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第4章 学園生活
第17話 魔力励起
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「それでは基礎訓練をはじめましょう。まずは魔力回路の励起循環から。」
1年Eクラスは現在訓練施設にて魔法基礎の訓練を行っていた。
これは入学後から行われていることで、魔法初心者にとってはこれですら難しい課題である。
普段から感覚的に初期魔法を使っている生徒たちだが、いざ理論的に使おうとしてもうまくいかないのである。
「まずは魔力の励起から……。はじめ!!」
それぞれが一番リラックスした姿勢で魔力の励起を始める。
現在主流となっている理論は、体内に仮想臓器である【魔力炉】というモノが存在し、そこを中心に魔力が循環しているというものだった。
だがその【魔力炉】の位置はいまだ特定されておらず、頭という学者もいれば心臓付近だというモノもいた。
武術的に言う〝丹田〟と呼ばれるものだとも言われているが、はっきりとしたことは確立されていない。
その為、学園でも〝自分が一番魔力を感じる場所〟という抽象的な教え方を余儀なくされていた。
理論として行う鍛錬で、抽象的器官を使用する。
それがまだ魔法に慣れていない初心者たちの混乱に拍車をかける事態となっていた。
「なぁ、ルーズハルト。俺全くわかんないんだけど……」
バッカスは今だ自発的励起には至っておらず、焦りを感じていた。
それでもハリーはそれを急かすことはしなかった。
せかしたところで出来ないということは常識であったからだ。
ではなぜ無意識化では初期魔法を使うことが出来るのか。
それは魔導具の普及のせいでもあった。
魔導具には簡素化された魔法陣が組み込まれており、それが魔法石と個人の魔力とが反応し、半強制的に魔力を吸い上げているのだ。
ただそれは人の健康被害が出るほどのものではなくごく微量なものだ。
あくまでも魔法石が稼働するための〝スイッチ〟としての役割に等しかった。
だからこそ魔力を使う最初の練習として、家の中にある魔導具の使用が最適であったのだ。
だがこれが逆に【魔力炉】の訓練の妨げになってしまった。
あまりにも無意識化に使用する癖がついてしまい、それを直すことの方がはるかに手間がかかってしまうのだ。
ただしこれは魔法士として学ぶ場合に限った話で、技実職や騎士に至っては魔導具を使用する前提で物事を組み立てているおかげで、【魔力炉】の存在すら知らないものも少なくはなかった。
「俺に聞くなよ……って言っても一応できてる身としては教えないわけにはいかないか……」
ルーズハルトは入学の前のオーフェリアからの特訓のおかげで、なんとかこの課題はクリアしていた。
その際役に立ったのは空手で培った〝気合〟と〝合理〟についての知識だった。
空手はただ殴る蹴るだけのスポーツだと誤解されがちだが、厳格なルールのもとその立ち合いが行われていた。
ルーズハルトもまた師匠に徹底的にそれを教え込まれ、その中に〝操気〟の訓練も含まれていた。
『葛本少年よ、いいかい?人の体には〝気〟と呼ばれる目には見えない何かが流れている。それは〝丹田〟と呼ばれる臓器に集約する。その臓器はこことこことここの3か所にあると言われている。だからそれを常に意識するんだ。これは相手も同じこと。それをいかに崩すか。それが勝つための条件だ。』
それを思い出したルーズハルトは一瞬苦笑いを浮かべた。
あまりにもハードなトレーニングを課す師匠だったがために、付いてこられない門下生たちが後を絶たなかった。
だがルーズハルトはその道場をやめることはなかった。
確かにおかしな師匠ではあった。
だが、トレーニング内容はいたってまじめで、胡散臭さは全くなかった。
つまりやめる理由はルーズハルトには存在していなかったのだ。
「確かこことこことここ。なんか感じないか?」
ルーズハルトはバッカスの眉間と胸骨と下腹部を指でつつく。
するとバッカスの意識がそこに集中したのか、バッカスからわずかに湯気が立ち上がる。
まさに魔力励起が始まった証拠でもあった。
「できた……出来たよルーズハルト!!」
それは弱弱しくも間違いなく魔力であった。
だが興奮のあまり丹田への意識が途切れすぐさまその湯気は霧散していった。
「ほんとあほだよな……」
「ごめん……」
しょぼくれるバッカスに追い打ちをかけるように言い放つルーズハルト。
だがそれは侮蔑するわけではなく、どこか『仕方がないな』とでも言いたげな表情をルーズハルトは見せていた。
それから何度かルーズハルトに手伝ってもらい、バッカスはどうにかこうにか弱くはあるが安定して魔力励起を行うことが出来るようになっていった。
「バッカス君も無事励起できたようだね。では次の課題の循環に入ります。できる人はそのまま循環に移行してください。できない人は一度私のところへ集まってください。」
バッカスが無事魔力励起できたことを確認したハリーは、生徒たちに次の課題を言い渡す。
それは〝魔力循環〟と呼ばれるもので、魔力励起で活性化させた魔力を身体中に行き渡らせるというものである。
これについてはできない生徒が続出した。
これは毎年恒例だったようで、ハリーも特段気にした様子はなかった。
「では次の時間からは魔力循環についてのお話です。」
ハリーの言葉に元気良く反応する生徒たちであった。
1年Eクラスは現在訓練施設にて魔法基礎の訓練を行っていた。
これは入学後から行われていることで、魔法初心者にとってはこれですら難しい課題である。
普段から感覚的に初期魔法を使っている生徒たちだが、いざ理論的に使おうとしてもうまくいかないのである。
「まずは魔力の励起から……。はじめ!!」
それぞれが一番リラックスした姿勢で魔力の励起を始める。
現在主流となっている理論は、体内に仮想臓器である【魔力炉】というモノが存在し、そこを中心に魔力が循環しているというものだった。
だがその【魔力炉】の位置はいまだ特定されておらず、頭という学者もいれば心臓付近だというモノもいた。
武術的に言う〝丹田〟と呼ばれるものだとも言われているが、はっきりとしたことは確立されていない。
その為、学園でも〝自分が一番魔力を感じる場所〟という抽象的な教え方を余儀なくされていた。
理論として行う鍛錬で、抽象的器官を使用する。
それがまだ魔法に慣れていない初心者たちの混乱に拍車をかける事態となっていた。
「なぁ、ルーズハルト。俺全くわかんないんだけど……」
バッカスは今だ自発的励起には至っておらず、焦りを感じていた。
それでもハリーはそれを急かすことはしなかった。
せかしたところで出来ないということは常識であったからだ。
ではなぜ無意識化では初期魔法を使うことが出来るのか。
それは魔導具の普及のせいでもあった。
魔導具には簡素化された魔法陣が組み込まれており、それが魔法石と個人の魔力とが反応し、半強制的に魔力を吸い上げているのだ。
ただそれは人の健康被害が出るほどのものではなくごく微量なものだ。
あくまでも魔法石が稼働するための〝スイッチ〟としての役割に等しかった。
だからこそ魔力を使う最初の練習として、家の中にある魔導具の使用が最適であったのだ。
だがこれが逆に【魔力炉】の訓練の妨げになってしまった。
あまりにも無意識化に使用する癖がついてしまい、それを直すことの方がはるかに手間がかかってしまうのだ。
ただしこれは魔法士として学ぶ場合に限った話で、技実職や騎士に至っては魔導具を使用する前提で物事を組み立てているおかげで、【魔力炉】の存在すら知らないものも少なくはなかった。
「俺に聞くなよ……って言っても一応できてる身としては教えないわけにはいかないか……」
ルーズハルトは入学の前のオーフェリアからの特訓のおかげで、なんとかこの課題はクリアしていた。
その際役に立ったのは空手で培った〝気合〟と〝合理〟についての知識だった。
空手はただ殴る蹴るだけのスポーツだと誤解されがちだが、厳格なルールのもとその立ち合いが行われていた。
ルーズハルトもまた師匠に徹底的にそれを教え込まれ、その中に〝操気〟の訓練も含まれていた。
『葛本少年よ、いいかい?人の体には〝気〟と呼ばれる目には見えない何かが流れている。それは〝丹田〟と呼ばれる臓器に集約する。その臓器はこことこことここの3か所にあると言われている。だからそれを常に意識するんだ。これは相手も同じこと。それをいかに崩すか。それが勝つための条件だ。』
それを思い出したルーズハルトは一瞬苦笑いを浮かべた。
あまりにもハードなトレーニングを課す師匠だったがために、付いてこられない門下生たちが後を絶たなかった。
だがルーズハルトはその道場をやめることはなかった。
確かにおかしな師匠ではあった。
だが、トレーニング内容はいたってまじめで、胡散臭さは全くなかった。
つまりやめる理由はルーズハルトには存在していなかったのだ。
「確かこことこことここ。なんか感じないか?」
ルーズハルトはバッカスの眉間と胸骨と下腹部を指でつつく。
するとバッカスの意識がそこに集中したのか、バッカスからわずかに湯気が立ち上がる。
まさに魔力励起が始まった証拠でもあった。
「できた……出来たよルーズハルト!!」
それは弱弱しくも間違いなく魔力であった。
だが興奮のあまり丹田への意識が途切れすぐさまその湯気は霧散していった。
「ほんとあほだよな……」
「ごめん……」
しょぼくれるバッカスに追い打ちをかけるように言い放つルーズハルト。
だがそれは侮蔑するわけではなく、どこか『仕方がないな』とでも言いたげな表情をルーズハルトは見せていた。
それから何度かルーズハルトに手伝ってもらい、バッカスはどうにかこうにか弱くはあるが安定して魔力励起を行うことが出来るようになっていった。
「バッカス君も無事励起できたようだね。では次の課題の循環に入ります。できる人はそのまま循環に移行してください。できない人は一度私のところへ集まってください。」
バッカスが無事魔力励起できたことを確認したハリーは、生徒たちに次の課題を言い渡す。
それは〝魔力循環〟と呼ばれるもので、魔力励起で活性化させた魔力を身体中に行き渡らせるというものである。
これについてはできない生徒が続出した。
これは毎年恒例だったようで、ハリーも特段気にした様子はなかった。
「では次の時間からは魔力循環についてのお話です。」
ハリーの言葉に元気良く反応する生徒たちであった。
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