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第3章 いざ王都へ!!
第8話 すべての子らは平等である。そこには格は存在せず
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ルーズハルトは先程の出来事を気にする様子はなく、すでに頭の済からすら追い出していた。
周囲を見渡す余裕さえあった。
周囲の子どもたちは時間が迫ってきていることもあり、浮つく気持ちのまま参考書などに目をどうしていた。
(あれ?皆参考書とか読んでるの?俺筆記用具しか持ってきてないや……)
と、心の声が漏れそうなほどルーズハルトは一瞬焦りを感じていた。
しかしその焦りも一瞬で、まぁいっかとばかりに、また外の景色をゆったりと眺めていた。
ところで何故ルーズハルトがここまで余裕があるかというと、ひとえにバイトの存在が大きかった。
〝本の虫〟〝貪欲〟そんな言葉がルーズハルトの中で定着してしまうほど、バイトはこの世界にのめり込んでいた。
バイトの知識欲は〝魔法学〟に留まらず〝王国史〟や〝世界史〟、はては古代語を学ぶために〝言語学〟まで及んていた。
その知識欲にエルモンドが用意した家庭教師も舌を巻くほどであった。
それに巻き込まれるように、ルーズハルトとエミリアもまた、その知識を深めていく形となったのだった。
そのお陰か、家庭教師からは「初期教育課程なら3人でトップ独占できるかもしれない」と言わせるほどであった。
「皆さん、本日は試験に来てくれて、本学園を選んでくれてありがとう。試験官を務める、基礎属性主任講師のグラム・ハラムです。」
試験時間が迫る頃、一人の男性が試験会場へ入室してきた。
恰幅もよく少し頭部が後退しているように見えるが、教師用の黒の羽織を身に纏っていた。
人懐っこそうな笑顔と片目にかけるモノクルが温和そうな空気を醸し出していた。
だがルーズハルト他数人は気がついていた。
そのモノクルの下から覗かせる視線が何かを探るように鋭いものであると。
それとこれはエルモンドのおかげであったが、そのモノクルが魔道具であることにルーズハルトは気がついていた。
魔道具【観測眼】。
その効果は唯一、魔力を観測する。
だがそれだけに効果高く、微小な魔力の動きすら感知してしまうのだ。
なぜそんな物を着けているのか不思議でならなかったルーズハルトだった。
「では本日の日程の確認です。午前は基礎学力を確認するテストを受けてもらいます。科目は〝基礎魔法学〟〝王国史〟〝言語学〟の3科目。各科目100点満点の採点です。」
家庭教師の言っていた通りの出題に少しだけ安堵してみせたルーズハルトだったが、グラハムの次の一言ですべてがぶっ飛んでしまった。
「ただし成績は各教科の最高点数で評価します。これはそれぞれの得意不得意の把握とともに、これだけは他に負けないという者への配慮も兼ねています。」
つまり、満遍なく中途半端な成績を取るより、一芸に秀でている方を取るという表れであった。
そのためか教室内からざわめきが起こる。
「質問の許可を願います。」
ざわついた教室の雰囲気をものともしない少年が挙手をしていた。
グラムはにこやかに首肯で許可を出した。
「これでは満遍なく頑張ってきた人に不公平ではありませんか?」
少年の疑問は最もであった。
むしろその質問を待っていたとさえ思えるほどグラムは更に破顔してみせた。
「うむ、君の思慮深さとリーダーとしてのお気質が見られて嬉しいよ。それについて補足しましょう。まずはこの学園……国の法として存在しています。そこには身分関係なくという文言が随所に含まれます。この入学試験も例外ではないのです。」
ますます意味がわからないと首を傾げる少年。
「つまり、砕けいていってしまえば、今試される基礎学力においてはスタートラインが違えど大した差ではないということです。農村の生まれだろうと、貴族の生まれであろうと。この学園では銅貨一枚の価値もないのです。」
これに反応を示したのは貴族出身者たちだった。
自分に価値がないと言われたように感じてしまったのだろうか、こともあろうか貴族であることを振りかざし始めたのだ。
「納得いただかなくて結構。ここはそういう場所だと理解してもらう他ないのです。君たちのお父上方もどこかの学園出身のはず。すべての学園共通の事柄であるのです。」
一部の子供以外ハッとして顔を青ざめさせていた。
初期教育で〝王国法〟を学んだものならばグラムが言っていることを理解したようだった。
〝王国教育法〟には次の事柄が記載されていた。
《すべての子らは平等である。そこには格は存在せず》
これにより学園内では身分は秘匿とされており、現に受験生の胸元の名札には名前以外記載されていなかったのだ。
「どうやら理解していただけたようだね。では続けて午後の試験について説明します。午後は魔力測定及び資質測定を行います。その後男女に分かれての身体検査を行い本日の日程は終了です。何か質問はありますか?」
グラムの話をどれほどの子どもたちがきちんと聞いていることができたのだろうか。
それほどまでに同様を隠せない様子であった。
(恐らくこれも試験ないようなんだろうな……。うん、何人かは気がついているみたいだ。なんていうか、9歳相手に意地悪すぎないか?)
それがルーズバルドの試験に対する第一印象であった。
周囲を見渡す余裕さえあった。
周囲の子どもたちは時間が迫ってきていることもあり、浮つく気持ちのまま参考書などに目をどうしていた。
(あれ?皆参考書とか読んでるの?俺筆記用具しか持ってきてないや……)
と、心の声が漏れそうなほどルーズハルトは一瞬焦りを感じていた。
しかしその焦りも一瞬で、まぁいっかとばかりに、また外の景色をゆったりと眺めていた。
ところで何故ルーズハルトがここまで余裕があるかというと、ひとえにバイトの存在が大きかった。
〝本の虫〟〝貪欲〟そんな言葉がルーズハルトの中で定着してしまうほど、バイトはこの世界にのめり込んでいた。
バイトの知識欲は〝魔法学〟に留まらず〝王国史〟や〝世界史〟、はては古代語を学ぶために〝言語学〟まで及んていた。
その知識欲にエルモンドが用意した家庭教師も舌を巻くほどであった。
それに巻き込まれるように、ルーズハルトとエミリアもまた、その知識を深めていく形となったのだった。
そのお陰か、家庭教師からは「初期教育課程なら3人でトップ独占できるかもしれない」と言わせるほどであった。
「皆さん、本日は試験に来てくれて、本学園を選んでくれてありがとう。試験官を務める、基礎属性主任講師のグラム・ハラムです。」
試験時間が迫る頃、一人の男性が試験会場へ入室してきた。
恰幅もよく少し頭部が後退しているように見えるが、教師用の黒の羽織を身に纏っていた。
人懐っこそうな笑顔と片目にかけるモノクルが温和そうな空気を醸し出していた。
だがルーズハルト他数人は気がついていた。
そのモノクルの下から覗かせる視線が何かを探るように鋭いものであると。
それとこれはエルモンドのおかげであったが、そのモノクルが魔道具であることにルーズハルトは気がついていた。
魔道具【観測眼】。
その効果は唯一、魔力を観測する。
だがそれだけに効果高く、微小な魔力の動きすら感知してしまうのだ。
なぜそんな物を着けているのか不思議でならなかったルーズハルトだった。
「では本日の日程の確認です。午前は基礎学力を確認するテストを受けてもらいます。科目は〝基礎魔法学〟〝王国史〟〝言語学〟の3科目。各科目100点満点の採点です。」
家庭教師の言っていた通りの出題に少しだけ安堵してみせたルーズハルトだったが、グラハムの次の一言ですべてがぶっ飛んでしまった。
「ただし成績は各教科の最高点数で評価します。これはそれぞれの得意不得意の把握とともに、これだけは他に負けないという者への配慮も兼ねています。」
つまり、満遍なく中途半端な成績を取るより、一芸に秀でている方を取るという表れであった。
そのためか教室内からざわめきが起こる。
「質問の許可を願います。」
ざわついた教室の雰囲気をものともしない少年が挙手をしていた。
グラムはにこやかに首肯で許可を出した。
「これでは満遍なく頑張ってきた人に不公平ではありませんか?」
少年の疑問は最もであった。
むしろその質問を待っていたとさえ思えるほどグラムは更に破顔してみせた。
「うむ、君の思慮深さとリーダーとしてのお気質が見られて嬉しいよ。それについて補足しましょう。まずはこの学園……国の法として存在しています。そこには身分関係なくという文言が随所に含まれます。この入学試験も例外ではないのです。」
ますます意味がわからないと首を傾げる少年。
「つまり、砕けいていってしまえば、今試される基礎学力においてはスタートラインが違えど大した差ではないということです。農村の生まれだろうと、貴族の生まれであろうと。この学園では銅貨一枚の価値もないのです。」
これに反応を示したのは貴族出身者たちだった。
自分に価値がないと言われたように感じてしまったのだろうか、こともあろうか貴族であることを振りかざし始めたのだ。
「納得いただかなくて結構。ここはそういう場所だと理解してもらう他ないのです。君たちのお父上方もどこかの学園出身のはず。すべての学園共通の事柄であるのです。」
一部の子供以外ハッとして顔を青ざめさせていた。
初期教育で〝王国法〟を学んだものならばグラムが言っていることを理解したようだった。
〝王国教育法〟には次の事柄が記載されていた。
《すべての子らは平等である。そこには格は存在せず》
これにより学園内では身分は秘匿とされており、現に受験生の胸元の名札には名前以外記載されていなかったのだ。
「どうやら理解していただけたようだね。では続けて午後の試験について説明します。午後は魔力測定及び資質測定を行います。その後男女に分かれての身体検査を行い本日の日程は終了です。何か質問はありますか?」
グラムの話をどれほどの子どもたちがきちんと聞いていることができたのだろうか。
それほどまでに同様を隠せない様子であった。
(恐らくこれも試験ないようなんだろうな……。うん、何人かは気がついているみたいだ。なんていうか、9歳相手に意地悪すぎないか?)
それがルーズバルドの試験に対する第一印象であった。
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