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第10章
第8話 後出しじゃんけんってなんだよ。
しおりを挟むポツンと部屋に待ち惚けにされてますが。何か?
実際はカイト達が居るのでポツンではないが、樹里の気持ち的にはポツンだ。
バラン達のドタバタを知らない樹里は、呑気に爆睡しているカイト達を見つめて考え事をしていた。
バランが部屋に戻って来るのを待つが、まだ戻って来ない。
横を見れば、カイトとベルゼスは爆睡中。
お前らよくこんなところで眠れるな?
俺には出来ない。はぁ~と溜め息を漏らす。
それにここは、待ってても水の一杯も出てこないし。
「はぁ、喉乾いたし。何か出すか」
樹里はネットからコーヒーのペットボトルを出す。寝てる二人は……出さなくて良いな。寝てるし。
樹里は、ペットボトルのキャップを捻ってボトルの飲み口に口をあてると、その勢いでグイッとコーヒーを口に含みそれを飲み込む。
「ウンマ!」何これ。最近のコーヒーは一味違うぜ!と、独り言。
訊かれるのはまずいからな。
ペットボトルの中に入るコーヒーをマジマシと見つめて感心する。
が、樹里はコーヒーの味など分かる程詳しくもなく。前世では好んでコーヒーを飲まなかったのだ。人から勧められ、飲めと出されれば飲む感じだ。
寧ろ、好んで飲んで居たのはお茶関係である。
お茶……そう言えば、あいつ元気にしてるかなぁ~。懐かしい。
前世でお茶好きな友が居て、そいつに連れられて良くお茶を飲み歩きしたもんだ。
そんな昔の事を思い出して居ると、突然部屋の扉が開いた。
『バン!』
「っ!な、なに?」
扉が開き、扉の方を慌てて振り向けば人が入ってきた。
ノックも無しの突然の事で、咄嗟の行動が遅れた樹里である。あっ!と思っても、テーブルの上に飲みかけのペットボトルが置きっぱなしで、手が動かずペットボトルはそのままだ。
(やべ、隠せない)
気づくが、素手に遅く人がずかずかと入って来てしまっていた。
「失礼、お待たせしました。ジュリ様」
「お、おう。忘れられたかと思ったぜ」
もういいや、隠せないし諦めた。
どうにでもなれ。
でも、何気に目につかない様に端にそっと寄せる。
「それは、大変失礼しました」
何やらバランは神妙な雰囲気を醸し出してるけど、なに?それにギルマスまで連れて来てるし。
確かこの人ギルマスで良かったよな?
「で、なに?ギルマスまで連れて来て」
セーフまだペットに気づいてないな。
もう少し話をしから、さっと仕舞ってしまおう。ペットボトルの話だぞ。
カイト達は未だ寝てるし、お前らどんだけ寝るんだ?もしかしたらベルゼスだけは起きてるかも。
こいつ、狸寝入りか!
虎の癖に。
「そ、それが……」
おっと、話の最中だったな。
でも、なんかバランさんが申し訳無さそうだけど。それに、なんでソファー座るのに、そんなに恐る恐るなのかな?
おっかなビックリしてるのは何故?
まあ面白いからバランさん達の出方を見るけど。(笑)
「あ、あの………」
「あっ、その前にさ、俺のカードを返して。あれないと困るんだ。紛失は痛いからな」
「ああ、そうでしたね。お返し……ああ、ギルマス!ジュリ様のカードはどうしましたか?」
「へっ、カード?」
「ジュリ様のギルドカードですよ、先ほど渡してその後どうしましたか?」
「カード……は、渡されて確認……あっ、部屋に置きっぱなしだ。と、取って来るので少しお待ちを」
ギルマスは立ち上がると慌てて部屋から出て行く。
それを見送るが、何をそんなに慌ててるんだ?良く分からないギルドだな。
なんかまた、ここに来るのを間違えたか?
「ジュリ様、少しお待ちくださいね。それから物件の話ですが、本日ご案内した物件の他にも、ご案内出来る物件がございますが、如何いたしますか?」
「へ? 如何って、それなら物件案内する前に話す事ではないかな?」
「そ、そうなのですが、その此方の不手際で、申し訳ありません」
「不手際ですか」
「ええ、それで、ご案内する物件は後三件程あるのですが、これ等を見られますか?」
「見られって、それ……時間掛かるよね?」
「ええ、まあ」
「それならなんで、最初に顔を会わせた時に言わないのかな?」
「も、申し訳ございません。此方の不手際で」
「不手際?つか、その言葉二度目だよな訊くの。それから、早く俺のギルドカード返してくれない?まず、最初に貸したものを返すの辺り前なのでは?」
「す、すみません。少しこのままお待ちを。今確認してきます」
それだけ言ってまた、バランさんが席を立ち部屋から出ていった。
はぁ~なんだこれ。
後だしじゃんけんでもするつもりなのかね。
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