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新たな町へ

閑話 ニングスside 6

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「父さん!待って。待ってよ」

 急いで追い掛けてきた息子に呼び止められて、振り向いて息子に声を掛けた。

「どうしたんだ?レクス」

「父さん、今は何処に居るんだ?」

「は? そんな事を聞いてどうするんだ?」

「……父さん」

「レクス、俺は……もうお前の父ではないよ。今のお父さんに可愛がって貰うんだぞ?それと母さんの事は頼んだ。それとハンナの事もね頼んだぞ」

「……ごめん父さん。僕は、あの家からは出たいと思ってるんだ」

「は?(そう言えば…上手く行ってないと聞いてたか)」

「父さん僕は、父さんと一緒に行きたい」

「だ、だが……お前それは」

「今の人は、母さんには優しいけど。…僕とは考えが合わないんだ。あの人普通の人だし」

「お前…普通が一番だろ?俺みたいに商人だと…」

 今では商人でもないがな。

「僕は父さんの方が良い!僕たちを庇ってくれた、父さんの方が良い」

「だがなぁ…レクス。俺は今は商人ではないぞ?」 

「なら、仕事は?」

「ある人に拾われてな、今はその人の屋敷で執事をしている」

「し、執事?父さんが?」

 まあ、驚くか……。

「まあ、そうだ。この口調を変えて、丁寧な言葉で人に話してるんだ。あの俺がだぞ?」

「ハハ、なにそれ?笑えるんだけど?」

「だろ?所で、お前は今はなにをしてるんだい?」

 息子はもう14才の筈だ、仕事はそろそろ決めないと成らない年齢だ。
 成人まであ一と年しかない。

「僕は…その…小さい頃に父さんが、読み書きと算術を教えくれてたから、商人の店に掛け合って仕事を探してる最中だよ。でも僕は未だ子どもだから、全然話も利いて貰えなくて、雇っても貰えないんだ」

 商人に成るのなら、顔利のコネか若しくは自分一人の力でのし上がるの普通だからな。

「……そうか…で、母さんはその事は知ってるのか?」

「ま、未だ話せてない」

「だったら、自分でちゃんと話をしてから俺の所に来い。それがケジメだろ?俺はこの先にある、白狐亭と謂う宿に居る。明日までは居るから、話が付いて俺と来るなら来い。但し、迷うならやめておけよ?俺は明後日にはこの町を出るからな」

「わ、分かった。話して見るし必ず行くから待ってて!絶対だよ、父さん」

「ああ、分かった。じゃ待ってるから」

 絶対だからね!と念を押してレクスは来た道を戻って行った。
 その後ろ姿を見送るニングスは、なんとも言えない気持ちで息子を見送った。

「はぁ~旦那様にはなんと報告をしましょうか。それでなくても、人が増えればあの方の負担に為ると謂うのに……」

 と、ため息を漏らして宿に戻って行った。


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