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第4章 学園生活

第1話 やっぱりこうなったか

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「戻ってきたなここに。」
「だな。」

 バイトは正門の前に立ち、横並ぶルーズハルトに声をかける。
 ルーズハルトもどこか感慨深げにしていた。

「ほら二人とも歩く歩く。周りの邪魔になってるよ。」

 そんな二人の思いなどなんとやら。
 全く気にしていないエミリアは、早く入ろうと2人を急かしていた。

 エミリアは2人の手を取るとすぐに走り出した。
 2人もそれにつられるように校門をくぐり、感慨にふける間もなく学園に足を踏み入れることとなった。
 2人は顔を見合わせると不意に笑みがこぼれてしまう。
 転生する前の高校生活を思い出させてくれた一幕であった。



「なにか騒がしいね?」

 1年生の教室はこの巨大な魔法学園でも奥側にあり、A~Eまでの教室が並んでいた。
 手前からAクラスとなっており、バイトとエミリアが通う教室が一番手前であった。
 ちなみにルーズハルトは一番奥のEクラスで、この学園で一番遠い教室でもあった。

———閑話休題———

 自分たちが通う教室の前には人集りが出来ており、何やら言い争う声……というよりは一方的に罵倒するような内容の声が聞こえてくる。

「どうしたんですか?」

 バイトは気になり野次馬の最後尾にいた男子生徒に声をかけた。

「あのお貴族様がEクラスの子を罵ってるんだ。」
「誰も助けないんだね?」

 少年の言葉にバイトは、そう答えてしまった。
 少年は、バイトの言葉に頭を横に激しく振ってみせた。

「ムリムリムリムリ。ただでさえ俺もCクラスなのに、貴族相手に逆らえないって。」

 焦る少年をよそに、バイトはその輪の中へと進んていく。

「やめろって!!お、俺は言ったからな!!」

 か細く掠れるくらい小さな声で叫ぶ少年の声などつゆ知らず、バイトはついに先頭までやってきた。
 もちろんそれに付き合わされるルーズハルトとエミリアも一緒である。

「どうしたの、こんな場所で。」

 バイトはその中心人物に臆することなく声をかけた。
 その少年は自分が気持ち良くなっているところに水をさされた気分で、不機嫌さを隠す様子もなかった。

「ん?誰だお前?見ない顔だな?俺が知らないってことは貴族籍の子供ではないな?」
「それがどうしたの?」

 自慢げに話をしようとしていた少年は、全く気にした様子もないバイトに、不快感を覚えた。

「まぁいい、俺は今この身の程知らずのEクラスの雑魚に分を弁えるように指導してたんだ。邪魔をするなよ?」

 そう言い放つとニヤつきながらも足元で倒れ込んていた少年の腹を蹴り上げる。
 その蹴りには微弱ながらも魔法が込められるおり、無防備な少年の腹に容赦無くめり込んでいた。

「やめろ……」
「んぁ?俺に意見する気が平民。それにここには教師はいない。なら、。」

 少年はこの学園のルールの穴をついた発言をしていた。
 たしかにそれは間違いではなかった。
 取り締まる者がいなければ、秩序やルールなどゴミクズ同然なのだ。
 ただし、それが本当にまかり通るとは限らないが。

 貴族籍の少年は、バイトを挑発するようにもう一度足元の少年の腹を蹴り上げる。
 少年からはくぐもった声でうめき声が漏れ出る。
 そこにはすでに力などなく、ただ肺から漏れ出た空気がそうさせているようだった。

「やめろルー……」

 バイトが止めようとしていたのは貴族籍の少年の行動ではなかった。
 自身の後ろに控えていたルーズハルトに対しての言葉だった。
 だがバイトが言うより早く、ルーズハルトは動き出していた。

 ルーズハルトはこの数ヶ月、みっちりとオーフェリアの指導を受けていた。
 聖属性魔法の練習を兼ねたエミリアも側にいたためか、その指導は尋常ではなかった。
 ルーズハルトがいくら怪我をしようとも、そのはしから全てエミリアが治療してしまうのだ。
 つまり、怪我による休みというものは存在しなかった。
 その様子を見ていたルーハスは、自身の学生時代を思い出し身震いをしていたとかなんとか。

 そのおかげもあり、なんとか身体強化についてはオーフェリアから及第点をもらえるに至っていた。
 だがやはり放出系は未だコントロールできず、魔力操作のみに焦点をおいていた。
 あの大規模災害をやらかしたルーズハルトが、その魔力総てを身体強化に回す。
 その威力は周囲を唖然とさせるものとなった。

 次の一撃を入れようとしていた貴族席の少年と横たわる少年の間に割り込んだルーズハルト。
 貴族席の少年の蹴りがルーズハルトに直撃する。

「うがっ!!」

 その声の主は貴族籍の少年だった。
 蹴った足を押さえて地面を転げ回っていた。
 エミリアはその少年が転げ回る様を見て、そうなったかとため息をつく。
 魔力によって強化されたルーズハルトは、身体能力はもとよりその強度も増していたのだ。
 
「き、貴様……!!」

 涙目になりつつもルーズハルトを睨みている貴族籍の少年。
 ルーズハルトの後ろでは何が起こっているのか分からず、ただただキョトンとしている少年の姿があった。

「何事ですか!!」

 一触即発といった状況を打開するかのように、女性の声が廊下に響き渡った。
 生徒たちはその女性に道を譲るかのように左右に分かれていく。
 そして姿を現したのはドミトリスであった。

「またあなたですか……ルーズハルト君……」
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