近接魔導騎士の異世界無双~幼馴染の賢者と聖女を護る為、勇者を陰から支えます!!~

華音 楓

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第3章 いざ王都へ!!

第9話 暴走……ルーズハルト

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 正直ルーズハルトは肩透かしを食らってしまっていた。
 午前の試験内容はバイトと初期に習っていたことがほとんどであった。
 家庭教師が独占できると言っていたことが、理解できると納得していた。

「ルーズハルト、どうだった?」
「ん?あ、バイト。あれが試験ってマジかよって感じだった。」

 ルーズハルトは廊下に出て考え事をしていると、バイトも教室から出てきた。
 バイトも同様に余裕の表情を浮かべていたことから、問題なかったなとルーズハルトは推測していた。
 バイトの質問に肩を竦めて答えたルーズハルトに、バイトも同調したのだった。

「そういえばエミーは?」

 バイトは未だ出てきていないエミリアが心配になってしまった。
 教室まで迎えに行こうとしたとき、エミリアの試験会場からエミリアの声とほか複数人の声が聞こえてきた。

「もうしつこいなぁ~!!私はあなたに興味ないって言ってるでしょ!?」

 エミリアの剣幕に何事かと思い、ルーズハルトとバイトは慌てて教室に向かった。

「そこまで拒否することはないだろ?俺様は侯爵家の息子だぞ?農村生まれが意見する気か?」
「そんなの関係ないでしょう!!」

 ルーズハルトとバイトが教室へ入ると、そこには複数の男児に囲まれているエミリアの姿があった。
 瞬間湯沸かし器とはこのことだろうか。
 ルーズハルトは一瞬にして爆発してしまった。
 オーフェリアからもまたコントロールが定まらないため特に注意を受けていた。
 不味いと思ったバイトが反応したが、それよりも早い反応速度を見せたルーズハルト。
 足と手に魔力が一瞬で集まり、殺気が周囲に撒き散らされた。

「やめろルー!!」

 教室の床が爆発したかのように爆ぜた。
 ルーズハルトが一歩踏み出し、握った拳を突き出した。

 ……
 …………

「ルー……君……?」

 ルーズハルトの行動に驚きを隠せなかったエミリア。
 思わず声が漏れてしまった。

「今すぐその手を離せ。」

 低く腹に響く声。
 とても9歳が発した声とは思えなかった。
 踏み込んだルーズハルトは、その男児の顔面を殴りつける、ほんの数センチの距離で静止していた。
 遅れて到達したように風圧が男児に襲いかかった。
 現実を理解したのか、その男児はよろめきながら尻もちをついてしまった。
 股間から立ち上る湯気が、その男児の恐怖心を如実に表していた。

「何事ですか!?」

 騒ぎに気が付いた教師が慌てて教室に飛び込んできた。
 そこで目にしたものは殴りかかろうとしているルーズハルトとそれに驚いて床にしりもちをつく少年。
 一連の流れを知らない教師からすれば、どこからどう見てもルーズハルトが襲い掛かっているようにしか見えなかった。

「これはいったい……。説明してもらえるかな?」

 男性教師は眼鏡をくいっとなおすと、ルーズハルトと少年を交互に見ていた。
 それに気が付いた少年は腰を抜かしながら地を這うように教師に縋りついた。

「あ、あ、あいつが良きなり僕を殴り殺そうとしたんだ!!」
「「「「そ、そうです!!ザッコ様は悪くありません!!」」」」

 取り巻きをしていた少年たちも口をそろえてザッコを擁護する。
 ルーズハルトを擁護する者はいなかった。
 むしろ、あまりの恐怖体験に言葉を発する事が出来なかったのだ。

「だそうですが、何か反論はありますか?」

 ルーズハルトをじろりとにらみつける教師。
 そこに割って入ったのはバイトとエミリアであった。

「私を助けようとしただけです。それに殴ってもいません!!」
「そうですね。現に彼は傷一つついていないではないですか。」

 そういわれてみて気が付いたが、ザッコは下半身が濡れている以外外傷らしい外傷はなかった。
 教師は「ふむ」と考えるそぶりを見せるも、天井を指さしていた。

「まあどちらが悪いかはこの魔道具で記録されていますので、それでわかるはずです。あなた方への沙汰については後日あると思ってください。ではザッコ君でしたか、さすがにそのままとはいきませんので、医務室へ向かいましょう。お友達も一緒に来てください。」
「な!!あいつが悪いんだ!!なんでこの僕まで沙汰を待たないといけないです!!」

 ザッコは教師の言葉に納得できなかったのか、教師に食って掛かった。
 しかし教師はそれをなんとも思っていなかったように、ザッコににらみを利かせた。

「聞こえませんでしたか?後日と言ったはずです。私は何が起ったか見ていません。なので沙汰を言い渡すことは出来ません。何を当たり前の事を言っているのです?」

 やれやれとめんどくさそうに答える教師。
 ザッコは面目をつぶされたのか、ワナワナと怒りに震えていた。

「ええいうるさい!!こっちが下手に出ていれば!!俺はヤーロン侯爵家の人間だ!!貴様なんぞすぐに首にしてやる!!」

 ついに我慢できなくなったザッコは家名を出して脅しをしてしまった。
 ここが学園内であることは頭からすっぽ抜けているかのように。
 その言葉を聞いた取り巻きの少年たちは後退りをしながらザッコから離れていった。
 彼らはその意味を理解していたからだ。

「なるほどなるほど、私を首にですか……そうですか。わかりました。それは後程の話でしょう。まずは医務室へ向かいますよ?」

 にこやかな笑みの下に見える侮蔑をするような視線に、ザッコはひるんでしまう。
 すでに周りには誰もおらず、ただ一人となっていたザッコ。
 教師は面倒になったのかザッコを肩に担ぐとそのまま教室を後にしたのだった。

 残された少年少女はどうしていいかもわからず、途方に暮れるしかなかったのであった。
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