上 下
459 / 761
新たな町へ

402話 イリヤの配置替え。

しおりを挟む


 そして、食事の時間が終わった。
 その間とうとうイリヤは顔を出さなかった。

 食堂から移動してリビングのソファーに座ると……マイナに用事を頼む。

「マイナ、イリヤを呼んできてくれ」

「は、はい………。でも、イリヤちゃん来ないかも」

「取り敢えず呼んで来てくれない? このままだとイリヤを元の奴隷商人の元に、戻さないと為らないしね。働けない者に居て貰っても、困るんだよね。怪我や病気なら仕方ないがね」

「う………分かりました」

 それだけ返事をするとマイナはイリヤを呼びに行く。
 リビングに入って、開口一番マイナに用を頼んだ。
 そして、リビングに居るのは使用人全員だ。
 何でも全員で話し合いをするのが、決まり事に成りつつあるな。

「さてさて、何でご機嫌斜めかね…あの人は。俺は面倒は嫌なんだ」

 カナルが大きな声を出して俺に嫌味? 
 なのかな?を言ってきてる…いや文句か。
 別に気に入らないなら出ていって貰うだけなので、俺は特に困らんが。でも聞こえちゃったしね。と言うとことで、カナルを横目で睨み付けた。
 
 それに気づいたカシューが、慌ててカナルを小突いて注意してる。

「カナル!旦那様に失礼だろ!」

「すまん……カシュー(やらかすとこだったな)」

「俺に謝るな、旦那様に謝れ!」

「旦那様すみません……」

 軽いいねぇ~。まあ、謝ったから別に良いけどね。

「…口は災いの元だよ? カナル……気を付けような?」

「はい……」

「旦那……相変わらず冷てぇなぁ~」

「グレド……俺は雇い主です!厳しくしないとね!でもさぁ、これでも優しい方じゃない?」

 注意だけですませたし。

「ま、それはそうだな……」

「うちらは、旦那からお金貰ってるもんね。衣食住全て、揃えて貰ってるんだよ。忘れてだけど」

 忘れてた……というが……ケイトさん。
 お願いだから忘れないでくれない?
 それに俺も働いてるよ?

「ふぁ~」

「誰だ、今の欠伸は……」 

「すみません……。おれ腹一杯で眠くて……」

「カナルまたお前か? お前……マイペースすぎ」

「アハハすみません。俺には関係無い話しですからね。って、言うか……俺とカシューとゲイルには関係無いですよ」 

「まぁ、そうだがな…。…取り敢えず話しは訊こうか?」

「そうだぞ!仲間だからな」 

「ゲイル……凄い」

「な、なにがだ……?」

「仲間意識が! …だな」

「………旦那様……俺を馬鹿にしてるのか?」

「い、嫌、違うからな!尊敬だよ、尊敬!」 

「尊敬? ニングス意味が分からない」

「プッ!ハハハ!」 

「な、なんだ旦那様? なにか惜しいのか?」 

「だって……ゲイルがかわいい」

「か、可愛いって! 旦那様! お、俺は男だぞ」

「分かってるよ、ククク」

「むぅ…………」 

「悪い、悪い。ゲイル、機嫌を直せよ?」

「旦那様、ゲイルをからかうのもいい加減にして下さい。イリヤが来ましたよ」

 おっとそうだったね……。

「ゲイル悪かった」

「いや、大丈夫だ……」

「ん……。イリヤ、こっちに来て座れ」

 そして、空気が一転し部屋はひんやりとしたものに変わった。さて、どうしたものかな………。

「は、はい…………失礼します…」

「イリヤ、食事は?」

「い、要りません」

「あっそ!で? 仕事もしないで、なにしてた? 部屋に戻って、泣いてただけかな?」 

「あ!ご、ごめんなさい。うぅぅ!」

「泣くな!」

「ひぃ!ぅぅう」

「イリヤ、話しに成らないですよ。泣いてたら、旦那様の話しを聞いてちゃんと答えなさい」

「は、はい…………ぐず………」

 ニングスよ、そんなにきつくしなくて良いけど……。

「はぁ………。イリヤお前もう少し、落ち着いて仕事してくれ」

「…………はい」

「責めてる訳ではないがな……。意識して注意すれば、もう少しドジは治るだろ?」

「も、申し訳ありません。私、上がり症で……」

 上がり症って…。
 皿割る程か?

「そうか、なら厨房には今後一切入るな。それと仕事場を変える」 

「え、何処にですか?」

「………屋敷の掃除と他の仕事だな。仕事は主に、廊下と後は……畑だけだな」

「え!畑なんて、私は仕事したことが……」

 畑なら転んだって、自分が痛い思いをするだけだからな、壊すものも無いだろう。
 冷たい様だが……奴隷商に戻すよりは良いだろう?

《ゲス、過ぎませんか?》

『知らんわ!なら、奴隷商人に言って買い取らすか?』

《……………》
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

成り上がり覚醒者は断れない〜魔王から得た力で自分を虐げてきた人類を救っていく〜

酒井 曳野
ファンタジー
 ここはモンスターが湧き出る『ダンジョン』という試練、それらを攻略する『覚醒者』という武器、モンスターとダンジョンから採取できる『魔法石』による恩恵で成り立つ世界。  主人公レイン・エタニアは覚醒者でありながらランクが最も低いFランクの中でも最底辺だった。家族を守る為に活動したが、周りから見向きもされず虐げられ苦しい毎日を過ごした挙句に騙され死の淵を彷徨う事となる。  しかし死の先で出会ったかつての大戦で生き残った魔王に才能を認められ徹底的に鍛えられた。  人類には到達不可能な領域に達したレインはこれまで虐げてきた者たちに復讐をーーとはならず慕う者には慈悲を、敵には容赦しない元来の性格(無自覚)が影響して助けを求める声に手を差し伸べる。  それはやがて世界を巻き込む大いなる災いの最前線へと向かっていく。  これは魔王に認められ力を得た覚醒者が人類を助ける救世主となる物語。  

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...