我先にと魔力励起を始め、魔力循環に移行していく。
しかし言うが易し行うは難し。
試行錯誤するもなかなかうまく行かなかった。
数名の生徒は成功したようで、その中には当然のようにイーラロマンも含まれていた。
意外なところではリンドも成功していたようであった。
成功した本人も驚いたようで、ハリーの助言を受けてその循環速度のコントロールを行っていた。
「なぁ……」
「わかってるって。」
バッカスは例に漏れず魔力循環に失敗していた。
ルーズハルトも乗りかかった船と、バッカスの面倒を見ていたのであった。
「バッカス、一番魔力を感じる場所はどこなんだ?」
ルーズハルトに言われた通り魔力励起を行うと、バッカスはその出処に集中していく。
幾分経った頃だろうか……
やっとその場所が掴めたようで、バッカスは嬉しそうにしていた。
「やっと見つけたぁ~。丁度この辺りだね。」
そう言って指さしていたのは胸骨の中央辺りであった。
「じゃあ、そこから体中に魔力が流れているのは感じる?」
「あぁ、それはなんとなくわかる。」
手をグーパーと動かしたら足を動かしたり、バッカスは何故か奇妙な動きをしていた。
「じゃあ、〝螺旋〟とか〝渦巻〟のイメージはできる?」
「いや、俺はそれ知らない。」
ルーズハルトはこのとき初めて気がついた。
知識量の差が魔法を使うのにこれほどまで影響を与えるということに。
どうやって伝えればいいかと悩んでいると、ハリーが助け舟を出してくれた。
「バッカス君。ルーズハルト君が言いたいことは、君がよく知るネジの形のことですよ。」
「あぁ~あれか!!あのグルグルしたやつ!!」
ハリーのヒントにイメージが湧いたのか、バッカスはすぐに魔力の供給速度を上昇させてみせた。
「そうそう、それ。あとはその行ったきりの魔力を体に沿ってまた元の場所に戻すんだ。」
「ちょっと待って……こう……か?」
体の端まで行き届いた魔力が、一気に戻っくる感覚。
バッカスはこれまでに経験したことの無い感覚に戸惑いを覚えたのだった。
35
お気に入りに追加
309
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く
ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの…
乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。
乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い!
原作小説?1巻しか読んでない!
暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。
だったら我が道を行くしかないじゃない?
両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。
本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。
※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました)
※残虐シーンは控えめの描写です
※カクヨム、小説家になろうでも公開中です
悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい
たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた
人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ
そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ
そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄
ナレーションに
『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』
その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ
社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう
腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄
暫くはほのぼのします
最終的には固定カプになります
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
【完結】私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます
最後に、お願いがあります
狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。
彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす
Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二
その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。
侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。
裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。
そこで先天性スキル、糸を手に入れた。
だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。
「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」
少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる