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第3章 いざ王都へ!!

第5話 ハウエル商会王都本店

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「大きいね、ルー君……」
「そうだね……」

 ルーズハルトとエミリアは、首が痛くなるのではないかというほど、上を見上げていた。
 そこには豪華な看板がかかっており、【ハウエル商会】の文字が書かれていた。
 造りも豪華で、派手さはない物の目が確かな者がが見れば唸るような装飾品の数々であった。
 ハウエル商会の王都本店は4階建てとなかなかの建物だった。
 一階は店舗で、一般の人向けといったところだろうか。
 生鮮食品や服飾、装飾品まで何でもそろうんじゃないだろうかと思ってしまうほどであった。
 値段もリーズナブルで、ルーズハルトが町のハウエル商会で見た値段とさほど変わりはしなかった。
 2階はハウエル商会の事務所となっており、王都をはじめとした近隣の店舗のまとめ役をしているようであった。
 3階は住み込みの従業員の居住区。
 4階はハウエル家の居住区となっていた。

「おかえりなさいます、旦那様。」
「何度も言ってるけど、ここは支店だからな?お帰りは違うだろう?」

 ルーズハルトとエミリアが唖然としている中、エルモンドとそう年が変わらなそうな男性が、店の奥から顔を出してきた。
 エルモンドはその男性の挨拶に少し顔を顰めてしまった。
 いつもの事のように聞こえるだけに、本当に嫌なんだということが伝わってくる。
 
「そうは言いましても、そのようにおっしゃるのは旦那様だけでございます。皆様はここが本店で、向うには支店と本部がある。そういった認識でございます。」
「全く……、それを決めるのは店の主の私だろうに。これだから見えを張りたがる商人や貴族は嫌いなんだよ……」

 エルモンドの答えに少し困った顔を浮かべる男性。
 男性の話が本当だとするならば、ほとんどエルモンドのわがままのような状況に思えてならなかった。
 エルモンドの表情が辟易としてきているのがよく伝わってきた。
 言葉の端々に棘が生えているからだ。

「旦那様。人の口に戸は建てられませぬ。不用意な発言はお控えください。」

 男性はそっとエルモンドのそばにより、耳打ちをするように話しかける。
 その言葉を聞いたエルモンドは目の端で周囲を確認する。
 エルモンドに視線を向けるものが数名、意識を向けるモノもそれなりにいた。
 それを確認したエルモンドは盛大にため息をつき、頭を振った。

「あぁ~いやだいやだ。かたっ苦しくて仕方がない。」

 大げさな態度で周囲にアピールするエルモンド。
 それが何を意味するかまではルーズハルトには分からなかった。

「父さん、僕もここに来るのは初めてなんだ。色々教えてよ。」
「そうだったそうだった。この男はこの店を任せている店長のハロルドだ。ハロルド、オーフェリアの息子のルーズハルト君とエミリアちゃんだ。」

 バイトはたまらず男性の紹介をせがむようにエルモンドに頼んだ。
 エルモンドも先ほどのやり取りで嫌気をさしていたので、紹介までは頭が回っていなかったようだった。
 ハロルドの前にルーズハルトとエミリアを連れてきたエルモンド。
 そして肩を軽くたたく感じでハロルドに紹介していた。

「なんと、オーフェリア様のお子様たちですか。私はこの店を任されておりますハロルド・サイスと申します」

 オーフェリアの名を聞いたハロルドはとても驚いた表情を浮かべていた。
 そしてゆっくりとしゃがみ込むと、ルーズハルトとエミリアの目線の高さに合わせるようにし、自己紹介を行う。
 そしてハロルドは二人に一礼すると、隣に並んでいたバイトに声をかけた。
 
「それと坊ちゃま、お久しぶりでございます。まだ幼い時でしたので覚えてはいらっしゃらないとは思いますが、大きくなられたようで何よりでございます。」

 バイトの成長に目を細めるハロルド。
 その姿は親せきの子供たちを愛でるおじさんとでもいった雰囲気になっていた。

「部屋の準備は終わっているか?」
「はい、もちろんでございます。では皆様方こちらへどうぞ。」

 挨拶もそこそこに切り上げて、中へ入るよう促すエルモンド。
 それにこたえるハロルド。
 二人の関係が親密であることがうかがえる一幕であった。

 ハロルドに誘導されるように中に入るルーズハルトたち。
 エルモンドはまだ用事があるようで、店舗に残っていた。
 一緒に旅をした従業員たちはすでに作業に移っており、ルーズハルトたちの後ろから元気のいい掛け声がずっと聞こえていた。

 

「うわ~すごいね~」
「ほんと、ハウエル商会って凄いんだね」

 2階に上がって見えたのは豪華な造りの室内だった。
 そのきれいな調度品に目を奪われてしまったルーズハルトとエミリア。
 感嘆の声を上げるほか出来ない程、魅了されていた。

「2階は事務所兼応接室となっております。貴族様などもいらっしゃいますから、それなりに見栄えにだけは気を使っております。まあ、わかるものが見ればガラクタ同然でしょうが……。それを見抜けぬものをより分けるための罠……といったところでございましょうか。」

 ハロルドはその豪華さの意味を丁寧に教えてくれる。
 これはどちらかと言えばバイトに向けられたもののようで、目を肥やしなさいとの教えのようにも聞こえてきていた。

「うん、俺には調度品は分からないや……」
「大丈夫、僕もだから……」

 男二人自信を無くしたようにうなだれていた。
 それを見たハロルドはクスクスと笑いをこらえるのに必死の様子であった。
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