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新たな町へ

閑話 ニングスside 7 

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 ニングスは宿に戻ると宿屋の店主に明日の事を話し、人が訪ねできたら部屋に通して欲しいと頼んで自分の部屋に戻った。

 次の日、朝早くから起き出すとニングスはそわそわしていた。

 来るかも分からない息子を待って居るのだからそわそわもするものだ。

 朝は馬車に乗り込み、早めに朝食を済ませると昼食は宿の部屋で取れるようにした。

「これでいつ来ても。って、可笑しいですね?レクスが来るのを待ち遠しいなんて思ってしまって」

 人を待つのは以外と苦痛だ。
 時間が進んでる様で進まない。
 まあ、体感なので時間はちゃんと進んでいるのだが……。

 ニングスは、暁彦から貰った懐中時計を見ては時計の針が進んで居ない事にため息を漏らす。

 そうして、昼が過ぎ一人で昼食を済ませ。
 食後の茶を飲み、時間潰しに本を引っ張り出して読むのだが時間を気にして本を読むペースが遅い。

 それから日が陰り暗く為って来た頃。

「はぁ~やはり来ないか。部屋も暗く為ってきたし……灯りは……」

 と部屋のランプに灯りを灯した頃部屋のドアがノックされた。

【トントン】

「お客さん、あんたに客だぜ?」

 と廊下から声が掛かった。

 ニングスは慌てて扉をあけると、そこには店主と息子レクスが立って居た。

「おい坊主、この人か?」

「そう、ボクの父さんだよ」

「そうか、良かったな」

 宿屋の店主は、それだけ謂うと息子を残してその場を離れて行った。

「レ、レクス。来たのか?」

「うん、」

「さ、立ってないで入れ」 

「うん!」

 息子を招き入れて、ニングスはレクスをベッドに座らせるとレクスに話しかける。

「……よ、良く来たな。母さんは?」

「……えっと、これ預かった」

 手渡されたのは手紙だ。

 封を開けて手紙をを読む……。

「(……そうか、なら良いのか)」

「で、レクスはあっちの人とは本当に良いのか?」

「あっちって、義父のこと?」

「そう、」

「まあ、あんまり好きではないし、僕は男だからね。ハンナを可愛がってたから良いんじゃない?」

 随分と息子の冷めた判断だとは思うが……。

「そ、そうか。なら連れて行くが……お前、俺の住む場所見て、俺が使える主人を見て驚くなよ?それから一緒に戻るなら、お前もその主人に使える事に為るが、それでも良いのか?」

 独立するなら助けては遣るが……。
 あの町で一人暮らしをさせるには少し幼い。

「へぇそうなの?でも、その主って人を見ないと分からないよ」

「まあ、そうなるが……。なら、俺の仕事を手伝うか?戻った屋敷には人が多いんだ。それで、お前と同じくらいの子どもが数人居る」

「そうなんだ。で、僕は父さんの仕事を手伝えば良いの?」

「まあ、そうなる」

「へぇ……父さんて、今何処に居るの?」

「俺は……この町から随分と、離れた国にいる」

「そうなの?この国に居んじゃないの?」

「そうだ、母さんは言ってなかったのか?」

「聞いてない」

「そ、そうか。ならこの地図を、見てみろ」

 ベッドの上に地図を出して見せる。

 今のレクスに見せても、多分分からないだろうが話しくらいはしてやれる。
 そうして一通り話してるとレクスの腹が【キュルルル…】と可愛らしく鳴る音がした。

「お、腹が減ったか?」

「うん……へへっ」

「なら、行くか」

 すくっと立ってレクスを抱き上げる。

「お前、軽いな?飯はちゃんと食ってるのか?」

「ええっと…ちゃんとは食べてるけど…」

「分かった……。なら、今日から俺がちゃんと美味い物を食わせてやるからな」

「うん、で、何処に行くの?」

「まあ、楽しみにしてろよ」

 レクスと一緒に馬車に乗り込む。
 それから、テーブルの椅子に座らせてから馬車の中の収納から料理を取り出す。

「と、父さん? これはなに? なんで料理が出てくるの? で、なにここは!」

「フフフッ、まぁ良いから一緒に食おう。美味いぞ」 

「で、でも……」

 テーブルに出したのは、ポトフとサラダそれと白パンとコップに入れた果物のジュース。

「ほら、熱いから気を付けて食べろ。頂きます」

「い、いた?ってなに?」

「ああ、これは今のご主人がな、教えてくれた食事前の挨拶だ。いただきますと言うんだ」

「へぇ~。ハム……フゥーフゥーーあっ……ムグムグ…。お、おいひぃーーゴクン。と、父さんこれ美味しいよ!」

「ハハだろ?一杯食えよ。明日にはここから出るからな、当分は大変だろうが我慢してくれ」

「ハムハム……う、うん!」

 二人で食事をした後、風呂に二人で入る。
 ここでもレクスは驚いて居たが、髪を洗って体を洗って遣ると船を漕ぎ出した。

 流石に疲れたのだろう。
 宿に来る前から、母親を説得しつつ義父も交えて話をしたのだろう。

 預かった手紙には、義父とレクスはあまり上手く関係を築く事が出来ず困って居たと書いてあった。
 なので、母親としては不本意だがレクスを頼むと書いてあった。

「さて、これで全ての、予定は済んだな。後は宿屋なのだが……」

 正直もうあのベッドでは寝たくはないのが本音だ。ならこの勢いで宿を出るか。
 水も食糧もこの先も困る事はない。
 なら、出るか町の門もま未だ開ている筈だし。

「なら!」

 レクスをベッドに寝かせて宿の中に入り、カウンターから店主を呼び出した。

「なんだ?」

「今から宿を出たい」

「……そうか、なら…返金が」

「ああ、それは納めてくれ。ここで食事をしなかったからな。詫びだ」

「……そうか?なら貰っておくよ。今から出るのか?」

「ああ、今なら町の門も閉まってないだろ?」

「なら、急げ!そろそろ閉まる」

「分かった!世話になった」

 ニングスは急いで馬車に乗り込み、御者台に乗ると宿屋から出て町の門まで急いで馬を走らせ町の門を抜けたのだった。


 そして、ニングスは暁彦の屋敷へと戻るのだった。

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