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7.女王の奏でるラプソディー
31.エメラルド泊地は……
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「ついに、来てしまったのかい……?」
開け放たれた両開きの窓から入る心地よい風は、シンプルに白と青のグラデーションが入ったカーテンを揺らしている。
窓際にたたずんだ男の鍛え上げられた筋肉は、嫌味の無い肉体美を形成し、やや火照って赤みを帯びた身体を風にさらしている。男のやや低めのバリトンの声は、ささやくように小さいのにとてもよく通る。
窓際にたたずむ男の後ろ姿は、月の灯かりによって黒い影となりたたずんでいる。対する相手は、細身の体を下士官用の制服におさめた美形の青年のようだ。左右の腰に、直径十五センチ程の金属製の輪が吊られている。
青年は、夕暮れ前に届いた偽装された暗号書を開くと、男の質問に答える。
「はい。夜間の入港を嫌い、明日入港するとの先触れが在りました。水平線上に見える緑灯と紅灯がそれです……」
男が見る窓からは、漆黒の闇に染まる大地と、群青色の空を飾る数多の星々に混じって、水平線上で位置を変えない緑と紅の灯がよく見える。
「ふっ、彼の有名な白き美姫か…… 是非、お相手したいものだね。昼も……そして夜もね……」
男の背後のベッドには、木綿のシーツと月明かりに照らされた褐色の細い足。太ももから上は闇に沈んでいるが、やや開かれた足と僅かに香る血の匂い、すすり泣く少女らしき声を、風が軽やかに運んでいく……
「……かしこまりました。我が主よ……」
一礼をしてドア外へと出ていく細身の影を、目線で追ったのはベッドの上。褐色の肌に、黒髪黒瞳を持った少女であった……
*****
「……これはまた……」
「…………レギニータの母国アルムニュール国とは、雰囲気が違いますわね……」
僕の言葉に、イリスさんが言葉を続けます。レギニータの母国アルムニュール国は、イメージとしてはフィジーやパラオ、ハワイのような、太平洋の南国の島といった感じでした。
それに対して、エメラルド島は直径五キロメートルほどの三日月形をした島で、火山のクレーターが斜めになっていて、東側の三分の一程が海面下に没しています。クレーターの最高峰は千五百メートルの高さを誇り、島の外側は断崖となっています。ですが、急峻とはいえ年間一万ミリを超える豊富な雨量によって、大小の渓谷が刻まれており、熱帯雨林が繁茂していて、遠目には緑色の島に見えるのがエメラルド島と呼ばれる所以となっています。
それに対して、海に没した火口部はなだらかな傾斜を描きつつ、クレーターに囲まれた湾を形成していますが、土地自体は火山岩で形成されていて、雨量は少なくやせた土地で、作物の栽培には向きません。
海岸から階段状にスティーリャードと名付けられた町が形成されていますが、この町自体はどの国にも所属していませんが、住民は必ず周辺国のいずれかに所属して、納税の義務を負う事になっています。これはこの島の所有権を求めて、周辺国とこの島に拠点を持っていた商人たちとの話し合いによって定まったとの事ですね。
アレキサンドリアのエメラルド島泊地は、島を形成するクレーターの南西にある渓谷にありました。急峻な崖ばかりに見えますが、刻まれた渓谷の一部に港として利用可能な場所があり、そこを泊地として利用しているようです。
軍港は中規模の桟橋と小規模の桟橋がそれぞれ一本ずつですが、小規模の桟橋には一本マストに、三角帆一枚のドー二ーと呼ばれるタイプの船が横付けされています。
前日の夕方には青玉島沖合に到着したQAですが、エメラルド島の停泊地の周囲は、日が暮れつつあった時刻では入港は難しいだろうと思っていましたが、接近するとそれが正解だったと判ります。
「これは……思ったよりも小さいですね……」
ハリー航海長がつぶやいた言葉に、僕もうなづきます。
「これって補給と休息用の港ですよね…… 寝る場所しかなさそう……」
つぶやくアーシャの声も、消え入りそうな小声ですよ。僕は資料を情報パネルに呼び出して確認してみます。すると、そこには……
《エメラルド島泊地
アレキサンドリア共和国が、エメラルド島に借り受けた租借地である。広さはエメラルド島を東西に分けるスパインストーンの西側、東西二千メートル、南北三千メートルに及ぶ広大な泊地であり(但し大部分は熱帯雨林と急峻な渓谷)、基地人員は千人(を予定している)
※ 開拓されているのは百メートル四方 現人員は基地司令及び参謀の二名のみ》
……基地司令と参謀の二名だけ?! これって、左遷先じゃないの? 基地司令と参謀って、ぶっちゃけ補給資材の調達係ですよね、これって? 木造の家屋数も十棟程度ですから、通常の帆船の船員が休める程度しかないですよね?
アーシャは寝る場所しか無さそうとか言ってましたが、寝る場所すら怪しいですよ……
「……すみませんが、艦橋要員の方はこれから先の事は見なかった事にしてくださいね……」
僕はそういうと、返事を待たずにコマンドを発行します。
「Number A001 choice.Calling start.This is Chloe Speaking.」
『あら、やっとついたのね』
情報パネルに映し出されたのは、もちろんアレクシアさんです。でも、今のセリフは……
「……そう言うって事は知ってましたね。どういうつもりなんです?」
僕はアレクシアさんからの説明を待ちます。
「やぁねぇ、クロエちゃん勘ぐりすぎよ。ただの新しい通信機器(?)の性能試験よ、ただの……
No.A004 Additional connect.
そうでしょ? これは、必要な事よね、ジャスティン」
情報パネルが分割されて、さらにジャスティン・フィッシャー海軍長官が画面に表示されたのですが……
ワイアットが、グフッっとか変な音をだしてティーカップを慌てて置きましたよ。ハンカチで口元を抑えている様子が、僕の視界の隅に映っています。
長官の画面……色々と見切れていますね………… いいんでしょうか? どう見ても机は簡易机ですよね? 左端に映っているのはベッドですよね……? というか、上半身は海軍の制服ですが、ズボンはパジャマじゃ……
画面に映ったアレクシアさんも、必死に笑いをこらえているようですが…… 絶対確信犯ですよね? そう言えばエメラルド島は東に三千キロほど離れていますから、時差は五時間以上ある事になりますね。
いま、こちらは朝の九時ですから……って、アレキサンドリアはまだ早朝じゃないですか!! まずいですっ、時差を考えずに回線をつなげてしまいましたよ。でも、アレクシアさんはきっちりとした服装に、多少なりと化粧もしていますね?
そういえば、近海に着いたら連絡しろといってましたが、今回の海軍長官のこの失態も、アレクシアさん事前に企てましたね……
僕が長官に、パジャマのズボンが見切れている事を伝えようとしたその時でした。
「ん~なによぅ、朝からうるさいわよ……」
何かが飛んできて、長官の頭に音を立ててぶつかったようですが、さすがにまずいと思ったのか、長官が慌てて映像を切る様子が見えました。そして、映像が切れる一瞬前に、ベッドサイドらしい場所には、太ももまで露わになった真っ白な細い脚が……
ユイも見てしまったのでしょう、真っ赤な顔を両手で押さえていますし、ワイアットは心なしかうつ向いていますね…… そして、アレクシアさんは大笑いしています。話が進みそうになかったので、僕は長官との回線を切断します。
気まずい沈黙が流れ、艦橋要員の全てがワイアットを見つめる中、ワイアットがうつ向かせていた顔を上げます。そして、僕の顔を見てにっこりと笑いました……
「……クロエ艦長、時差を理論上ではなく体感させていただき、ありがとうございます。そこで失礼ながら確認しますが、今回の件は艦長が企てたんですか……?」
こわっ、ワイアットの目の笑っていない笑顔が、久しぶりに僕に向けられましたよ。僕は全力で顔を横に振ります。もちろん必死ですよっ。
『うふふ、ワイアット君クロエちゃんに絡んじゃだめよ? そちらの基地の様子を把握していながら、最初に仕掛けたのは長官よ? きっと着くなり、新機能の魔法通信装置を使ってくるから、ちゃんとカメラに変なものは映らないようにしておいてねって、私もアドバイスしていたんだけど(笑)』
……やっぱりアレクシアさんが一枚かんでいましたか。でも、こちらの状況を承知で、長官が仕掛けたという事は、必要なら艦にあわせて港を作れという事で良いんですよね?
その点をアレクシアさんに確認すると、こちらも新機能の#魔法文書送信機能_MDSF__#で、エリックさんがひいたとおもわれる図面が送られてきました。
『それにしても、時差は理解してるつもりでいたけど、直接感じると違うわね~。QAの時計も、うちと同じ時間を指しているんだし、クロエちゃんも気づかないとね』
そう言ってアレクシアさんは笑いますが、エメラルド島の余りの状況のせいで、ついつい失念していただけですよ。一応艦橋後部の壁には、アレキサンドリアの標準時刻と、艦の現在位置での現在時の両方があります。エメラルド島につくまでは、交代勤務はアレキサンドリアの標準時にあわせていたので、明日以後はこちらの時間にあわせるように調整しないといけませんね。
余談にはなりますが、地球でも時差の概念は結構古く、古代ギリシャではその概念は既にあったという話もあります。これは天体の運行を観察していて発見されたらしいとの事ですが、六世紀の中国でも各地に日時計を作り、日食などで時間を測った記録もあるそうですね。
千八百四十年のイギリスで、鉄道標準時の制定もあったそうですから、一般の人に知られ始めたのはそのころだといわれているようです。
一般の人がはっきりと理解したのは、千八百八十四年の電話の発明ではないかと言われていますね。
そして忘れてはならないのが、正確な時計です。大英帝国が十九世紀に海の覇者となった要因の一つには、正確な時計の存在があるといわれていますからね。時計も、アレキサンドリアでは、高精度な魔法式の物が普及しはじめています。
あっ、ちなみに長官の部屋にいた美脚の持ち主は、もちろん長官の奥様であり、ワイアットのお母さんフェリシアさんだそうです。もちろん、ワイアットとアレクシアさんの保証付きなので、家庭問題には発展せずに済みそうですね。
その後、再び長官との回線がつながりましたが、こんどはきちんと自宅にある執務用の部屋での会話でした。フェリシアさんが長官の斜め後ろに立って、ワイアットに手を振っていました。ワイアットのお母さん、容姿もですが性格的にかなりかわいい女性だなと、思ったのは内緒です。
肝心の要件を忘れるところでしたが、アレクシアさんが送ってきた図面にしたがって、QA用の埠頭というよりはドッグに近いものを設置しました。どうやら、最初から僕にやらせるつもりだった様ですね。魔法を使ったことよりも、別な意味で精神的に疲れた入港となりましたとさ……
開け放たれた両開きの窓から入る心地よい風は、シンプルに白と青のグラデーションが入ったカーテンを揺らしている。
窓際にたたずんだ男の鍛え上げられた筋肉は、嫌味の無い肉体美を形成し、やや火照って赤みを帯びた身体を風にさらしている。男のやや低めのバリトンの声は、ささやくように小さいのにとてもよく通る。
窓際にたたずむ男の後ろ姿は、月の灯かりによって黒い影となりたたずんでいる。対する相手は、細身の体を下士官用の制服におさめた美形の青年のようだ。左右の腰に、直径十五センチ程の金属製の輪が吊られている。
青年は、夕暮れ前に届いた偽装された暗号書を開くと、男の質問に答える。
「はい。夜間の入港を嫌い、明日入港するとの先触れが在りました。水平線上に見える緑灯と紅灯がそれです……」
男が見る窓からは、漆黒の闇に染まる大地と、群青色の空を飾る数多の星々に混じって、水平線上で位置を変えない緑と紅の灯がよく見える。
「ふっ、彼の有名な白き美姫か…… 是非、お相手したいものだね。昼も……そして夜もね……」
男の背後のベッドには、木綿のシーツと月明かりに照らされた褐色の細い足。太ももから上は闇に沈んでいるが、やや開かれた足と僅かに香る血の匂い、すすり泣く少女らしき声を、風が軽やかに運んでいく……
「……かしこまりました。我が主よ……」
一礼をしてドア外へと出ていく細身の影を、目線で追ったのはベッドの上。褐色の肌に、黒髪黒瞳を持った少女であった……
*****
「……これはまた……」
「…………レギニータの母国アルムニュール国とは、雰囲気が違いますわね……」
僕の言葉に、イリスさんが言葉を続けます。レギニータの母国アルムニュール国は、イメージとしてはフィジーやパラオ、ハワイのような、太平洋の南国の島といった感じでした。
それに対して、エメラルド島は直径五キロメートルほどの三日月形をした島で、火山のクレーターが斜めになっていて、東側の三分の一程が海面下に没しています。クレーターの最高峰は千五百メートルの高さを誇り、島の外側は断崖となっています。ですが、急峻とはいえ年間一万ミリを超える豊富な雨量によって、大小の渓谷が刻まれており、熱帯雨林が繁茂していて、遠目には緑色の島に見えるのがエメラルド島と呼ばれる所以となっています。
それに対して、海に没した火口部はなだらかな傾斜を描きつつ、クレーターに囲まれた湾を形成していますが、土地自体は火山岩で形成されていて、雨量は少なくやせた土地で、作物の栽培には向きません。
海岸から階段状にスティーリャードと名付けられた町が形成されていますが、この町自体はどの国にも所属していませんが、住民は必ず周辺国のいずれかに所属して、納税の義務を負う事になっています。これはこの島の所有権を求めて、周辺国とこの島に拠点を持っていた商人たちとの話し合いによって定まったとの事ですね。
アレキサンドリアのエメラルド島泊地は、島を形成するクレーターの南西にある渓谷にありました。急峻な崖ばかりに見えますが、刻まれた渓谷の一部に港として利用可能な場所があり、そこを泊地として利用しているようです。
軍港は中規模の桟橋と小規模の桟橋がそれぞれ一本ずつですが、小規模の桟橋には一本マストに、三角帆一枚のドー二ーと呼ばれるタイプの船が横付けされています。
前日の夕方には青玉島沖合に到着したQAですが、エメラルド島の停泊地の周囲は、日が暮れつつあった時刻では入港は難しいだろうと思っていましたが、接近するとそれが正解だったと判ります。
「これは……思ったよりも小さいですね……」
ハリー航海長がつぶやいた言葉に、僕もうなづきます。
「これって補給と休息用の港ですよね…… 寝る場所しかなさそう……」
つぶやくアーシャの声も、消え入りそうな小声ですよ。僕は資料を情報パネルに呼び出して確認してみます。すると、そこには……
《エメラルド島泊地
アレキサンドリア共和国が、エメラルド島に借り受けた租借地である。広さはエメラルド島を東西に分けるスパインストーンの西側、東西二千メートル、南北三千メートルに及ぶ広大な泊地であり(但し大部分は熱帯雨林と急峻な渓谷)、基地人員は千人(を予定している)
※ 開拓されているのは百メートル四方 現人員は基地司令及び参謀の二名のみ》
……基地司令と参謀の二名だけ?! これって、左遷先じゃないの? 基地司令と参謀って、ぶっちゃけ補給資材の調達係ですよね、これって? 木造の家屋数も十棟程度ですから、通常の帆船の船員が休める程度しかないですよね?
アーシャは寝る場所しか無さそうとか言ってましたが、寝る場所すら怪しいですよ……
「……すみませんが、艦橋要員の方はこれから先の事は見なかった事にしてくださいね……」
僕はそういうと、返事を待たずにコマンドを発行します。
「Number A001 choice.Calling start.This is Chloe Speaking.」
『あら、やっとついたのね』
情報パネルに映し出されたのは、もちろんアレクシアさんです。でも、今のセリフは……
「……そう言うって事は知ってましたね。どういうつもりなんです?」
僕はアレクシアさんからの説明を待ちます。
「やぁねぇ、クロエちゃん勘ぐりすぎよ。ただの新しい通信機器(?)の性能試験よ、ただの……
No.A004 Additional connect.
そうでしょ? これは、必要な事よね、ジャスティン」
情報パネルが分割されて、さらにジャスティン・フィッシャー海軍長官が画面に表示されたのですが……
ワイアットが、グフッっとか変な音をだしてティーカップを慌てて置きましたよ。ハンカチで口元を抑えている様子が、僕の視界の隅に映っています。
長官の画面……色々と見切れていますね………… いいんでしょうか? どう見ても机は簡易机ですよね? 左端に映っているのはベッドですよね……? というか、上半身は海軍の制服ですが、ズボンはパジャマじゃ……
画面に映ったアレクシアさんも、必死に笑いをこらえているようですが…… 絶対確信犯ですよね? そう言えばエメラルド島は東に三千キロほど離れていますから、時差は五時間以上ある事になりますね。
いま、こちらは朝の九時ですから……って、アレキサンドリアはまだ早朝じゃないですか!! まずいですっ、時差を考えずに回線をつなげてしまいましたよ。でも、アレクシアさんはきっちりとした服装に、多少なりと化粧もしていますね?
そういえば、近海に着いたら連絡しろといってましたが、今回の海軍長官のこの失態も、アレクシアさん事前に企てましたね……
僕が長官に、パジャマのズボンが見切れている事を伝えようとしたその時でした。
「ん~なによぅ、朝からうるさいわよ……」
何かが飛んできて、長官の頭に音を立ててぶつかったようですが、さすがにまずいと思ったのか、長官が慌てて映像を切る様子が見えました。そして、映像が切れる一瞬前に、ベッドサイドらしい場所には、太ももまで露わになった真っ白な細い脚が……
ユイも見てしまったのでしょう、真っ赤な顔を両手で押さえていますし、ワイアットは心なしかうつ向いていますね…… そして、アレクシアさんは大笑いしています。話が進みそうになかったので、僕は長官との回線を切断します。
気まずい沈黙が流れ、艦橋要員の全てがワイアットを見つめる中、ワイアットがうつ向かせていた顔を上げます。そして、僕の顔を見てにっこりと笑いました……
「……クロエ艦長、時差を理論上ではなく体感させていただき、ありがとうございます。そこで失礼ながら確認しますが、今回の件は艦長が企てたんですか……?」
こわっ、ワイアットの目の笑っていない笑顔が、久しぶりに僕に向けられましたよ。僕は全力で顔を横に振ります。もちろん必死ですよっ。
『うふふ、ワイアット君クロエちゃんに絡んじゃだめよ? そちらの基地の様子を把握していながら、最初に仕掛けたのは長官よ? きっと着くなり、新機能の魔法通信装置を使ってくるから、ちゃんとカメラに変なものは映らないようにしておいてねって、私もアドバイスしていたんだけど(笑)』
……やっぱりアレクシアさんが一枚かんでいましたか。でも、こちらの状況を承知で、長官が仕掛けたという事は、必要なら艦にあわせて港を作れという事で良いんですよね?
その点をアレクシアさんに確認すると、こちらも新機能の#魔法文書送信機能_MDSF__#で、エリックさんがひいたとおもわれる図面が送られてきました。
『それにしても、時差は理解してるつもりでいたけど、直接感じると違うわね~。QAの時計も、うちと同じ時間を指しているんだし、クロエちゃんも気づかないとね』
そう言ってアレクシアさんは笑いますが、エメラルド島の余りの状況のせいで、ついつい失念していただけですよ。一応艦橋後部の壁には、アレキサンドリアの標準時刻と、艦の現在位置での現在時の両方があります。エメラルド島につくまでは、交代勤務はアレキサンドリアの標準時にあわせていたので、明日以後はこちらの時間にあわせるように調整しないといけませんね。
余談にはなりますが、地球でも時差の概念は結構古く、古代ギリシャではその概念は既にあったという話もあります。これは天体の運行を観察していて発見されたらしいとの事ですが、六世紀の中国でも各地に日時計を作り、日食などで時間を測った記録もあるそうですね。
千八百四十年のイギリスで、鉄道標準時の制定もあったそうですから、一般の人に知られ始めたのはそのころだといわれているようです。
一般の人がはっきりと理解したのは、千八百八十四年の電話の発明ではないかと言われていますね。
そして忘れてはならないのが、正確な時計です。大英帝国が十九世紀に海の覇者となった要因の一つには、正確な時計の存在があるといわれていますからね。時計も、アレキサンドリアでは、高精度な魔法式の物が普及しはじめています。
あっ、ちなみに長官の部屋にいた美脚の持ち主は、もちろん長官の奥様であり、ワイアットのお母さんフェリシアさんだそうです。もちろん、ワイアットとアレクシアさんの保証付きなので、家庭問題には発展せずに済みそうですね。
その後、再び長官との回線がつながりましたが、こんどはきちんと自宅にある執務用の部屋での会話でした。フェリシアさんが長官の斜め後ろに立って、ワイアットに手を振っていました。ワイアットのお母さん、容姿もですが性格的にかなりかわいい女性だなと、思ったのは内緒です。
肝心の要件を忘れるところでしたが、アレクシアさんが送ってきた図面にしたがって、QA用の埠頭というよりはドッグに近いものを設置しました。どうやら、最初から僕にやらせるつもりだった様ですね。魔法を使ったことよりも、別な意味で精神的に疲れた入港となりましたとさ……
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