52 / 131
第3章 リスタート
052 解放と消滅
しおりを挟む
『シンを……、悪夢から解放してください……。』
それは、カイリの悲しみに満ちた決断だった。
幼馴染を……友人を殺す……
それをカイリに決断させてしまった。
これはカイリたちに憎まれようとも、恨まれようとも、俺がすべき決断だったはずだ……
なにやってんだよ、まったく。
情けないにもほどがあるな。
『カイリ……。カレン、アスカ……、すまない。シンを救えなかったことを許してほしい。』
俺は3人への贖罪の言葉のを口にした。
3人は、涙を浮かべるも必死で耐えていた。
ここで泣いてはいけないと……
スキル【レベルドレイン】!!
俺は、シンの身体を乗っ取った強欲に向けてスキルを発動させた。
効果はすぐに現れた。
シンの身体からは、黒い靄の様なものが抜け出ていく。
アスカがステータスを確認すると徐々にシンのレベル……生命力が減っていっていた。
[ん?!何ですかこれは⁉生命力が低下している?!どういうことです⁉プロメテウス!!これはどういうことです?!]
突然の出来事に取り乱した強欲は、俺を睨んでいる。
[あなたですか!!今すぐやめなさい!!くそっ!!くそっ!!]
必死になって体を動かそうとするも、まだ身体に馴染んでいなかったのか、全く反応していない様子だった。
「みんな、ごめん。カイリ……あり……が……」
「シン!!」
シンが最後の抵抗を試みていたようだった。
必死になって動こうともがくものの、シンの身体は言うことを聞かず、強欲へのスキルの効果が顕著に現れていいた。
[くそ!!その顔覚えました!!プロメテウス!!覚悟なさい!!]
最後の強欲の言葉と共に、シンの身体は俺たちの前から霧散した。
本当に消滅したのだ。
後に残された物は、シンの装備一式だけだった。
それにしても、レベルドレインは本当に鬼畜だった。
シンが貯め続けたレベルを根こそぎ奪い取ったのだから……
俺のレベルは今ので9レベル一気に上がったのだ。
そしてさらに嫌なものを見てしまった。
ーーーーーーーーーー
基本情報
氏名 :中村 剣斗
年齢 :35歳
職業 :探索者F
称号 :生命の管理者
ーーーーーーーーーー
生命の管理者:生命の殺生与奪・存在の権限を得た者に与えられる。
ーーーーーーーーーー
何とも物騒な称号が付いたものだ。
ただ、これは俺が背負うもので間違いないと思う。
俺はシンを消滅させたのだから。
「じゃあ、シン達の装備を回収して帰ろう。自衛隊にも事の顛末を話さないといけないしね。」
「シン?誰ですか?」
?!?!?!?!?!?!?
俺はその場で吐き出してしまった。
カレンの言葉で理解してしまった。
確かに消滅してしまったのだ。
存在そのものが……
「ケントさん?!アスカ、回復魔法をお願い!!」
「先輩!!しっかりしてください!!」
「ケントさん!!ケントさ……」
薄れゆく意識の中でカイリの声が聞こえた気がした。
ピチョン
ピチョン
ピチョン
ピチョン
目を覚ますと、白い天井が目に入ってきた。
ここは知らない場所だ。
「ケントさん!!」
「カイリ……。ここは?」
辺りを見回すと、どうやら俺はベッドに横たわっていたようだ。
そんな俺の横に、カイリが座っていた。
その目には涙を溜めて、俺の手を握っていてくれた。
どうやら心配かけてしまったようだ。
「ここは訓練施設の医療施設です。ケントさんがいきなり倒れてしまって。そしたら、私たちが第6層に向かったことを知った、自衛隊の方々がちょうど到着して、ここまで運んでくれました。」
「そっか……、ごめん。迷惑かけたね。」
「そんなことありません。あ、お医者さん呼んできますね。あと、みんなも。」
そう言うと、ハンカチで目元を拭ってカイリは病室を出ていった。
ガラガラ
「あ、目を覚まされましたね。それにしても女性を泣かせるとは、中村さんも罪作りですね。」
「一ノ瀬さん……、冗談きついですよ。」
カイリと入れ替わりで病室に入ってきたのは、自衛官の一ノ瀬さんだった。
「中村さんもなかなか無理をされる。『探索者型イレギュラー』の討伐は出来れば自衛隊に任せてほしかったですね。でも、ご無事で何よりです。」
「あの、ここまで運んでくれたのって……。」
「はい、私たちの部隊です。」
「そうでしたか、ありがとうございます。」
「これも我々の任務ですから、お気になさらず。ところで、いったい何があったんですか?突然倒れたと聞いていますが……。」
俺は一ノ瀬さんに一連の出来事を説明した。
もちろんスキルについても。
「それはまた……。中村さん、この件は私の処で一度留めます。おそらく国は中村さんを拘束する可能性が高いです。それほどまでに危険なスキルですから。その、シンと呼ばれた青年についても確認します。記憶だけなのか……、または記録もなのか。そこを調べないといけません。」
「一ノ瀬さん、今の会話でわかりました。おそらく、記憶からは抹消されています。訓練施設入り口での一件で、一ノ瀬さんはシンと会っていますから。それをわからなかった時点で、抹消は確定だと思います。」
こいつは参ったな。
たぶん俺は、今後ずっとマークされることになる。
このスキルがどういうものなのか、どこまで通じるのか、それもわからないのだから。
「なるほど……わかりました。シンという青年に、私も会っているんですね。ですが、私にその記憶がない……つまりは記憶の抹消。存在の抹消だという結論。確かにその通りですね。まず、記録についてはこちらで調べます。どうか、周りには話さないでください。」
コンコンコン
「ケントさん、入りますね。」
「では、私はこれで。」
そう言うと一ノ瀬さんは病室を後にした。
「ケントさん、今のって一ノ瀬さんですか?」
カイリがみんなを連れて来たと同時に、一ノ瀬さんは病室を後にした。
「あぁ、カイリも会ったことあったんだっけ?」
「はい、前に一度。確か、探索者のストーカーがいて助けてもらいました。」
「そっか……」
あの一件も、みんなの中ではすでに改ざんされているのか。
つまり、シンを知るのは俺だけだってことか……
何とも言えない後味の悪さがあるな。
「先輩大丈夫ですか?突然だったんでびっくりしましたよ。」
「そうね。ケントさんあまり無茶はしないでくださいね。あなたはこのパーティーのリーダーなんですから。」
谷浦に心配されることになろうとはな……
虹花さんには苦労かけてしまったかもしれないな。
すると、谷浦が小声で俺に耳打ちしてきた。
「先輩……。あの時消滅させたのって……『シン』って子ですよね?」
「谷浦⁉」
「はい、その通りです。なぜか、俺は覚えています。おそらく、スキルの関係かもしれません。」
『クリエイター』系のスキルか?!
そうかこれは自称神の権能の一部を与えられたものだ。
だから、このスキルホルダーはある意味摂理から独立しているのかもしれないな。
「谷浦、絶対にこの件について口を開くな。お前まで拘束される可能性がある。」
「マジっすか!?まぁ、この一件で考えればそうかもしれないっすね。」
「巻き込んで悪かった。」
「何2人で話し込んでるんですか~?」
俺たちが小声で話していると、アスカが不思議そうな顔で覗き込んできた。
「いや、特にな。そうだ、あのあとってどうなったんだ。『探索者型イレギュラー』の装備品とか散らばってただろ?」
「はい、あれは回収して今自衛隊に確認作業してもらってます。持ち主……おそらくは死亡されているでそうが、わかれば返却する予定だそうです。」
「そうか、見つかるといいな。」
「そうですね。」
病室にしんみりした空気が漂っていた。
俺はきっとこの先も、この子たちに迷惑をかけるんだろうな。
今回の件も含めて、俺と谷浦は普通の探索者としてやっていけるのか疑問になる。
『クリエイター』系のスキル。
『七つの大罪』系のスキル。
『七つの美徳』系のスキル。
分かっているだけでも物騒すぎる。
これは可能性にしかすぎないが、おそらく『神話』系のスキルまたは称号が存在していそうだった。
強欲が口にした【プロメテウス】という名前は、ギリシャ神話の【人に火を与えた神】だ。
プロメテウスは、人間に〝火〟を与えることで、〝文明の進化〟を促した。
なら、今回俺たちに与えられた〝スキル〟がこの〝火〟にあたるとしたら……それこそが〝生命の進化〟を促すトリガーとなったとしたら……
考えるだけでも嫌になるな。
あと、出て来た名前は【セフィロト】……と言えば生命の樹か。
ユダヤ教のカバラでは『宇宙万物を解析する為の象徴図表』とされている。
まさか、これも……
いや、やめよう。
これ以上考えても仕方がない。
俺は一般人で、学者じゃない。
いくら考えても憶測の域を出ることはないだろうから。
「おや、もう大丈夫そうですね。」
カラカラカラとカートを押している看護師とともに、医官と思われる男性がやってきた。
「はい、ご迷惑おかけしました。」
「礼には及びません。それに、ここに運ばれる人の中では軽傷ってより、無傷ですからね。」
医官の男性は、そう言いながら苦笑いをしていた。
看護師から体温計を渡され、体温測定を行った。
逆の腕では血圧を測っている。
「うん、大丈夫そうですね。自宅へ帰っていただいて結構ですよ。」
「ありがとうございます。」
「いえ、ではお大事に。」
医官の男性は次の病室へと向かっていった。
「じゃあ、帰りますか先輩。」
「だな。」
谷浦の言葉を受けて、俺たちは医療施設を後にした。
「ケントさん、おなかすきました!!」
アスカが、いきなり大きな声でおなかすいたアピールを始めた。
その声につられて、カイリとカレンも声を上げて、3人でおなかすいたの合唱を始めたのだ。
思わす、俺は笑い出してしまった。
きっと、俺の表情が暗いのを気にしていたんだと思う。
だからあえてそうしたのだろう。
「そうだ、虹花さん。今回の探索の結果はどうなりました。」
「はい、第6層だけで一人頭15,000円強でした。第五層までの分を合わせても約2万円ですね。」
あれ?意外と多いの?少ないの?微妙な金額だな。
でも、日給2万って考えたら多いのか?
「ケントさん、これにはまだ『イレギュラー』討伐の報奨金が含まれていません。こちらについては後日になるそうです。金額も現在未定です。」
「虹花さん、毎回管理ありがとうございます。」
うん、2万稼いだなら少しはいいかな。
「じゃあ、街に戻ったら何か食べに行こう。」
「「「ごちになります!!」」」
え?まじで?!
「先輩……ごちです!!」
「ケントさん……ドンマイです。」
5人ともにこやかに歩き出していく。
まぁ、心配かけたしな。
シンの事。
スキルの事。
これからの事。
いろいろ考えないといけないけど、今は生き残ったことを素直に喜ぼう。
そして俺たちは、これから起こるであろう悲劇をまだ知らなかった……
それは、カイリの悲しみに満ちた決断だった。
幼馴染を……友人を殺す……
それをカイリに決断させてしまった。
これはカイリたちに憎まれようとも、恨まれようとも、俺がすべき決断だったはずだ……
なにやってんだよ、まったく。
情けないにもほどがあるな。
『カイリ……。カレン、アスカ……、すまない。シンを救えなかったことを許してほしい。』
俺は3人への贖罪の言葉のを口にした。
3人は、涙を浮かべるも必死で耐えていた。
ここで泣いてはいけないと……
スキル【レベルドレイン】!!
俺は、シンの身体を乗っ取った強欲に向けてスキルを発動させた。
効果はすぐに現れた。
シンの身体からは、黒い靄の様なものが抜け出ていく。
アスカがステータスを確認すると徐々にシンのレベル……生命力が減っていっていた。
[ん?!何ですかこれは⁉生命力が低下している?!どういうことです⁉プロメテウス!!これはどういうことです?!]
突然の出来事に取り乱した強欲は、俺を睨んでいる。
[あなたですか!!今すぐやめなさい!!くそっ!!くそっ!!]
必死になって体を動かそうとするも、まだ身体に馴染んでいなかったのか、全く反応していない様子だった。
「みんな、ごめん。カイリ……あり……が……」
「シン!!」
シンが最後の抵抗を試みていたようだった。
必死になって動こうともがくものの、シンの身体は言うことを聞かず、強欲へのスキルの効果が顕著に現れていいた。
[くそ!!その顔覚えました!!プロメテウス!!覚悟なさい!!]
最後の強欲の言葉と共に、シンの身体は俺たちの前から霧散した。
本当に消滅したのだ。
後に残された物は、シンの装備一式だけだった。
それにしても、レベルドレインは本当に鬼畜だった。
シンが貯め続けたレベルを根こそぎ奪い取ったのだから……
俺のレベルは今ので9レベル一気に上がったのだ。
そしてさらに嫌なものを見てしまった。
ーーーーーーーーーー
基本情報
氏名 :中村 剣斗
年齢 :35歳
職業 :探索者F
称号 :生命の管理者
ーーーーーーーーーー
生命の管理者:生命の殺生与奪・存在の権限を得た者に与えられる。
ーーーーーーーーーー
何とも物騒な称号が付いたものだ。
ただ、これは俺が背負うもので間違いないと思う。
俺はシンを消滅させたのだから。
「じゃあ、シン達の装備を回収して帰ろう。自衛隊にも事の顛末を話さないといけないしね。」
「シン?誰ですか?」
?!?!?!?!?!?!?
俺はその場で吐き出してしまった。
カレンの言葉で理解してしまった。
確かに消滅してしまったのだ。
存在そのものが……
「ケントさん?!アスカ、回復魔法をお願い!!」
「先輩!!しっかりしてください!!」
「ケントさん!!ケントさ……」
薄れゆく意識の中でカイリの声が聞こえた気がした。
ピチョン
ピチョン
ピチョン
ピチョン
目を覚ますと、白い天井が目に入ってきた。
ここは知らない場所だ。
「ケントさん!!」
「カイリ……。ここは?」
辺りを見回すと、どうやら俺はベッドに横たわっていたようだ。
そんな俺の横に、カイリが座っていた。
その目には涙を溜めて、俺の手を握っていてくれた。
どうやら心配かけてしまったようだ。
「ここは訓練施設の医療施設です。ケントさんがいきなり倒れてしまって。そしたら、私たちが第6層に向かったことを知った、自衛隊の方々がちょうど到着して、ここまで運んでくれました。」
「そっか……、ごめん。迷惑かけたね。」
「そんなことありません。あ、お医者さん呼んできますね。あと、みんなも。」
そう言うと、ハンカチで目元を拭ってカイリは病室を出ていった。
ガラガラ
「あ、目を覚まされましたね。それにしても女性を泣かせるとは、中村さんも罪作りですね。」
「一ノ瀬さん……、冗談きついですよ。」
カイリと入れ替わりで病室に入ってきたのは、自衛官の一ノ瀬さんだった。
「中村さんもなかなか無理をされる。『探索者型イレギュラー』の討伐は出来れば自衛隊に任せてほしかったですね。でも、ご無事で何よりです。」
「あの、ここまで運んでくれたのって……。」
「はい、私たちの部隊です。」
「そうでしたか、ありがとうございます。」
「これも我々の任務ですから、お気になさらず。ところで、いったい何があったんですか?突然倒れたと聞いていますが……。」
俺は一ノ瀬さんに一連の出来事を説明した。
もちろんスキルについても。
「それはまた……。中村さん、この件は私の処で一度留めます。おそらく国は中村さんを拘束する可能性が高いです。それほどまでに危険なスキルですから。その、シンと呼ばれた青年についても確認します。記憶だけなのか……、または記録もなのか。そこを調べないといけません。」
「一ノ瀬さん、今の会話でわかりました。おそらく、記憶からは抹消されています。訓練施設入り口での一件で、一ノ瀬さんはシンと会っていますから。それをわからなかった時点で、抹消は確定だと思います。」
こいつは参ったな。
たぶん俺は、今後ずっとマークされることになる。
このスキルがどういうものなのか、どこまで通じるのか、それもわからないのだから。
「なるほど……わかりました。シンという青年に、私も会っているんですね。ですが、私にその記憶がない……つまりは記憶の抹消。存在の抹消だという結論。確かにその通りですね。まず、記録についてはこちらで調べます。どうか、周りには話さないでください。」
コンコンコン
「ケントさん、入りますね。」
「では、私はこれで。」
そう言うと一ノ瀬さんは病室を後にした。
「ケントさん、今のって一ノ瀬さんですか?」
カイリがみんなを連れて来たと同時に、一ノ瀬さんは病室を後にした。
「あぁ、カイリも会ったことあったんだっけ?」
「はい、前に一度。確か、探索者のストーカーがいて助けてもらいました。」
「そっか……」
あの一件も、みんなの中ではすでに改ざんされているのか。
つまり、シンを知るのは俺だけだってことか……
何とも言えない後味の悪さがあるな。
「先輩大丈夫ですか?突然だったんでびっくりしましたよ。」
「そうね。ケントさんあまり無茶はしないでくださいね。あなたはこのパーティーのリーダーなんですから。」
谷浦に心配されることになろうとはな……
虹花さんには苦労かけてしまったかもしれないな。
すると、谷浦が小声で俺に耳打ちしてきた。
「先輩……。あの時消滅させたのって……『シン』って子ですよね?」
「谷浦⁉」
「はい、その通りです。なぜか、俺は覚えています。おそらく、スキルの関係かもしれません。」
『クリエイター』系のスキルか?!
そうかこれは自称神の権能の一部を与えられたものだ。
だから、このスキルホルダーはある意味摂理から独立しているのかもしれないな。
「谷浦、絶対にこの件について口を開くな。お前まで拘束される可能性がある。」
「マジっすか!?まぁ、この一件で考えればそうかもしれないっすね。」
「巻き込んで悪かった。」
「何2人で話し込んでるんですか~?」
俺たちが小声で話していると、アスカが不思議そうな顔で覗き込んできた。
「いや、特にな。そうだ、あのあとってどうなったんだ。『探索者型イレギュラー』の装備品とか散らばってただろ?」
「はい、あれは回収して今自衛隊に確認作業してもらってます。持ち主……おそらくは死亡されているでそうが、わかれば返却する予定だそうです。」
「そうか、見つかるといいな。」
「そうですね。」
病室にしんみりした空気が漂っていた。
俺はきっとこの先も、この子たちに迷惑をかけるんだろうな。
今回の件も含めて、俺と谷浦は普通の探索者としてやっていけるのか疑問になる。
『クリエイター』系のスキル。
『七つの大罪』系のスキル。
『七つの美徳』系のスキル。
分かっているだけでも物騒すぎる。
これは可能性にしかすぎないが、おそらく『神話』系のスキルまたは称号が存在していそうだった。
強欲が口にした【プロメテウス】という名前は、ギリシャ神話の【人に火を与えた神】だ。
プロメテウスは、人間に〝火〟を与えることで、〝文明の進化〟を促した。
なら、今回俺たちに与えられた〝スキル〟がこの〝火〟にあたるとしたら……それこそが〝生命の進化〟を促すトリガーとなったとしたら……
考えるだけでも嫌になるな。
あと、出て来た名前は【セフィロト】……と言えば生命の樹か。
ユダヤ教のカバラでは『宇宙万物を解析する為の象徴図表』とされている。
まさか、これも……
いや、やめよう。
これ以上考えても仕方がない。
俺は一般人で、学者じゃない。
いくら考えても憶測の域を出ることはないだろうから。
「おや、もう大丈夫そうですね。」
カラカラカラとカートを押している看護師とともに、医官と思われる男性がやってきた。
「はい、ご迷惑おかけしました。」
「礼には及びません。それに、ここに運ばれる人の中では軽傷ってより、無傷ですからね。」
医官の男性は、そう言いながら苦笑いをしていた。
看護師から体温計を渡され、体温測定を行った。
逆の腕では血圧を測っている。
「うん、大丈夫そうですね。自宅へ帰っていただいて結構ですよ。」
「ありがとうございます。」
「いえ、ではお大事に。」
医官の男性は次の病室へと向かっていった。
「じゃあ、帰りますか先輩。」
「だな。」
谷浦の言葉を受けて、俺たちは医療施設を後にした。
「ケントさん、おなかすきました!!」
アスカが、いきなり大きな声でおなかすいたアピールを始めた。
その声につられて、カイリとカレンも声を上げて、3人でおなかすいたの合唱を始めたのだ。
思わす、俺は笑い出してしまった。
きっと、俺の表情が暗いのを気にしていたんだと思う。
だからあえてそうしたのだろう。
「そうだ、虹花さん。今回の探索の結果はどうなりました。」
「はい、第6層だけで一人頭15,000円強でした。第五層までの分を合わせても約2万円ですね。」
あれ?意外と多いの?少ないの?微妙な金額だな。
でも、日給2万って考えたら多いのか?
「ケントさん、これにはまだ『イレギュラー』討伐の報奨金が含まれていません。こちらについては後日になるそうです。金額も現在未定です。」
「虹花さん、毎回管理ありがとうございます。」
うん、2万稼いだなら少しはいいかな。
「じゃあ、街に戻ったら何か食べに行こう。」
「「「ごちになります!!」」」
え?まじで?!
「先輩……ごちです!!」
「ケントさん……ドンマイです。」
5人ともにこやかに歩き出していく。
まぁ、心配かけたしな。
シンの事。
スキルの事。
これからの事。
いろいろ考えないといけないけど、今は生き残ったことを素直に喜ぼう。
そして俺たちは、これから起こるであろう悲劇をまだ知らなかった……
143
お気に入りに追加
518
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる