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第3章 いざ王都へ!!

第1話 あれから4年

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「忘れ物はない?」
「大丈夫!!ね、ルー君!!」

 心配そうなオーフェリアをよそに、エミリアは大丈夫と胸を張って答える。

 〝洗礼の儀〟からすでに4年が経とうとしていた。
 4年も経てば子供は成長するもの。
 幼かったエミリアは少女へと成長を遂げていた。
 身体の曲線は少しだけ丸みを帯び始め、少年とは隔たりを感じるようになってきた。

 この国では9歳の歳を迎えた子供たちは、翌年から約10年間教育機関に通うようにと王国法で決められていた。
 その教育機関は魔導王国【エルファラント】が運営する3つの機関と、国とは独立した機関の冒険者ギルドが運営する機関が存在している。
 国営の機関は、次の3つだ。
 各種技術を磨くための王立技術学園【スミスラフト】。
 エルモンドとケイトの母校でもある。
 騎士の排出を行う王立騎士学園【トリストス】。
 最後にこの国の最重要拠点と言われている王立魔導学園【アグニス】。
 ここはルーハスとオーフェリアの母校だ。
 いまだここにはルーハスとオーフェリアの伝説が残っているが、それはまた違うお話。
 冒険者ギルドが運営する、私立冒険者育成機関【ニュービーズ】は文字通り、冒険者を育成する機関だ。
 国営機関から漏れたものや、初めから冒険者を目指すもの。
 それぞれの目標をもって入学してくる。
 ただ、この【ニュービーズ】に関しては少しだけ毛色が違った。
 これは敢えてギルド運営にしている理由でもある。
 国営の学園を卒業した後に、【ニュービーズ】だけは再入学する事が可能となっていた。

 それぞれが特化した教育を行っており、子どもたちの将来に直結すると言っても過言ではなかった。
 そしてそのための〝洗礼の儀〟でもあるのだ。

———閑話休題———

「母さん、心配し過ぎだよ。ほらエミー、ハンカチとティッシュ忘れてるからね。全く、ちゃんと昨日準備したのに、そのまま机に置いてくるっ……」

 玄関を次に出てきたのは、ルーズハルトだった。
 ルーズハルトも成長をしており、双子とはいえエミリアと異なる成長をしていた。
 背丈は9歳の割に高く、150センチに少し届かないくらいであった。
 体付きも筋肉質で、本当に9歳か疑いの目で見られかねなかった。
 対象的にエミリアは身長があまり伸びず、やっと130センチに届いたばかりであった。

「それじゃあ二人とも、エルモンドに迷惑をかけないようにな。」

 裏庭から顔を出したのはルーハスであった。
 焼けた肌に健康的筋肉美。
 爽やかな笑みをたたえていた。
 年齢的に少しだけ身体に衰えが見え始めたと本人は語っているが、傍から見れば若さと健康は全盛期のまま維持されていた。

「それじゃあ父さん、行ってきます!!」
「行ってきまぁ~す!!」

 ルーズハルトがルーハスに挨拶をすると、エミリアも合わせて元気よく挨拶を行った。

「行こうエミリア!!俺たちの戦いはこれからだ!!」
「ルー君……それ言ってみたかっただけでしょ?」

 少し家から離れた二人は、の思い出に思いを馳せていた。



「おはようバイト。」
「おはようルーズハルト。エミーもおはよう。今日はよろしくね。」
 
 逸る気持ちを抑えもう一人の幼馴染のいるハウエル商会に足を運ぶルーズハルト。
 ハウエル商会の店先には一足先に幼馴染のバイトが姿を現していた。
 バイトもまた逸る気持ちを隠しきれない様子で店先でそわそわしていた。
 バイトは相変わらずの美少年だった。
 バイトの背丈はルーズハルトとあまり変わりはしなかった。
 だが、その類稀なる容姿は転生しても変わることはなく、今も店に買い物に来ている奥様方からちやほやされるほどであった。
 それを見たルーズハルトは少しだけ悔しいと思ってしまったが、それを表に出すことはなかった。

「おはようバイト君。」

 エミリアもバイトとあいさつを交わす。
 ルーズハルトはその二人の並び立った姿に、既視感を持ってしまった。
 現世の日本でも同じような光景を毎日見ていたなと……

「それとハウエルさん、今日から3日間よろしくお願いします。」

 店先から姿を現したエルモンドに最初に気が付いたのはエミリアだった。
 すぐに挨拶を行い、深く頭を下げていた。
 ルーズハルトはそれに慌てて従い、ぺこりと頭を下げた。

 ハウエル商会はルーズハルトたちが〝洗礼の儀〟を受けた時よりもさらに躍進を遂げていた。
 この国では王政を強いてはいるが、完全に権力を集中させているわけではなかった。
 確かに最終決定権を有しているのは国王であることは変わりはなかった。
 しかし国王の暴走によって国が滅びないようにと、初代国王が議院制を導入していたのだ。
 議院は2院に分かれており、貴族院と呼ばれる上位貴族30名と領主からなる議会と、臣民議会と呼ばれる有力臣民や各市町村の長又は代理人によって構成される議会の合議制によって運営されていた。
 その合議を国王が承認するという流れとなっていた。
 そしてエルモンド・ハウエルもまた臣民議会の一員になるまでに成長を遂げていたのだ。

———閑話休題———
 
「これママからです。」
「これは済まないね。オーフェリアからの贈り物ならなんだって嬉しいさ。」

 挨拶もそこそこにエミリアは、ここまでルーズハルトが引っ張ってきた荷台を指さした。
 オーフェリアの荷物と聞き、嬉々として荷台にかけてあった幌を取り除いた。
 そこにはぎっしりと新鮮な野菜が並べられていた。
 
「パパの特製の野菜です!!」
「う、嬉しいさ……」

 満面の笑みで自分の父親自慢の野菜をアピールするエミリア。
 対照的にエルモンドはどうにかこうにか笑みを浮かべていた。
 それはもう、奥歯で苦虫を嚙み潰したような笑みだったとしても、笑みは笑みだった。
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