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第2章 リベンジ!!

020 最悪の懸念 抱く覚悟

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 昨日の仮説を考えると嫌なことばかり考えてしまい、よく寝れなかった。

 朝食の時、今日の予定を家族と確認しあった。
 美鈴は今日はオフ日で、家にいるようだ。
 明日からまた、食材系ダンジョンでお肉を狩るぞ!!って意気込んでた。
 父さんはいつも通り現場作業だってことで、すぐに家を出るそうだ。
 母さんはそれこそいつも通りで、家事全般を引き受けてくれている。
 ほんとありがたい。

 やはり良くない考えが巡ってくる。
 うん、気にしてても仕方がない。
 僕は美鈴と一緒に、母さんに昨日の疑問の検証に付き合ってもらった。

 検証内容は次の3つ

①殺虫剤で殺した場合経験値が入るか
②スキルを使わないで殺した場合経験値が入るか
③スキルを使って殺した場合経験値が入るか。

 今日はちょうど燃えるゴミの日で、ゴミステーションにGの黒いやつが湧きやすい条件が揃っていた。
 G駆除を名目に、母さんと検証することにし、3人でゴミ捨てがてらゴミステーションへ向かった。

 まず最初に、②の検証から。
 母さんは何処からともなく取り出したハエたたきで、Gに対して滅多打ちし、数匹倒すことに成功した。
 まあ、現場はある意味で凄惨たる状況だけど……
 そして最後の1匹を倒すとレベルが上がったようだ。
 今の母さんのレベルは4だったから、5に上がったはず。
 つぶした数も1,2,3,4……8匹……
 うん、おそらくあってる。
 
 次に③の検証。
 結界のスキルで次々につぶしていく。
 ってか、いったい何匹いるんだよ、このゴミステーション。
 しばらくするとレベルが上がったらしい。
 ほぼ確定……
 
 最後に①の検証だけど……Gがいなくなってしまった。
 あとに残されたのはG の亡骸。
 母さんは一つ一つ丁寧にGを結界でくるみ、消滅させていった。
 うん、ある意味母さんの結界が最強な気がしてきた。
 検証はここまで。
 これ以降は次の燃えるゴミの日にやることにして、ゴミステーションを後にした。

 家に戻り検証結果を3人で考察してみた。
 正直、一番合ってほしくない結果でもあった。
 それは、【生物】から経験値が得られる。
 生物が【魔物化】によって経験値が得られるという状況も、ある意味問題だけど……
 生物の殺傷が経験値を得る条件だったとしたら……

 あの自称神が言っていた。

「地球上のすべての生物に進化の時がやってきた」

 これが本当ならば、進化しているのが人だけではない可能性も捨てきれない。

 ダメだ、思考がまともな方向に働かない。
 美鈴も母さんも、顔が少し青くなっている。
 おそらく、僕と同じ考えに至ったのだろう。
 とりあえず、この件に関してはいったん棚上げにして、口外を避けようということになった。
 美鈴もGを殺して経験値稼げるならって最初は簡単に考えていたみたいだ。
 検証結果とともに、SNSに流そうとも考えていたみたいだ。
 正直、お手軽レベルアップ手段だからね。
 しかし、結果は最悪の事態を想定しなくてはならないと告げてきた。

 僕はこの件について、僕たちだけでは背負いきれないと思い、一ノ瀬さんに相談することにした。
 母さんたちに、そのことを告げて家を出る。
 正直かなり気が重い。
 おそらく自衛隊としても何か掴んでいるとは思う。
 だからこその答え合わせ。
 いまだこの件について国からの発表がないということは、きっとそういうことなんだと思う。
 バスに乗って、訓練施設に着くとちょうど一ノ瀬さんがダンジョンから帰還してきた。
 ナイスタイミング。
 僕は一ノ瀬さんに駆け寄って、今朝の検証について相談をした。

 やはりといえばいいのか、自衛隊でもそのことについて問題になっていたみたいだった。
 詳しくは研究中だということだけども、大まかには僕が検証した内容と推測に間違いはないようだった。
 そして、一ノ瀬さんの一番の懸念は生物の殺傷による経験値の獲得に絞られているそうだ。
 対象が昆虫だけなのか、生物全般なのか。
 それに【人間】は含まれるのか……
 一ノ瀬さんの顔がとても沈んで見えた。
 おそらく今の研究段階では人間も含まれる可能性が高いということだろうか……
 その検証をするためには、人間の犠牲のもとでしかできないのだから。

 一ノ瀬さんから、この件については伏せていてほしいと念押しをされた。
 いらぬ憶測で人殺しを増やしたくない、それだけだった。
 僕もそれについては賛成だった。
 誰が好き好んで人殺しになりたいものか。

 一ノ瀬さんと一通り会話を終えると、僕はいつも通りダンジョンへ向かった。
 やはりレベルを上げて、いざという時に大切な人たちを守れるようになりたいと思ったから……

 そして今日も僕は、ダンジョンへ足を踏み入れた。

 僕は一ノ瀬さんと話したときに、ある相談をした。
 これから先の階層……第4層以降の相談だ。
 一ノ瀬さん曰く、「ソロで潜ることはおすすめしない」との事だった。
 理由は、一段階モンスターが強くなるからだ。
 特に、第4層のゴブリンがとても強くなるそうだ。
 種類も増えて、連帯攻撃が頻発するのだとか。
 特に、アーチャー・メイジ・ヒーラーの存在が厄介で、おそらくソロは苦戦必至らしい。
 できることならば、第4層へ行く前にパーティーを組んでほしいとお願いされた。

 正直、僕もパーティーは組みたいと思っている。
 この前の『イレギュラー』の存在が、それを強く意識させた。
 だけど僕は、スキルのせいで、それがとても難しいと考えてしまう。
 あまりにも異質すぎて、隠し通せそうにないからだ。

 一ノ瀬さんが心配してくれるのは、とてもうれしかった。
 だからこそ、今は無理をしないようにしようと心に誓った。

 受付ではもう慣れたもので、ソロアタックだからと言って止められることは無くなった。
 それでも心配そうにしてくれることに、うれしく思えた。

 そして第3層まではとても順調に進むことができた。

・ゴブリン5匹
・スライム6匹
・ハンティングウルフ8匹

 これが討伐内容だ。
 さすがにレベルが上がらなくなってきた。
 それと、今日から決めたルールが一つある。
 それはステータスを振るのは基本夜にするというものだ。
 理由はダンジョン内で上げると体のバランスが極端に崩れてしまうからだ。
 前回それでやらかしたので、同じ轍は踏まないようにとの措置だ。
 
 そしてドロップアイテムは……

・魔石(極小)が9個。
・こん棒が2本。
・スライムゼリー(青)が1つ。
・ハンティングウルフの毛皮が2枚
・ハンティングウルフの牙が1本
・ハンティングウルフの肉が1塊

 これはいい収穫だったかな?
 最初のころに比べたら大分マシにはなってるはず……だよね?

 順調に階層を降りてきた僕は、第3層の探索を開始した。

 探索開始して少しすると、小さな集落を発見。
 数は、大ゴブリン改めホブゴブリンが1匹に、ゴブリンが5匹だった。
 これなら問題ないと思い、周囲の石を集め投げつけた。

 面白いようにゴブリンの体へと石が吸い込まれていく。

ゴキン!!
グシャ!!
ゴボン!!
ドガン!!
ち~ん!!

 いろいろな音色でヒットする石に、「実は意思が宿ってるのでは?」と思うけど、気にしたら負けな気がしてきた。

「グルオワァァァァ~~~!!」

 次々倒れる仲間のゴブリンを見て怒りを覚えたホブゴブリンは、ひと際でかい咆哮を上げ襲い掛かってきた。
 振り上げられた棍棒は、正確に僕を狙ってくる。
 全力で回避した僕は、転がりながら態勢を立て直した。
 やっぱりだ、個体によって強さがまちまちな気がする。
 つまりそういうことか……
 おそらく自称神の言う生物に、目の前のモンスターも含まれてる可能性があるってことかもしれない。
 前戦ったホブゴブリンも、かなり強く感じた。
 でも、今目の前にいるこいつは、それよりもさらに強く感じる。
 すでに気のせいってレベルではない。
 回避に成功した僕を見据えて、じりじりとホブゴブリンは迫ってきた。
 僕も盾を構えなおしてホブゴブリンの隙を伺う。

 どのくらい時間がたったのだろうか。
 1分か……
 10分か……
 体感的にはかなり長く感じる。

 先にしびれを切らしたのはホブゴブリンだった。

「ゴガァァァァ~~~~~~!!」

 今一度大きな咆哮を上げると、振り上げていた棍棒を全力で振り下ろしてきた。
 僕は左手に装備した盾で棍棒をいなし、そのままゴブリンの左脇腹を切り付けた。
 しかしホブゴブリンは怯むことなく、そのまま棍棒を振り回す。
 間一髪盾で防いだものの、大きく後ろに飛ばされてしまった。
 何とか壁に激突は免れたけど、ダメージが残ってしまった。
 左腕は……折れてはいないもののしびれが残っている。
 これはまずい……
 焦る僕を尻目に、ホブゴブリンは僕に向かって迫ってきた。

 しかし、その勢いは長くは続かなかった。

 ホブゴブリンは僕に近づく前に力尽き、前のめりで倒れこんだ。
 しかし、その目はまだ死んでおらず、仲間の敵を取ろうと必死だったことが窺えた。
 僕はそんな目を見て一瞬ひるんでしまったが、心を鬼にしてその首をはねた……

 畜生……
 これではどちらがモンスターなのか、わからなくなってしまう……
 まさか……モンスターにも感情があろうとは思ってもいなかった。
 その感情は初めからだったのか。
 それとも【生物の進化】によるものなのか。
 本当に自称神が何をしたいのかがわからなくなってきた。
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