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第3章 いざ王都へ!!

第11話 ヤタケという青年

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「あぁ~君はルーズハルト君で良かったよね。」
「はい、それが何か?」

 ルーズハルトはなぜヤタケに名前を確認されたのかよくわからなかった。
 ヤタケの手には、助手から受け取ったメモが握られていた。
 そのメモにはルーズハルト出生について記載されていた。
 〝聖女オーフェリア〟と〝英雄ルーハス〟の子と。
 なぜヤタケは嫌悪感を示したのか。
 それはヤタケとオーフェリア、ルーハスが同級生であるためだ。


 
 入学当時ヤタケは、神童として持て囃されていた。
 農村生まれのヤタケは、幼い頃からあまり身体が丈夫ではなく、教会に通っては神父様より勉学を習っていた。
 その甲斐もあり、5歳の〝洗礼の儀〟の結果はかなり良好であった。
 それからのヤタケは、更に勉学に勤しむようになった。
 鳴り物入りで入学を果たしたヤタケは、すぐに挫折することになった。
 それが二人の存在であった。
 試験の適性検査の際にオーフェリアは聖属性に高い資質を示した。
 それは学園史上最高値であり、まさに〝聖女〟に相応しいものであった。

 ヤタケ自身も高い資質を示してはいたものの、相対的に評価が低くなってしまったのだ。
 この時ヤタケには嫉妬する気持ちとともに、憧れにも似た思いを抱いてしまった。
 それは圧倒的実力差からなのか、それともオーフェリアの容姿のせいなのか。
 当時のヤタケには分からなかった。
 
 ルーハスは当初魔法的資質は並以下で、試験の際も下位に近い合格であった。
 筆記試験自体はオーフェリアとの勉強の甲斐もあり、なんとかクリアしていたことで入学を許されていた。
 そして学園生活でのとある出来事で、それが一変してしまった。
 〝勇者ウェルズ〟との出会いであった。
 オーフェリアと同じくAクラスになったウェルズだったが、その性格は豪快そのものであった。
 その性格によりクラスを超えて交友を持つほどであった。
 オーフェリアを通じてウェルズと出会ったルーハス。
 何故か二人は意気投合し、互いを〝無二の親友〟と呼ぶようになっていた。
 
 そんな順風満帆な二人に事件が起こった。

 実技訓練中にウェルズの魔力が暴走を始めたのだ。
 それは仕組まれたもので、嫉妬したどこかの貴族息子がウェルズを罠に嵌めたのだ。
 その罠のせいでウェルズは魔力制御ができない状況に陥り、ただひたすらに持てる魔力を凝縮していったのだ。

 講師の中でも対応できるものは、制御を取り戻させるために全力でその魔力を抑え込もうとしていた。
 しかしあまりにもウェルズの魔力暴走が強すぎて、抑え込みに失敗してしまったのだ。

 その時ルーハスは笑いながら、魔力暴走の渦中にいるウェルズに歩み寄っていった。

「おいおいウェルズ。なんかおもしろいことになってるな。」
「笑い事じゃない……死にたく無かったら……お前も逃げろルーハス!!」

 親友であるルーハスを巻き込みたくないと、ウェルズは苦しい状況で言葉を絞り出す。
 だがそんなウェルズを前に、ルーハスは気にした様子は見られなかった。

「はん!!誰にもの言ってるんだ?俺はな〝勇者ウェルズ〟の〝無二の親友〟、ルーハス様だぞ?こんな魔力暴走なんて問題はない。」

 ルーハスはそう言うとただ親友の手を取るだけとばかりに、おもむろにウェルズの腕を掴んで引き起こしたのだ。
 当然抑え込まれていた魔力は、更に制御を失い暴れだす。

「黙れクソ魔力!!人の親友に手を出すんじゃねぇよ!!」

 ルーハスは魔力の瀑流に手を伸ばし、何かを掴む動作をしてみせた。
 するとどうだろうか、あれほどを暴れ回っていた魔力が次第にその威力を弱めていったのだ。

 唖然とする周囲を気に留めず、最後の魔力がルーハスの右手に収まり、跡形もなく消え去っていった。

「何が起こったんだ……」

 息も絶え絶えでウェルズがルーハスに問うた。
 ルーハスは若干照れくさそうにしつつ、その質問に答えていく。

「どうやらこれが俺の魔法資質らしい。名前は【蓄魔】。魔力を吸収し溜め込む性質があるみたいだ。そしてこんなこともできるぞ?」

 そう言うとルーハスは体中に魔力を行き渡らせて、その場でジャンプしてみせた。
 するとどうだろうか、10m以上も飛び上がったのだ。

「な?!」

 ウェルズは知っている。
 自分の親友はこんなことをできるほど魔力を有していないと。
 軽く魔力を全身に行き渡らせて、普通の人より少しだけ強くなれる程度だと。
 だが現実、ルーハスは高く飛び上がってみせた。

「それと対を成している資質は【制魔】。取り込んだ魔力を自分のものとして使える……らしい。」

 周囲にいた講師陣も何が起こったのか分からなかった。
 ただ先程までの状況は一変して、穏やかな訓練場となっていた。

 この時ヤタケ、は何もできなかった自分を恥じていた。
 学園で過ごした日々が無意味なものにさえ思えてきたのだ。

 そしてそこにあった感情は〝畏怖〟。
 そして〝好奇心〟であった。
 悔しくもルーハスに興味を抱いてしまったのだ。

 しかしその思いは一瞬にして消え去った。

「さすが私のルーハス!!」

 ルーハスに向かって飛びついたオーフェリアが、誰の目も憚ることなく口吻をしたのだ。

 世界は一瞬にして凍りついた……

———閑話休題———



 なにか嫌なことを思い出したように頭を振るヤタケ。
 キョトンとした表情を浮かべるルースハルトに、オーフェリアの面影を感じていた。

「いえ、なんでもありません。君の素質がどう出るか楽しみなだけです。」
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