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第3章 いざ王都へ!!

第12話 マルチタレント

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「ではルーズハルト君前に。」

 ヤタケに促されるようにして魔法陣の中に足を踏み入れるルーズハルト。
 淡く光りだした魔法陣に違和感を覚えたルーズハルト。
 その違和感はあながち外れではなかった。

パリン!!

 光が立ち昇り始めた魔法陣はガラスが割れるように砕け散った。

「な!?」
「へ?!」

 突然の現象にヤタケは慌ててルーズハルトに駆け寄った。
 ルーズハルトとて、何が何だかわけがわからない状況であった。

「資質検査は……どうやら出ているようですね……しかしこれはどうしたものでしょう……」

 ヤタケは手にした用紙に目を通すと、困った表情を浮かべていた。
 そこに記載されていたのは、文字化けしたような意味不明な文字の羅列であった。
 辛うじて読み解けたのは各種の資質は持ちあらせてはいるであろうということだけだった。
 それがどれ程の高さなのかまでは読み解くことはできなかった。

「すみません。俺……僕の資質はどうだったんでしょうか?」

 ルーズハルトは恐る恐るヤタケに問いかけた。
 ヤタケも自分の思考に深くハマりすぎていたためか、ルーズハルトに伝えていなかったことに気がついた。

「すまないね。君には確かにマルチな資質が備わっているようだが……」
「どういうことなんでしょうか?」

 言い淀むヤタケに更に不安を募らせるルーズハルト。
 ヤタケもどう説明して良いのか迷っていた。

「問題があったんですか?」

 そこに姿を現したのはドミトリスであった。
 ヤタケは判断に迷い、その用紙をドイトリスに手渡した。判断をドミトリスに委ねた形だ。

「なるほど、たしかにこれは困りましたね。わかりました、この件は学園長に判断をしていただきましょう。」
「たしかにこれは学園長に任せたほうがいいですね。」

 ドミトリスの判断は保留。
 それに伴ってもう一つ問題が発生する。
 ルーズハルトの実技試験をどうするかというものだった。
 本来であれば適性検査の結果を持って試験を受ける場所を確定させていた。
 基礎4属性の強度や特殊属性など、その専門の講師が試験に当たるのだ。
 だがルーズハルトはほぼすべての適性を示していた。
 しかし数値が文字化けしており、その情報を信じていいのか判断できなかったのだ。

「ルーズハルト君ですね?今回の試験私が担当します。こちらに来てください。」

 ルーズハルトはドミトリスの指示に従い施設をあとにした。

 二人を見送ったヤタケはすぐに装置の点検を開始した。
 しかしそこには何ら異常は見られず、自分やスタッフが使用しても同じ現象は発生しなかった。
 まさに〝異常事態〟。
 この時のヤタケは知る由もなかった。
 ルーズハルトが別世界の神の半身たる存在だということを。
 その為ヤタケは長い時間この現象について研究をしていったのであった。

 閑話休題

「ここよ、入って。」

 ルーズはドミトリスに連れられて訓練施設へとやってきた。
 そこには数名の子どもたちが集められていた。

「やあ、ルーズハルト。君も来たのか。」
「バイト。そうなんだよ。俺には何がなんだか……」

 同じ場所にバイトが居たことで、少しだけ不安感が消えたルーズハルト。
 そんな再会も束の間、ドミトリスから試験の案内が始まった。

「君たちは〝マルチタレント〟と呼ばれる複数属性を保持していたため、ここでの試験となります。」

 その言葉にざわつく出す子供たち。
 バイト他数名は特段驚いた様子は見られなかった。
 〝洗礼の儀〟の時点で既に知っている子供たちだ。
 対照的にザワついている子供たちは、これまでの生活で資質が備わった可能性もある。
 これについては未だ解明されておらず、ヤタケの研究課題の一つでもあった。

「と言ってもすべての属性を確認していては時間がいくらあっても足りないので、資質検査でいちばん高い数値の属性を使ってもらいます。ではそれぞれメモに書かれた属性のうち最高値の属性を申告した後、あの目標物に魔法を撃つように。」

 ドミトリスが指さした方には複数の的が用意されていた。
 大きいものから小さいもの、近いものから遠いもの。
 中には大きな的の後ろに隠れた小さな的もあった。
 そして一番驚きなのは、不規則に動き回っている自走式の的だ。
 これにはルーズハルトも驚いてしまった。
 現代風にリモート式とでも言えばいいのか、その動きには規則性はなく、色々な動きを見せていた。

「あの、一つ質問があります。」
「どうしたのです?」

 周りの子供たちがその動く的に気を取られていた中、バイトは全く違うことに気を取られていた。
 この的当でどうやって評価するのかと。

「評価基準がまだ聴けていません。それと、自分は魔法を使えますが、なかにはまだ使えない人もいるはずです。」
「よし、なかなかいい質問です。というよりその質問が他から出なかったことが問題です。特に魔法を使えない場合評価そのものができませんからね。」

 その言葉にはっとした子供たちが数名いた。
 その反応にニヤリするドミトリス。
 なんとも意地の悪い試験だなとルーズハルトは感じてしまったのだった。
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