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第3章 いざ王都へ!!

第13話 神童

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「ちなみに合否についての心配はいりません。ココに来ている時点で合格ですので。今やる試験は平たく言えばクラス分けです。魔法がまだ上手く使えない子と、現時点で扱える技術を持つ子を一緒のクラスにする意味はありませんからね。」

 少しおどけた感じでドミトリスはネタバラシをした。
 それを聞いた子どもたちは拍子抜けしたかのように、呆然としていたのだった。

「では改めて説明です。これより魔法による的当を行います。魔法がまだ苦手なものは担当官に申告すること。補助魔導具の貸出を行い、少しの指導のあと再試験を行います。」

 それから子供たちは順番に試験を受けていった。
 中には数名の補助魔導具の貸出を受けるものもいた。
 そしてバイトの番が回ってきた。
 バイトが手にしているものを見たドミトリスはほうと関心の声を上げた。

「その魔導具は借り物かい?」
「いえ、僕の私物です。使用許可をいただきたく持参いたしました。」

 バイトは手にした本型の魔導具を、ドミトリスに手渡した。
 それを受取ったドミトリスは興味深げに魔導具を観察していく。

「なかなか面白い物を使っているな。」
「面白い……かは分かりませんが、僕個人としては気に入っています。」

 気が済んだのかドミトリスは、バイトに魔導具を返した。
 だがその目は新しい興味を見付けたと言わんばかりであった。
 それを受け取ったバイトは、少し困った表情を浮かべていた。

「でははじめたまえ。」
「はい!!」

 気合を入れ直したバイトは、試射用の壇上へ立つと前方を見渡した。
 いくつも立ち並ぶ的に集中していく。

「【コンセントレート】」

 バイトは手にした魔導具を開くと、その見開きに手を添える。
 呟くが早いか反応が早いか。
 本型の魔導具一瞬だけ反応を示す。
 周りで見ていた講師陣は少しだけ驚いた様子であった。
 魔力放出もさほど起こらず、反応は僅か。
 その異常さに気がついた子供は皆無であった。
 むしろ失敗したのかとさえ聞こえてきていた。

 バイトは周囲の声などお構いなしに続ける。

「【マルチプル】【ターゲットロック】」

 この2つの言葉にドミトリスを初めとした講師陣は目を疑った。
 まさに凝視するとはこのことだろうか。
 目を見開き、魔力の動きを探っていく。

「いきます!!【エアバレッド】!!」

 周囲に一斉に展開される魔法陣。
 その量に先程まで嘲笑っていた子どもたちは、驚愕の表情へと変わっていった。
 出現した魔法陣の数は26。
 バイトがコントロールできる最大数である。

 展開速度も早く、1秒に満たず空気の弾丸が狙いすましたかのように飛んでいく。
 あるものは直線的に撃ち抜き、またあるものは弧を描きながら目標物を撃ち抜いていった。
 放たれた26の弾丸は見事狙い通り全弾ヒットしていた。

「まさかこの年でこの数……神童なんて言葉ではかるすぎるな。それに……」

 驚きをあらわにしたドミトリスの視線の先にあったのは横転した移動式の的であった。
 ドミトリスとしてはまぐれ当たりはあるだろうとは考えていた。
 現に一人、優秀な受験生が当ててみせた。
 だがそれは乱射に近い当て方でほぼまぐれに等しかった。
 乱射自体凄いことではあるが。
 それを狙って当てたとなれば話は変わってくる。
 どれほどの才能なのか、言うまでもなかった。

「あ、あのすみません。もうよろしいでしょうか?」

 静まり返った壇上から、バイトが困ったような声を上げた。
 我に返ったドミトリスは、慌てて降りるように促しバイトの試験は終了したのだった。

 それから数名の子供たちはバイトへの対抗意識を燃やしたのか、高い資質を示してみせた。
 目標を得たことで、一気にその才を伸ばしてみせたのだ。

 そしていよいよルーズハルトの番がやってくる。
 未だ謎に包まれているルーズハルトの資質に、ドミトリスは興味津々だった。
 バイトがあれだけのことを行ったということもあり、両親の存在も加味されて期待値が急上昇してしまっていた。

「では次……ルーズハルト君、準備を。」
「すみません。俺……僕は魔力制御に問題があります。魔法自体は撃てるんですが、威力がコントロールできません。」

 ルーズハルトは後で問題になると面倒だと判断して、事前にドミトリスに申告した。
 ドミトリスとしては問題無いだろうと判断して、そのまま壇上へ上がるよう指示を出した。

「はぁ、知りませんからね?」

 ルーズハルトが壇上に上がる際、ポツリと呟いた一言。
 ドミトリスはそれを聞き逃してしまう。
 期待が大きすぎたのもあってか、気が逸ってしまっていたのかもしれない。
 ルーズハルトは重い足取りで壇上へ向かった。

「はぁ、ツイてない……」

 ルーズハルト的には初心者扱いをしてくれると思っていた。
 上手いことお茶を濁したかったのだ。
 しかしそれは叶わず、そのまま壇上にあげられてしまう。

 ルーズハルトは一瞬ためらったが、諦めの境地に達してしまったのか、前に突き出した右手に意識を集中させる。

「【ファイアバレッド】」

 この時ドミトリスは盛大に後悔することとなった。
 バイトを除いて誰一人として結果を予測できなかったからだ。
 バイトもほぼ諦めの境地となっており、自分の周囲に防御結界を展開していた。
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