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5.南海の秘宝
46.海賊の襲撃とレギニータ
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出港してから3日目まで、レギニータは衛生班の下で忙しい日々を過ごしていた。
初日は船酔い患者(?!)が、予想よりもおおく発生し、慌ただしく過ごした。続いた二日目には、全力機能試験との名目で、最大級の速度で艦を振り回した結果、油断をしていた青家出身の水兵が、各処で転倒などによる打撲をしたり、飛空艇や荷物の固定が甘かったために、この日も骨折を含む負傷者を出した。
単純な骨折などは、治癒魔法によりすぐに回復してしまうが、陸上の冒険で負傷した場合と異なり、施術後の確認などもある。武器による切り傷や刺し傷と異なり、さらに前衛職のように身体を鍛えているわけでもない乗員のケガは、油断していたためもあって、地味に治療しにくい状態が多かったのだ。
三日目にもなると、さすがに船酔いや油断からくる負傷者は減っており、衛生班としてもほっとしはじめた矢先の事であった。
『これより、クイーンアレキサンドリアは戦闘態勢に移行します。戦闘区画以外のハッチは間もなく閉鎖されます。総員持場にて待機願います』
艦内放送が聞こえた時、レギニータは病室で前日の全力運転で、左腕を骨折した飛空艇の整備員の治療を補助していた。
「おい、治療はもういい」
「あっ、ちょっと……待つんですの!」
それまで世間話を続け、治療を遅らせがちだった男は、治療していたレギニータを振り切って病室を出て行ってしまった。はずみで、男が腰かけていたベッドに、したたかに腰を打ち付けたレギニータは、思わず怒りの声をあげる。
「いったいなんなんですの!」
直後に舷側側の丸窓に、外部からシャッターが降り、室内が一瞬暗くなった。
「えっ?」
慌てたレギニータの腕を、誰かがつかんだ。
「早く、こっちに来るにゃ!」
腕をつかんだのは獣人のルーシーだ。ルーシーに引かれるまま、医務室へと連れていかれたレギニータは、映し出された情報パネルに赤地の帆に白の髑髏を見いだし、
「ひっっ!」
と声をあげる。赤地の帆に白の髑髏を掲げる海賊は、この海域では死神の象徴だ。とはいえ、海賊と言えど水中に棲む人魚族には手をだせないが、レギニータはアルべニア共和国へと渡る際に、一度彼らに襲われていた。
震えるレギニータを見て、クリスティーナとルーシーはけげんな顔をしてみている。彼女たちの顔には、多少の緊張はあるが恐怖はみられない。
「レギニータはあの船を知っているのかにゃ?」
「海賊だと判っているんだ。どうでも良いだろう」
ルーシーは不思議そうな顔をしてレギニータを見ているし、クリスティーナは情報パネルから目を離しさえしない。
彼女たちは、海賊船『Bloody killer whale』を知らないから、恐れていないと判断したレギニータは、二人にその恐ろしさを伝えようとするが、一向に理解してもらえない。
「なんで、なんでわかってくれないんですの?!」
そう叫ぶレギニータに、クリスティーナは冷たく言い放った。
「うるさいぞ、そのくらいのことで衛生科の科員がいちいちうろたえるな」
「なっ……」
絶句するレギニータの肩に、ぽんぽんと優しく肩を叩くのはルーシーだ。
「慌てたって仕方ないのにゃ。私たちはやるべきことをやる。それだけにゃよ?」
「それに、私達だけじゃない。この艦に乗艦している面々は、若いとはいっても訓練期間は長いし、実戦経験があるやつもいる。やつらにこの艦の障壁はぬけない」
クリスティーナは忌々しそうに断定するが、根拠のない自信にみえて、レギニータが更に声をあげようとしたその時である。不意に、ひざの力が抜けて、レギニータはストンと椅子に座りこんでしまう。
医務室の椅子ですら固定されているのに、絶妙な位置にレギニータを座らせたのはルーシーだ。レギニータはルーシーの指が、自分の肩からゆっくり離れるのをぼんやりとみていた。先ほどまでの恐怖や怒りといった感情すらなく、冷静でいられる自分の心を、レギニータは不思議に思う。
「全く、手間をかけさせるんじゃない。軍の船に乗るという事は、殺し殺されるということさ。その覚悟がなければ、最初から乗ろうなんて考えるな」
「全く、クリスにゃんは厳しいのにゃ。一般人にそんな覚悟は無理ですにゃよ。まして、一度あの海賊に襲われてトラウマになってるようにゃから」
自分より年下の子に、軍の船に乗る覚悟を諭され、さらに海賊に対する恐怖のトラウマすら見抜かれて、レギニータは呆然とするしかない。
「しかし、相変わらず見事なもんだな。人体操作と精神安定が得意とは言え、初見の人魚族相手に器用なものだ」
ちらりとレギニータとルーシーを見たクリスティーナは、再び情報パネルを見やる。接近してきた海賊船が、こちらの行く手をさえぎろうと進路を変えようとした途端、それは起こった。
「あっ、帆が……」
三人が見つめる情報パネルの中で、いきなり全ての帆が裂け、索具の太い綱に撃たれて海に落水したり、風圧のバランスが崩れて急旋回したヤードから落下する海賊が見えた。
「ちっ、さっさと燃やせばいいのに。艦長は甘ちゃんだからな」
「またぁ、クリスちゃんとビクトリアちゃんは、艦長に厳しすぎるにゃ」
レギニータには情報パネルに表示される状況が信じる事はできない。一瞬で無力化された海賊船だが、クリスティーナがパネルを操作すると、船上の海賊達が拡大される。
その中に頭と思われる男が映る。残酷そうな顔に、複数の銃と短剣を身に着けた男だ。
「ひぃ……」
思わずレギニータは、我知らず右手で自身の右太ももを押さえた。それは『Bloody killer whale』の頭、ラウル・アラスに乗船していた武装商船の甲板上を追い回され、銃で撃たれた場所であった。
海へ落ちる前の、海賊どもの下卑た笑い声は、時折レギニータの記憶によみがえり、うなされる事もある。レギニータを狩りの標的にしたのは、乗組員の中でも一番若かったからであろう。彼女をいたぶる事で、他の乗客や船員の脅しとしたのだ。
レギニータは撃たれた直後、痛みで海に落ち、流木に掴まって漂流後、運よく通りかかった他の商船に助けてもらったのだ。人魚族であった事と、回復魔法が使えたことが幸いしたのである。
「ふにゃん」
ルーシーの声が耳元で聞こえた途端、レギニータの意識が急速に失われていく。情報パネルには、紅蓮の炎に焼かれる『Bloody killer whale』の姿が映ったのを最後に、そのまぶたはゆっくりと閉じられた。
レギニータの心に最後に宿ったのは……
(この強大な力を持つ艦を味方にできれば……南洋から海賊を消し……去る事が、……できるかも……)
という事であった。
がっくりと力の抜けたレギニータの身体を、「よいしょっ」っとかわいい声をあげて抱え込んだルーシーは、そっとその体を備え付けのベッドへと寝かせる。
「にゃぁ、戦いではケガ人は出なかったけど、心の傷が血を流した子がでちゃったのにゃ」
「ふん、軟弱な……」
「そんな事いっても、本人にはどうしようもないにゃ。銃で船の上を追い回されたみたいにゃよ? これだけでも、連中は死ぬべきなのにゃ」
緑色の瞳に怒りを浮かべたルーシーの耳は、後ろ向きに立っており、尾の毛も逆立っている。
(あ~、これは本気で怒ってるな。まぁ、仕方ないか)
クリスティーナは肩をすくめるが、どうやらルーシーは満足していないらしい。
「クリスちゃん! 仲間がこんなになってるんだから、少しは協力するにゃ!!」
「待ってよ。そいつは仲間って訳じゃないだろう。それにルーがいるんだから、私がどうこうする必要はないだろ」
厄介事が飛んできそうな状況に、クリスティーナは顔をしかめる。
「ゲストといっても、この子は衛生科のメンバーにゃよ? 海賊を見るたびにこんな状態じゃ使いものにならないにゃ。クリスちゃんなら、どうにかできるにゃろ」
「くそっ、最初からその気だったろ。……仕方ない。確かにこの状態じゃ、足手まといになるしな」
そういうと、クリスティーナは立ち上がり、レギニータの傍らに立った。
「もう、後からルーとこいつには、埋め合わせしてもらうからね!!」
レギニータの身体の上に差し出した、クリスティーナの右人差し指を中心に魔法陣が浮かび上がる。
「彼の者を苦しめる悪夢を喰らう者よ、来りてその夢を喰らいつくせ。『召喚 悪夢喰い』」
詠唱と共に、魔法陣から現れたソレは、鼻はゾウ、目はサイ、尾はウシ、脚はトラといった姿に見える。それはレギニータの左胸と右太ももにそれぞれその鼻を当てると、淡い黒い霧状の様なものが、吸い込まれ消えていった。それが終わると一瞬の光を放ち、ナイトメア・イーターは魔法陣と共に消え失せる。
「にゃぁ~、相変わらずクリスのネイトメア・イーターは可愛いのにゃ」
「はぁ? 私には変な動物にしかみえないよ」
どうやら、ナイトメア・イーターは見る人によって異なった姿に見えるらしい。ちなみに、ルーシーには熊のような生物で、頭が小さく足が短い、白黒まだらの動物にみえるらしい。どうせなら、そっちに見えた方が良かったと思うクリスティーナである。
「これでレギちゃんも、もう悪夢に悩まされる事はないのにゃ」
「いや、ルーは何もしてないだろ」
薄い胸を張るルーシーにクリスティーナは言うが、ナイトメア・イーターを有効に使うためには、被験者のトラウマを表に出して特定する必要があり、更に精神が安定した状態でなければ難しい。
ルーシーが被験者の精神を読み解き安定させ、クリスティーナがナイトメア・イーターで露わになった枷を取り除く。クリスティーナとルーシーの組み合わせは、戦争や魔物・魔獣などの様々な原因が引き起こす、精神的障害を治療する最適なコンビであった。
こうして、しばらく後に目を覚ましたレギニータには、海賊『Bloody killer whale』に対するトラウマは一切消え、なぜか衛生班1組の二人にこき使われることになるのだった。
初日は船酔い患者(?!)が、予想よりもおおく発生し、慌ただしく過ごした。続いた二日目には、全力機能試験との名目で、最大級の速度で艦を振り回した結果、油断をしていた青家出身の水兵が、各処で転倒などによる打撲をしたり、飛空艇や荷物の固定が甘かったために、この日も骨折を含む負傷者を出した。
単純な骨折などは、治癒魔法によりすぐに回復してしまうが、陸上の冒険で負傷した場合と異なり、施術後の確認などもある。武器による切り傷や刺し傷と異なり、さらに前衛職のように身体を鍛えているわけでもない乗員のケガは、油断していたためもあって、地味に治療しにくい状態が多かったのだ。
三日目にもなると、さすがに船酔いや油断からくる負傷者は減っており、衛生班としてもほっとしはじめた矢先の事であった。
『これより、クイーンアレキサンドリアは戦闘態勢に移行します。戦闘区画以外のハッチは間もなく閉鎖されます。総員持場にて待機願います』
艦内放送が聞こえた時、レギニータは病室で前日の全力運転で、左腕を骨折した飛空艇の整備員の治療を補助していた。
「おい、治療はもういい」
「あっ、ちょっと……待つんですの!」
それまで世間話を続け、治療を遅らせがちだった男は、治療していたレギニータを振り切って病室を出て行ってしまった。はずみで、男が腰かけていたベッドに、したたかに腰を打ち付けたレギニータは、思わず怒りの声をあげる。
「いったいなんなんですの!」
直後に舷側側の丸窓に、外部からシャッターが降り、室内が一瞬暗くなった。
「えっ?」
慌てたレギニータの腕を、誰かがつかんだ。
「早く、こっちに来るにゃ!」
腕をつかんだのは獣人のルーシーだ。ルーシーに引かれるまま、医務室へと連れていかれたレギニータは、映し出された情報パネルに赤地の帆に白の髑髏を見いだし、
「ひっっ!」
と声をあげる。赤地の帆に白の髑髏を掲げる海賊は、この海域では死神の象徴だ。とはいえ、海賊と言えど水中に棲む人魚族には手をだせないが、レギニータはアルべニア共和国へと渡る際に、一度彼らに襲われていた。
震えるレギニータを見て、クリスティーナとルーシーはけげんな顔をしてみている。彼女たちの顔には、多少の緊張はあるが恐怖はみられない。
「レギニータはあの船を知っているのかにゃ?」
「海賊だと判っているんだ。どうでも良いだろう」
ルーシーは不思議そうな顔をしてレギニータを見ているし、クリスティーナは情報パネルから目を離しさえしない。
彼女たちは、海賊船『Bloody killer whale』を知らないから、恐れていないと判断したレギニータは、二人にその恐ろしさを伝えようとするが、一向に理解してもらえない。
「なんで、なんでわかってくれないんですの?!」
そう叫ぶレギニータに、クリスティーナは冷たく言い放った。
「うるさいぞ、そのくらいのことで衛生科の科員がいちいちうろたえるな」
「なっ……」
絶句するレギニータの肩に、ぽんぽんと優しく肩を叩くのはルーシーだ。
「慌てたって仕方ないのにゃ。私たちはやるべきことをやる。それだけにゃよ?」
「それに、私達だけじゃない。この艦に乗艦している面々は、若いとはいっても訓練期間は長いし、実戦経験があるやつもいる。やつらにこの艦の障壁はぬけない」
クリスティーナは忌々しそうに断定するが、根拠のない自信にみえて、レギニータが更に声をあげようとしたその時である。不意に、ひざの力が抜けて、レギニータはストンと椅子に座りこんでしまう。
医務室の椅子ですら固定されているのに、絶妙な位置にレギニータを座らせたのはルーシーだ。レギニータはルーシーの指が、自分の肩からゆっくり離れるのをぼんやりとみていた。先ほどまでの恐怖や怒りといった感情すらなく、冷静でいられる自分の心を、レギニータは不思議に思う。
「全く、手間をかけさせるんじゃない。軍の船に乗るという事は、殺し殺されるということさ。その覚悟がなければ、最初から乗ろうなんて考えるな」
「全く、クリスにゃんは厳しいのにゃ。一般人にそんな覚悟は無理ですにゃよ。まして、一度あの海賊に襲われてトラウマになってるようにゃから」
自分より年下の子に、軍の船に乗る覚悟を諭され、さらに海賊に対する恐怖のトラウマすら見抜かれて、レギニータは呆然とするしかない。
「しかし、相変わらず見事なもんだな。人体操作と精神安定が得意とは言え、初見の人魚族相手に器用なものだ」
ちらりとレギニータとルーシーを見たクリスティーナは、再び情報パネルを見やる。接近してきた海賊船が、こちらの行く手をさえぎろうと進路を変えようとした途端、それは起こった。
「あっ、帆が……」
三人が見つめる情報パネルの中で、いきなり全ての帆が裂け、索具の太い綱に撃たれて海に落水したり、風圧のバランスが崩れて急旋回したヤードから落下する海賊が見えた。
「ちっ、さっさと燃やせばいいのに。艦長は甘ちゃんだからな」
「またぁ、クリスちゃんとビクトリアちゃんは、艦長に厳しすぎるにゃ」
レギニータには情報パネルに表示される状況が信じる事はできない。一瞬で無力化された海賊船だが、クリスティーナがパネルを操作すると、船上の海賊達が拡大される。
その中に頭と思われる男が映る。残酷そうな顔に、複数の銃と短剣を身に着けた男だ。
「ひぃ……」
思わずレギニータは、我知らず右手で自身の右太ももを押さえた。それは『Bloody killer whale』の頭、ラウル・アラスに乗船していた武装商船の甲板上を追い回され、銃で撃たれた場所であった。
海へ落ちる前の、海賊どもの下卑た笑い声は、時折レギニータの記憶によみがえり、うなされる事もある。レギニータを狩りの標的にしたのは、乗組員の中でも一番若かったからであろう。彼女をいたぶる事で、他の乗客や船員の脅しとしたのだ。
レギニータは撃たれた直後、痛みで海に落ち、流木に掴まって漂流後、運よく通りかかった他の商船に助けてもらったのだ。人魚族であった事と、回復魔法が使えたことが幸いしたのである。
「ふにゃん」
ルーシーの声が耳元で聞こえた途端、レギニータの意識が急速に失われていく。情報パネルには、紅蓮の炎に焼かれる『Bloody killer whale』の姿が映ったのを最後に、そのまぶたはゆっくりと閉じられた。
レギニータの心に最後に宿ったのは……
(この強大な力を持つ艦を味方にできれば……南洋から海賊を消し……去る事が、……できるかも……)
という事であった。
がっくりと力の抜けたレギニータの身体を、「よいしょっ」っとかわいい声をあげて抱え込んだルーシーは、そっとその体を備え付けのベッドへと寝かせる。
「にゃぁ、戦いではケガ人は出なかったけど、心の傷が血を流した子がでちゃったのにゃ」
「ふん、軟弱な……」
「そんな事いっても、本人にはどうしようもないにゃ。銃で船の上を追い回されたみたいにゃよ? これだけでも、連中は死ぬべきなのにゃ」
緑色の瞳に怒りを浮かべたルーシーの耳は、後ろ向きに立っており、尾の毛も逆立っている。
(あ~、これは本気で怒ってるな。まぁ、仕方ないか)
クリスティーナは肩をすくめるが、どうやらルーシーは満足していないらしい。
「クリスちゃん! 仲間がこんなになってるんだから、少しは協力するにゃ!!」
「待ってよ。そいつは仲間って訳じゃないだろう。それにルーがいるんだから、私がどうこうする必要はないだろ」
厄介事が飛んできそうな状況に、クリスティーナは顔をしかめる。
「ゲストといっても、この子は衛生科のメンバーにゃよ? 海賊を見るたびにこんな状態じゃ使いものにならないにゃ。クリスちゃんなら、どうにかできるにゃろ」
「くそっ、最初からその気だったろ。……仕方ない。確かにこの状態じゃ、足手まといになるしな」
そういうと、クリスティーナは立ち上がり、レギニータの傍らに立った。
「もう、後からルーとこいつには、埋め合わせしてもらうからね!!」
レギニータの身体の上に差し出した、クリスティーナの右人差し指を中心に魔法陣が浮かび上がる。
「彼の者を苦しめる悪夢を喰らう者よ、来りてその夢を喰らいつくせ。『召喚 悪夢喰い』」
詠唱と共に、魔法陣から現れたソレは、鼻はゾウ、目はサイ、尾はウシ、脚はトラといった姿に見える。それはレギニータの左胸と右太ももにそれぞれその鼻を当てると、淡い黒い霧状の様なものが、吸い込まれ消えていった。それが終わると一瞬の光を放ち、ナイトメア・イーターは魔法陣と共に消え失せる。
「にゃぁ~、相変わらずクリスのネイトメア・イーターは可愛いのにゃ」
「はぁ? 私には変な動物にしかみえないよ」
どうやら、ナイトメア・イーターは見る人によって異なった姿に見えるらしい。ちなみに、ルーシーには熊のような生物で、頭が小さく足が短い、白黒まだらの動物にみえるらしい。どうせなら、そっちに見えた方が良かったと思うクリスティーナである。
「これでレギちゃんも、もう悪夢に悩まされる事はないのにゃ」
「いや、ルーは何もしてないだろ」
薄い胸を張るルーシーにクリスティーナは言うが、ナイトメア・イーターを有効に使うためには、被験者のトラウマを表に出して特定する必要があり、更に精神が安定した状態でなければ難しい。
ルーシーが被験者の精神を読み解き安定させ、クリスティーナがナイトメア・イーターで露わになった枷を取り除く。クリスティーナとルーシーの組み合わせは、戦争や魔物・魔獣などの様々な原因が引き起こす、精神的障害を治療する最適なコンビであった。
こうして、しばらく後に目を覚ましたレギニータには、海賊『Bloody killer whale』に対するトラウマは一切消え、なぜか衛生班1組の二人にこき使われることになるのだった。
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