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新たな町へ

691話 行ってら!

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 また次の日。

 点呼が終わらせ皆で外へ出る。

 屋敷の外門まで、ぞろぞろと皆で出て、ベントンが荷馬車を引いて来るのを待つ。

 その間、ケイトと皆で暫しのお別れの挨拶をする。

「ケイト」

「何さ」

「気をつけて行けよ?」

「分かってますよ、それ昨日も言われてるよ」

「ケイト、口が過ぎますよ」

「分かってるよ、ニングス。旦那様……悪かった」

「口!」

「だから、ごめんってニングス」

「まあ良いよ、ニングスそんなに言わなくても。ケイトだからな」

「なにそれ?」

「ケイト、本当に気をつけろよ?」

「分かってますよ。ごめんなさい」

「はい、宜しい」

「全く、ニングスは口煩いんだから」

 困っちまうよ、とケイトがぼやく。
 そんな話をしていると、ベントンが荷馬車を引いて、門の外に出たけど……なんか、お前ビビってない?

「おい、ベントンどうした?」
「どうした?ベントン、なんか顔が青いぞ?具合悪くなったか?」
「ち、違うよ、ヘンリル。旦那様、この荷馬車に何かしましたか?」

 お、俺か?

「いや?特にはしてないぞ。ただ、少し壊れてた箇所が有ったからな、そこの修理はしたけどな」

「そ、それでこんなに成りますか?」

 気持ちは分からなくも無いけどな、馬車の故障は困るだろ?

「大丈夫だよ、ニングスだって使って無事に戻って来たろ?ビビり過ぎだぞ」

「そうは言いますが、豪華過ぎではないですか?荷馬車ですよね?これ」



「アハハ、若干綺麗に成りすぎたかな?」

「若干とか、言いますが!旦那様、もう少し………」

「ほらほら、細かい事を気にしてたら出発が遅れるぞ。先ずは馬車の中の説明だ、それを覚えたら旅に出れるぞ」

「分かりました(大丈夫かな?俺、無事に実家行って、ここに帰って来れるかな)」

ベントンの心配を他所に、俺はベントンとケイトが荷馬車に乗ったのを確認すると、二人に説明を始める。

「先ずは、この魔石を見てくれ」

「はい」

「これに魔力を流してくれ、先ずはベントン、それからケイトの順で流して」

「は、はい。こ、こうですか?」

 なんとなくだが、ベントンの手から魔力を感じて魔石魔力が流れているのを感じた。
 よしよし流せたな、これでベントンは登録完了。

「次、ケイトもここに触って、魔力を流せよ」

「はいよ、これで良いかい?」

 ケイトからも、なんとなく魔力を感じ、ベントンと同じ様にケイトの魔力が魔石に流れて登録完了。

「ん~OK!ちゃんと流せたね。これで二人の魔力の登録が出来たから、これに触って開けと念じると、馬車の中が広がる様になった。それでは、はい、ベントン君、魔石に魔力を流して念じて」

「は、はい……開けぇーー」

 結構大きな声を出して空間を広げたベントン君、君ねぇ~。

「ベントン、口に出さないでな。人に訊かれると不味いし色々と」

「は、はいすみません」

「使い方慣れろよ、ケイトもな?」

「分かってます、大丈夫だよ。だけど旦那、これは……あたしら使えるかね?」

「大丈夫、使えるし!ほらベントンも、中をちゃんと見て確認してくれよ。他にも色々と説明するから」

 と、言ってあれこれ色々と説明した。
 荷台の結界石の事とか、食糧の事とかね。
 後はキッチンの家電の使い方。
 コンロはちゃんと教えたぞ。
 お湯も沸かせないとなると、結構困るからな。
 それから、他にも積んで有る物のあれやこれやも説明した。

「はぁ~旦那ぁ~あたしらさぁ、こんなに贅沢しても良いのかね?」

 ばばぁ臭いぞケイト。

「良いから貸すんだよ。それから食事は一日三回は基本だぞ?」

「三回って、旦那はまた」

 贅沢なんだよそれは、と言うがなケイト。
 それを分かってても、俺は言いますが、なにか?

「ま、出来ればだよ」

「わ、分かりました!頑張ります!」

 お、ベントン緊張感が漂うけど。なにに緊張してるんだ?
 そんなんだと旅が大変だぞ?
 お前大丈夫かよ。

「なんで、そんなに緊張してるんだい!ベントン、あんた大丈夫かい?」

「ケイト、俺は大丈夫だ!任せて」 

「そうかい、だったらしゃんとしておくれよ」

 バンと背中を叩いてるけど…あれは痛そうだ。

「い、痛いよケイト。もう少し加減してよ」

「ハイハイ。ほらもう行く時間だよ」

 おお、仕切ってるねぇケイト。

「わ、分かった。なら、これを元に戻して……よし出来た!旦那様出来ましたよ!」

「視てたよ、それなら安心だな。あと、分からない事が有れば、だいだいの事はここに書いてあるから、これを読んでくれ。ベントン任せたぞ?」

「は、はい任されました。では行って来ます」

「二人とも、元気で、ちゃんと戻って来いよ?」

「分かってる、カナルも、旦那を任せたよ?」

「分かってる。任せろ」

 おい、カナルいつ俺がお前に任せられるんだ?

「ベントン、ケイトと頑張れよ?」

「はい、任せて下さい。カシューさんも、旦那様と、旅ですよね?頑張って下さい」

「おう」

 一言かい!

「じゃ、皆行って来るよ。済まないけど、後を頼んだよ?」

「「「「「「「任された」気を着けて」行ってらしゃい」元気でな」気を着けろよ」頑張れよ」

 皆各々に挨拶をして、二人を見送った。

 お前ら、道中気をつけろよ!!


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