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第10章

第11話 別の物件

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「ジュリ様!大変お待たせしました事をお詫び申し上げます」

 深々と頭を下げて詫びて来るバランさん。
 なんだろうかこれは?
 俺が暴れるとでも思っての、この詫びなのだろうか?

「いえ、別に。ただ」
「ただ?」
「ただ、カードさえ返して下されば文句はないです」
「大変申し訳ありません。此方がジュリ様にお借りしたカードです。お確かめください」

 と、カードを出しておれに渡された。
 ので、俺はカードを受け取り俺のカードかを確かめる。

「………(確かに俺のだな。何もされてないと。ホッ)確かに俺のです。で、この後はどうするのかな? 俺ら食事もしてないんだけど」
「あっ!そうでしたね。今日は時間も掛かりましたし、昼食も取らずにこの時間に成ってしまいました。お詫びしょうもございません」
「まあ、時間は確かに取られたよなぁ~」
「兄ちゃん、腹減った。そろそろ帰ろうぜ」
「そうだなぁ、でも、未だ家が決まってないし」  

 と、バランさんに目配せをするも、俺の目配せは感じ取ってくれない。
(はぁ~鈍感、上に役立たずとは此れいかに。はっきり言わないと、分からんのかな?)
「ねえ、バランさん」

 カイトがバランさんに話し掛ける。
 お前、何を訊くんだ?

「は、はい、なんでしょうか」
「あのさ、いつまで拘束されないと成らんの? 俺ら」

 へぇ他人には俺とか使えるんだ、カイトが俺とか笑えるんだけど。

「い、いえ拘束しているつもりはありません。私共はジュリ様達に…」
「あのさ、」
「は、はい」
「だから、家の紹介したいならさっさとしてよ。それに、さっき見せてくれた家を買うって言ってんのに、何で他の物件が未だあるとか言い出したの? その意味をこっちは訊きたいんだけど?」
「そ、それはですね……つっっ!大変申し訳御座いません。今日の家は貴方様達を試す意味でのご紹介でした!」

 それを訊いて俺達は絶句。
 なに試すって?
 え、え、えぇぇ………なんか腹が立ってきたのだが。なに本心ゲロってんの?

「はぁ俺らを試すだと?こうして、ギルドの紹介状も持って来てるのに、何で試される必要があんだよ」

 俺より先にカイトが切れた!
 出遅れた感が否めない。

「そ、それは……当ギルドマスターの指示でして。私はそれに従っただけで」

 はぁ~従っただけで………かぁ。
 まあ、そうなるわな。
 バランさんは、ギルド職員なんだしな。でもなぁ~腹立つのは変わらない!
 

「つ!てめ……」

 二度言うぞ!カイトが切れた。
 俺よりカイトが切れた。   
 なので俺が切れられない。
 
「か、カイト落ち着け。ほら、コーラでも飲んでろ」

 と、鞄からカイトの好きなコーラをこれ見よがしに、バランさんの目の前で渡してやる。フフフ不思議だろ?

「兄ちゃん………」
「まあ、落ち着け。それでバランさん、俺らを馬鹿にして気持ち良かったですか? 腹で笑ってたんだろ。あの物件を紹介して、こんな屋敷はお前らには買えないだろってさ」
「い、いえ!そんなことは。私はそんなつもりは……(なんで、私がこんなに責められないと成らんのだ!全てはあのギルマスの所為だ!それに、あの飲み物はなんだ? あんな黒い飲み物……と言うかあの容器はなんだ?)」
「どうだか!あんたさっ、腹の中で俺らを馬鹿にして笑ってたんだろ? 是非、訊かせろよ。最高に気分が良かったんじゃない?」

 またカイトが口出しして来たが、俺もそう思うので、黙ってカイトの好きにさせておく事にした。

「そんなことは、御座いません。(あの飲み物、興味がありますよ!これは逃しては成らないですよ)」
「ふん、どうだか。なぁ兄ちゃん」
「なんだ?」
「こんなギルドと取引すんの?」
「まあ、なぁ~どうするか考えてるとこ。冒険者ギルドのマスターに、相談しに行くのも手だけど。あの人、良い人だったし」
「そうなの?」
「そうなの」
「へぇ~じゃあさ、今から相談に行こうよ。ここは一旦出てさっ」
「まあ、そうかな。それも手だよな」

 俺達二人は席を立とうとすると、バランさんに止められた。なんで?

「ま、待って、お待ち下さい。(あれを逃せない!きっと、商売に繋がる筈だ)」
「え、何でまた待つのかな?」
「此方を、そう此方を御覧下さい!(ええい!これを出せば文句はあるまい)」

 バンとテーブルの上に図面らしき書類を広げられた。

「なにそれ?」
「馬鹿、カイトあれは家の書類だぞ。なあ、それ図面なのか?」
「ええ、今日ご案内した物件の図面と、一件お勧めの屋敷の立地と、屋敷の図面をご用意しましたので、二件を見比べて見ては如何かと。それと私共が、お客様に対し大変失礼な態度を取り、大変申し訳御座いません。従って、どちらかの家をご購入された暁には、家の販売価格を半額でご提供させて頂きたい、と言うご提案を受けて貰えないかと」

 半額ねぇ。
 ま、それも良いかな?

「そうなの? なら、その書類上見せてよ。兄ちゃん座ろうぜ。ほら、書類だってさ」
「お、おう」

 カイトが座り治して俺の袖を引っ張り、俺もカイトに習って座り直してカイトが渡してくる書類に目を通した。

 
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