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第4章 学園生活
第12話 バッカスという少年
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「なんだ、ルームメイトはバッカスか。」
「お、やっと来たか。それよりも〝なんだ〟は酷くないか?これから1年一緒にやっていくんだから仲良くしてくれよな。」
ルーズハルトのルームメイトは隣の席のバッカスであった。
すでに荷物を整理し終えていたのか、バッカスの机もベッドも私物の荷物が置かれていた。
だが見た目とは違い几帳面なのか、整理整頓が行き届いていた。
何故かルーズハルトのベッドも、バッカスのベッドのようにピシッとなっていたことから、おそらくバッカスが直してくれたのだと理解できた。
「それにしても……なかなか手慣れてるんだな。」
ルーズハルトは感心したように、整理された部屋を見回した。
オーフェリアも綺麗好きだったために、ルーズハルトの家は清潔度が保たれていた。
それは魔法も駆使してという条件付きだが、バッカスはルーズハルトのクラスメイトなだけにまだ扱えるわけではなかった。
魔法の痕跡も確認できないことから、手作業のみでこの清潔度を作り出した。
つまりは技術に優れている証拠でもあった。
「一応俺の家は宿屋をやってるからね。毎日手伝いばっかりったよ。」
そう不満げに答えたバッカスだったが、ルーズハルトが感心した様子を見せたことに気分を良くしていた。
一瞬ルーズハルトと視線があったが、気恥ずかしかったのかバッカスはすぐに視線を外してしまった。
そのそっぽを向く耳は赤みを帯びているだけに、隠しきれてはいなかった。
「それはそうと……話には聞いたけどAクラスのお貴族様とまた揉めたんだって?ほんとそう言うの好きだよな?」
「揉めたくて揉めたんじゃないよ。それにあれはバイト……、俺の幼馴染なんだけど、そっちと揉めた感じだ。」
当時の状況を思い出したルーズハルトは、少し困ったような表情と、どこか他人事のような表情が入り混じり、なんとも複雑そうな表情を浮かべていた。
「それにしても、宿屋の息子が何でまた魔法学園なんかに入ったんだ?技術学園にはそういった専門職のクラスもあっただろ?」
ルーズハルトが言っていたのは王立技術学園【スミスラフト】の専門職クラスの一つである【商科】の事であった。
【商科】には複数のコースが用意されており、その中でも接客業に特化したコースも存在していた。
なぜルーズハルトが技術学園に詳しいかというと、魔法の基礎をオーフェリアに習っている際に、このまま魔法がコントロールできないのならば、父ルーハスの跡を継ぎ農家になろうと考えていたからだ。
———閑話休題———
「それな。俺もそっちに進もうと思ってたんだけどさ、父ちゃんが〝せっかく魔法の資質が高いんだから、騎士団に入りなさい!!そしてこの宿を遠征の定宿に!!〟って言い始めてさ……」
「なるほどね、捕らぬ狸の皮算用ってことか。」
ルーズハルト言葉に首をかしげるバッカス。
ルーズハルトは一瞬やばいと思ったが、すぐに気持ちを切り替えてバッカスにその意味を教えてあげた。
「バッカス、捕らぬ狸の皮算用ってのは、猟をする前から狸……獲物の皮がいくらになるか考えたところで、獲物が捕れなかったら意味がないだろ?ってことだ。」
「へぇ~、初めて聞いた。なるほどね、確かに父ちゃんはまさにそれだな。」
バッカスは父の顔を思い返すと、確かに目がお金になっていたように思えた。
そう思うと、なんとも居た堪れない気持ちになってしまった。
バッカス的には宿屋を継ぐことは当たり前の事であった。
だからこそ、この魔法学園で魔法を学び、利用者なら魔法治療を格安で受けられる宿屋として運営していきたいと思っていた。
親の心子知らず、子の心親知らずとはこと事であろうか。
バッカスとルーズハルトは田舎出身者ということもあり、なんだかんだで意気投合していた。
これなら学園生活もどうにかなるかなと思えたルーズハルトであった。
翌朝、ルーズハルトとバッカス、エミリアとお友達?、バイトとルンデルハイムが、寮の食堂で顔を合わせた。
エミリアの表情にはお友達?に対する困惑と、ルンデルハイムに対する嫌悪感がありありと浮かんでいた。
「やあおはよう皆。」
全く意に介さないルンデルハイムはやはり大物だろうか、エミリアに向かい朝からウィンクを飛ばす。
それに牙を剥いたのがお友達?であった。
「これはルンデルハイム様ごきげんよう。お姉様には指一本触れさせませんわ。」
「これは手厳しい。さすがはアズガルド辺境伯家長女のリリアナ・フォン・アズガルドさん。」
少しおどけた様子を見せるルンデルハイムにリリアナは不快感をあらわにしてにらみつける。
だがこの事実に驚きを隠せない人物が居た。
「え⁈リリーちゃん辺境伯家の人だったの!?どうしよ……どうしよルー君!!」
「どうするもこうするも、ここじゃ家格の事はご法度だぞ?リリアナさんもだからエミーに愛称で呼んでほしいからそう名乗ったんじゃないの?」
ルーズハルトの指摘に、ハッとするエミリア。
そっとリリアナに視線を送ると、それに気が付いたリリアナは気にしないでと顔を横に振っていた。
「ところでお姉さまって?」
バイトが一番の疑問を投げかけたことで、場はまた混迷を極めていったのだった。
「お、やっと来たか。それよりも〝なんだ〟は酷くないか?これから1年一緒にやっていくんだから仲良くしてくれよな。」
ルーズハルトのルームメイトは隣の席のバッカスであった。
すでに荷物を整理し終えていたのか、バッカスの机もベッドも私物の荷物が置かれていた。
だが見た目とは違い几帳面なのか、整理整頓が行き届いていた。
何故かルーズハルトのベッドも、バッカスのベッドのようにピシッとなっていたことから、おそらくバッカスが直してくれたのだと理解できた。
「それにしても……なかなか手慣れてるんだな。」
ルーズハルトは感心したように、整理された部屋を見回した。
オーフェリアも綺麗好きだったために、ルーズハルトの家は清潔度が保たれていた。
それは魔法も駆使してという条件付きだが、バッカスはルーズハルトのクラスメイトなだけにまだ扱えるわけではなかった。
魔法の痕跡も確認できないことから、手作業のみでこの清潔度を作り出した。
つまりは技術に優れている証拠でもあった。
「一応俺の家は宿屋をやってるからね。毎日手伝いばっかりったよ。」
そう不満げに答えたバッカスだったが、ルーズハルトが感心した様子を見せたことに気分を良くしていた。
一瞬ルーズハルトと視線があったが、気恥ずかしかったのかバッカスはすぐに視線を外してしまった。
そのそっぽを向く耳は赤みを帯びているだけに、隠しきれてはいなかった。
「それはそうと……話には聞いたけどAクラスのお貴族様とまた揉めたんだって?ほんとそう言うの好きだよな?」
「揉めたくて揉めたんじゃないよ。それにあれはバイト……、俺の幼馴染なんだけど、そっちと揉めた感じだ。」
当時の状況を思い出したルーズハルトは、少し困ったような表情と、どこか他人事のような表情が入り混じり、なんとも複雑そうな表情を浮かべていた。
「それにしても、宿屋の息子が何でまた魔法学園なんかに入ったんだ?技術学園にはそういった専門職のクラスもあっただろ?」
ルーズハルトが言っていたのは王立技術学園【スミスラフト】の専門職クラスの一つである【商科】の事であった。
【商科】には複数のコースが用意されており、その中でも接客業に特化したコースも存在していた。
なぜルーズハルトが技術学園に詳しいかというと、魔法の基礎をオーフェリアに習っている際に、このまま魔法がコントロールできないのならば、父ルーハスの跡を継ぎ農家になろうと考えていたからだ。
———閑話休題———
「それな。俺もそっちに進もうと思ってたんだけどさ、父ちゃんが〝せっかく魔法の資質が高いんだから、騎士団に入りなさい!!そしてこの宿を遠征の定宿に!!〟って言い始めてさ……」
「なるほどね、捕らぬ狸の皮算用ってことか。」
ルーズハルト言葉に首をかしげるバッカス。
ルーズハルトは一瞬やばいと思ったが、すぐに気持ちを切り替えてバッカスにその意味を教えてあげた。
「バッカス、捕らぬ狸の皮算用ってのは、猟をする前から狸……獲物の皮がいくらになるか考えたところで、獲物が捕れなかったら意味がないだろ?ってことだ。」
「へぇ~、初めて聞いた。なるほどね、確かに父ちゃんはまさにそれだな。」
バッカスは父の顔を思い返すと、確かに目がお金になっていたように思えた。
そう思うと、なんとも居た堪れない気持ちになってしまった。
バッカス的には宿屋を継ぐことは当たり前の事であった。
だからこそ、この魔法学園で魔法を学び、利用者なら魔法治療を格安で受けられる宿屋として運営していきたいと思っていた。
親の心子知らず、子の心親知らずとはこと事であろうか。
バッカスとルーズハルトは田舎出身者ということもあり、なんだかんだで意気投合していた。
これなら学園生活もどうにかなるかなと思えたルーズハルトであった。
翌朝、ルーズハルトとバッカス、エミリアとお友達?、バイトとルンデルハイムが、寮の食堂で顔を合わせた。
エミリアの表情にはお友達?に対する困惑と、ルンデルハイムに対する嫌悪感がありありと浮かんでいた。
「やあおはよう皆。」
全く意に介さないルンデルハイムはやはり大物だろうか、エミリアに向かい朝からウィンクを飛ばす。
それに牙を剥いたのがお友達?であった。
「これはルンデルハイム様ごきげんよう。お姉様には指一本触れさせませんわ。」
「これは手厳しい。さすがはアズガルド辺境伯家長女のリリアナ・フォン・アズガルドさん。」
少しおどけた様子を見せるルンデルハイムにリリアナは不快感をあらわにしてにらみつける。
だがこの事実に驚きを隠せない人物が居た。
「え⁈リリーちゃん辺境伯家の人だったの!?どうしよ……どうしよルー君!!」
「どうするもこうするも、ここじゃ家格の事はご法度だぞ?リリアナさんもだからエミーに愛称で呼んでほしいからそう名乗ったんじゃないの?」
ルーズハルトの指摘に、ハッとするエミリア。
そっとリリアナに視線を送ると、それに気が付いたリリアナは気にしないでと顔を横に振っていた。
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