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3.帝政エリクシア偵察録
6.サナトリウムの惨状
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「あれ? 無い、僕の服が無~い!」
ゾムニの『ティティス』姉さんのお店での事です。女の子の1人旅を泊めるような宿は無いし、在ったとしても危険だという理由で、このお店に止まる事になりました。
夕飯をご馳走になり、夜も更ける前にお風呂に入りなさいと言われて、お風呂場をのぞくと湯船があるではないですか。アレキサンドリアでも湯船にお湯を張って浸かる習慣は一般的ではなく、上層街では鍛冶工房の廃熱を使った共同の浴場があるくらいで、あまり個人の家に湯船はありません。なので、ついつい嬉しくなって長湯をしてしまったのですが、お風呂から上がって脱衣所をのぞいたら、脱いだはずの服が、下着を含めて一切なくなっていたのです。
僕が騒いでいると、織り師見習いのニトラさんがやって来ました。手にはリネンの大判のバスタオルのようなものと、寝衣を持っています。
「わわっ、まだ着替え中ですよ。っていうかニトラさん、僕の服が無くなってて着替える事ができないんです。」
僕が我ながら情けない声で現状を報告すると、ニトラさんが手にしていたバスタオルと寝衣を手渡してくれました。どうやら2セット持ってきているようですね。
「今晩はそれを着てって、姉さま方は言ってたよ。クロエの服は今頃洗濯されているし。」
そういうと、おもむろに服を脱ぎだしますので、こっちが焦ります。慌てて反対を向いて、タオルで身体を拭くと、用意された寝衣に着替えます。薄手で真っ白な上等の寝衣は、妙に肌触りがよくて、かえって慣れませんね。背後で衣擦れの音が止むと、ニトラさんの呟きが聞こえます。
「服が返されるのは、多分明後日になるんじゃないかなぁ? 姉さま方も久しぶりの研究材料だって喜んでたし。異国の服の縫製やデザインは、勉強になるって言ってたよ。」
なにそれ、研究材料って。僕が改めて聞こうと振り返ると、湯殿に向うニトラさんの後姿が目に入ります。当然細い肩が露になっており、慌てて元の方向をむいた僕の背後で、扉が閉まります。ニトラさんの着ていた衣類はをキチンと畳まれて、服の上に十字印が置かれていますね。ニトラさんも敬虔なルキウス教徒なのでしょうか?
そういえば此処は女性ばかりでしたっけ。正直気が休まらないなぁ。湯殿から廊下にでると、賑やかな話し声が聞こえます。広間の様な部屋に入ると、売り子のお姉さん『リカ』さんが手招きしていますね。僕がリカさんに歩み寄ると、リカさんは周りのお姉さん方に紹介してくれました。
「こちらが家出娘、もとい旅の少女『クロエ』ちゃんだよ。我々に貴重な研究材料を提供してくれたんだから、みんな感謝しなよ。」
周りのお姉さん方は拍手をしています。リカさんは、さも当然の様に言いますが、僕は研究材料として服や下着を提供したつもりはありませんからね。それを伝えると、リカさんが僕を見て意地悪く笑います。
「じゃあ、明日の朝服を返してもいいけど、そうなると洗濯する前に服や下着を皆で研究する事になっちゃうなぁ。洗う前の下着をみんなに見られても構わないならそうするけど?」
ぐぅ、それはかなりきつい冗談ですよ? もちろん冗談ですよね? 思わずリカさんを睨んでしまいましたが、リカさんは僕の目に気付くと、ニッと笑って別なお姉さんに目配せします。お姉さんが立ち上がって、暫くして戻ってくると、みんなの前で僕のスパッツを広げました。うわあぁ~、何してくれるんですか。
「どうだい? 何か魔法がかかっているようだけど、それは別としてこんな立派な立体的な縫製はなかなかないだろう? これの下に更につけていた下着が見もの「わぁぁ、止めて下さい。返却は明後日でいいですから」…だよ。おや、そうかい? 研究に協力してくれて助かるよ。」
僕の悲鳴が無かったら、マジでショーツ公開する気でしたね? 女性ばかりとはいえ、恥ずかし過ぎますよ。他のお姉さん方もワイワイ話していますが、みんな胸に十字印をネックレスとしてぶら下げていますね。中央の石は皆白ですね。皆さんルキウス教徒ばかりなのでしょうか。僕は疑問に思いますが、宗教に関しては誰が何を信仰していようと、特に無頓着である日本人気質を発揮して、スルーします。
その後当然の様に、話題が僕の行き先や目的などになりました。この後西に向う事を知ると、みなさん笑みが消えてしまいます。リカさんが僕に言いました。
「クロエ、あんた異国人で、ルキウス教徒でもないだろ。そして、小さいのに武装も無しで1人で旅をしてるんだ。恐らく術師だろ? だったら余計西に行っちゃいけないよ。」
その後の皆さんは黙りこくってしまいましたが、湯殿から帰ってきたニトラさんに、リカさんが言いました。
「ニトラ、クロエにあんたの部屋で、サナトリウムの話をしてやりな。ここですると明日の仕事に障りがでるやつも居るからね。」
リカさんの言葉を聞いて、ニトラさんは僕の手を引いて歩き出します。ニトラさんの部屋といっても共同の部屋のようですが、幅の狭い寝台が二段になり並んでいるだけの、まさに寝るためだけの場所ですね。1人1人の空間はFC1と余り変わりません。
ニトラさんは、暗い表情でサナトリウムの話をしてくれました。サナトリウムというのは、隔離病棟ですね。と言っても、建物1つという小規模なものではなく、直径400m位の円状の隔壁に囲まれ、自給自足が可能となっている小さな村の様になっていることが多いそうです。外部との出入りは制限されていますが、宗教団体の支援なども行われていて、生活状態は酷いというほどでもなかったようです。
サナトリウムに隔離されていた方々は、レブラと呼ばれる感染病の患者さんが多かったようですね。話を聞くと、地球で言えばハンセン病のような皮膚病だったようです。レブラという病気はハンセン病と同じ様に、感染力は高くありませんが、皮膚病の一種なので見た目で差別される場合も多く、差別による投石などで怪我をすると、その血から感染したりということもあるので、隔離されていたようです。自由は制限されていましたが、様々な宗教の支援もあり、問題なく暮らすことが出来ていたとの事。2年前、ルキウス教の東方教会の司祭がやって来るまでは……
当初、ルキウス教の東方教会は、全ての人々に改宗を迫りましたが、この地ではエリクシアの影響はさほど強くなく、独自の宗教観を持つ獣人族やエルフ族などの冒険者さんもおり、誰も改宗を行わなかったそうです。
その後、平和裏に教義に従う信者の勧誘などを行っていましたが、この地の宗教関係者に呼びかけ、サナトリウムでの治療を呼びかけます。費用はルキウス教東方教会がだすとの、大盤振る舞いです。人々も、ルキウス教が他の宗教といっしょで、人への支援活動などから知名度アップと信者の獲得を行うものと思いました。冒険者ギルドにも東方教会から冒険者の個人名を指定した治療行為の補助の指名依頼が多数行われました。教会や国からの依頼は、その実力が認められたということであり、多数の冒険者も参加しました。
そしてその日、全てのサナトリウムが文字通り炎上したのです。サナトリウム周辺は燃える水がエリクシアの国軍によってまかれ、サナトリウム内にいた患者、宗教関係者、指名依頼を受けたルキウス教への改宗を拒否した冒険者と共に。
あるサナトリウムが炎上する様をみて、ルキウス教東方教会の司祭はこういったといわれています。
『彼らの神が存在しているのであれば、信心深い彼らを救うでしょう。しかし、彼らの神が紛い物であるのなら、ルキウス神による浄化の炎は彼らを焼き尽くす事でしょう』
と。そして、エリクシア国軍が火矢を次々とサナトリウム内に打ち込み、それと共に大きな火柱も伴って、サナトリウムは大炎上しました。その後、誰一人サナトリウムから生きて帰ってきた人は居なかったそうです。
そうして、ルキウス教東方教会の司教やエリクシア国軍兵士は、この話を街や町、全ての村にこの話が広めました。異教の神は、敬虔なる信者を救わなかった。彼らの神は紛い物であると……
当然冒険者ギルドは契約内容の詐称であるといい、ルキウス教東方教会に死亡した冒険者達の家族への謝罪や賠償を命じます。それに対して、彼らはこういったのです。『ルキウス教徒にとって、約束や誓約とはルキウス神を信じるものとの間にのみ存在する。異教のものなどと、約束などしていないし当然保障など論外である』と。
この一件で、人々は知りました。ルキウス教徒ではないというだけで、殺されても不思議ではないのだという事を。その後、この地に止まったほぼ全ての人々は、ルキウス教東方教会の洗礼を受け改宗を行い、白い石の十字印を胸につけるようになりました。
そして冒険者ギルドは、帝国の後押しを得たギルドマスターに取って代わられ、名前をハンターギルドと改名します。その後多くの異教の冒険者達は、エリクシア本国との境界付近での盗賊や魔物魔獣の討伐の指名依頼を受け帰ってくることは無く、優秀な冒険者は他に散り、いまではならず者とほぼ変わらない人間ばかりとの事です。
「それでもまだ、ゾムニは良いほうなんだけどね。」
ニトラさんの話では、今のゾムニの領主は元々ゾムニを治めていた領主様で、帝国の侵攻時も住人の被害を考慮して、無条件降伏したそうです。今回のルキウス東方教会の一件にしても、ゾムニ特産の最上級のリネンを教会に喜捨することで、この地の安全を図るだけでなく、私兵を使って領内の魔物・魔獣を掃討しているから今のゾムニの繁栄があるとの事です。問題は、その領主様も帝国がこの国を占領してから40年という月日が経っており、高齢であること。そしてその後継者である息子さんも、帝国へ遊学という名の虜囚として、この地を去ってから、ずっと帰国をしていない事だそうです。
はぁ、一見幸福に暮らしているように見えるゾムニの人達にも、大変な苦労があるのですね。その日、僕はニトラさんの部屋の空きベットで知りえた事を纏めているうちに、久しぶりの入浴での開放感なのか、疲労が出たのか、いつの間にか眠ってしまいました。
ゾムニの『ティティス』姉さんのお店での事です。女の子の1人旅を泊めるような宿は無いし、在ったとしても危険だという理由で、このお店に止まる事になりました。
夕飯をご馳走になり、夜も更ける前にお風呂に入りなさいと言われて、お風呂場をのぞくと湯船があるではないですか。アレキサンドリアでも湯船にお湯を張って浸かる習慣は一般的ではなく、上層街では鍛冶工房の廃熱を使った共同の浴場があるくらいで、あまり個人の家に湯船はありません。なので、ついつい嬉しくなって長湯をしてしまったのですが、お風呂から上がって脱衣所をのぞいたら、脱いだはずの服が、下着を含めて一切なくなっていたのです。
僕が騒いでいると、織り師見習いのニトラさんがやって来ました。手にはリネンの大判のバスタオルのようなものと、寝衣を持っています。
「わわっ、まだ着替え中ですよ。っていうかニトラさん、僕の服が無くなってて着替える事ができないんです。」
僕が我ながら情けない声で現状を報告すると、ニトラさんが手にしていたバスタオルと寝衣を手渡してくれました。どうやら2セット持ってきているようですね。
「今晩はそれを着てって、姉さま方は言ってたよ。クロエの服は今頃洗濯されているし。」
そういうと、おもむろに服を脱ぎだしますので、こっちが焦ります。慌てて反対を向いて、タオルで身体を拭くと、用意された寝衣に着替えます。薄手で真っ白な上等の寝衣は、妙に肌触りがよくて、かえって慣れませんね。背後で衣擦れの音が止むと、ニトラさんの呟きが聞こえます。
「服が返されるのは、多分明後日になるんじゃないかなぁ? 姉さま方も久しぶりの研究材料だって喜んでたし。異国の服の縫製やデザインは、勉強になるって言ってたよ。」
なにそれ、研究材料って。僕が改めて聞こうと振り返ると、湯殿に向うニトラさんの後姿が目に入ります。当然細い肩が露になっており、慌てて元の方向をむいた僕の背後で、扉が閉まります。ニトラさんの着ていた衣類はをキチンと畳まれて、服の上に十字印が置かれていますね。ニトラさんも敬虔なルキウス教徒なのでしょうか?
そういえば此処は女性ばかりでしたっけ。正直気が休まらないなぁ。湯殿から廊下にでると、賑やかな話し声が聞こえます。広間の様な部屋に入ると、売り子のお姉さん『リカ』さんが手招きしていますね。僕がリカさんに歩み寄ると、リカさんは周りのお姉さん方に紹介してくれました。
「こちらが家出娘、もとい旅の少女『クロエ』ちゃんだよ。我々に貴重な研究材料を提供してくれたんだから、みんな感謝しなよ。」
周りのお姉さん方は拍手をしています。リカさんは、さも当然の様に言いますが、僕は研究材料として服や下着を提供したつもりはありませんからね。それを伝えると、リカさんが僕を見て意地悪く笑います。
「じゃあ、明日の朝服を返してもいいけど、そうなると洗濯する前に服や下着を皆で研究する事になっちゃうなぁ。洗う前の下着をみんなに見られても構わないならそうするけど?」
ぐぅ、それはかなりきつい冗談ですよ? もちろん冗談ですよね? 思わずリカさんを睨んでしまいましたが、リカさんは僕の目に気付くと、ニッと笑って別なお姉さんに目配せします。お姉さんが立ち上がって、暫くして戻ってくると、みんなの前で僕のスパッツを広げました。うわあぁ~、何してくれるんですか。
「どうだい? 何か魔法がかかっているようだけど、それは別としてこんな立派な立体的な縫製はなかなかないだろう? これの下に更につけていた下着が見もの「わぁぁ、止めて下さい。返却は明後日でいいですから」…だよ。おや、そうかい? 研究に協力してくれて助かるよ。」
僕の悲鳴が無かったら、マジでショーツ公開する気でしたね? 女性ばかりとはいえ、恥ずかし過ぎますよ。他のお姉さん方もワイワイ話していますが、みんな胸に十字印をネックレスとしてぶら下げていますね。中央の石は皆白ですね。皆さんルキウス教徒ばかりなのでしょうか。僕は疑問に思いますが、宗教に関しては誰が何を信仰していようと、特に無頓着である日本人気質を発揮して、スルーします。
その後当然の様に、話題が僕の行き先や目的などになりました。この後西に向う事を知ると、みなさん笑みが消えてしまいます。リカさんが僕に言いました。
「クロエ、あんた異国人で、ルキウス教徒でもないだろ。そして、小さいのに武装も無しで1人で旅をしてるんだ。恐らく術師だろ? だったら余計西に行っちゃいけないよ。」
その後の皆さんは黙りこくってしまいましたが、湯殿から帰ってきたニトラさんに、リカさんが言いました。
「ニトラ、クロエにあんたの部屋で、サナトリウムの話をしてやりな。ここですると明日の仕事に障りがでるやつも居るからね。」
リカさんの言葉を聞いて、ニトラさんは僕の手を引いて歩き出します。ニトラさんの部屋といっても共同の部屋のようですが、幅の狭い寝台が二段になり並んでいるだけの、まさに寝るためだけの場所ですね。1人1人の空間はFC1と余り変わりません。
ニトラさんは、暗い表情でサナトリウムの話をしてくれました。サナトリウムというのは、隔離病棟ですね。と言っても、建物1つという小規模なものではなく、直径400m位の円状の隔壁に囲まれ、自給自足が可能となっている小さな村の様になっていることが多いそうです。外部との出入りは制限されていますが、宗教団体の支援なども行われていて、生活状態は酷いというほどでもなかったようです。
サナトリウムに隔離されていた方々は、レブラと呼ばれる感染病の患者さんが多かったようですね。話を聞くと、地球で言えばハンセン病のような皮膚病だったようです。レブラという病気はハンセン病と同じ様に、感染力は高くありませんが、皮膚病の一種なので見た目で差別される場合も多く、差別による投石などで怪我をすると、その血から感染したりということもあるので、隔離されていたようです。自由は制限されていましたが、様々な宗教の支援もあり、問題なく暮らすことが出来ていたとの事。2年前、ルキウス教の東方教会の司祭がやって来るまでは……
当初、ルキウス教の東方教会は、全ての人々に改宗を迫りましたが、この地ではエリクシアの影響はさほど強くなく、独自の宗教観を持つ獣人族やエルフ族などの冒険者さんもおり、誰も改宗を行わなかったそうです。
その後、平和裏に教義に従う信者の勧誘などを行っていましたが、この地の宗教関係者に呼びかけ、サナトリウムでの治療を呼びかけます。費用はルキウス教東方教会がだすとの、大盤振る舞いです。人々も、ルキウス教が他の宗教といっしょで、人への支援活動などから知名度アップと信者の獲得を行うものと思いました。冒険者ギルドにも東方教会から冒険者の個人名を指定した治療行為の補助の指名依頼が多数行われました。教会や国からの依頼は、その実力が認められたということであり、多数の冒険者も参加しました。
そしてその日、全てのサナトリウムが文字通り炎上したのです。サナトリウム周辺は燃える水がエリクシアの国軍によってまかれ、サナトリウム内にいた患者、宗教関係者、指名依頼を受けたルキウス教への改宗を拒否した冒険者と共に。
あるサナトリウムが炎上する様をみて、ルキウス教東方教会の司祭はこういったといわれています。
『彼らの神が存在しているのであれば、信心深い彼らを救うでしょう。しかし、彼らの神が紛い物であるのなら、ルキウス神による浄化の炎は彼らを焼き尽くす事でしょう』
と。そして、エリクシア国軍が火矢を次々とサナトリウム内に打ち込み、それと共に大きな火柱も伴って、サナトリウムは大炎上しました。その後、誰一人サナトリウムから生きて帰ってきた人は居なかったそうです。
そうして、ルキウス教東方教会の司教やエリクシア国軍兵士は、この話を街や町、全ての村にこの話が広めました。異教の神は、敬虔なる信者を救わなかった。彼らの神は紛い物であると……
当然冒険者ギルドは契約内容の詐称であるといい、ルキウス教東方教会に死亡した冒険者達の家族への謝罪や賠償を命じます。それに対して、彼らはこういったのです。『ルキウス教徒にとって、約束や誓約とはルキウス神を信じるものとの間にのみ存在する。異教のものなどと、約束などしていないし当然保障など論外である』と。
この一件で、人々は知りました。ルキウス教徒ではないというだけで、殺されても不思議ではないのだという事を。その後、この地に止まったほぼ全ての人々は、ルキウス教東方教会の洗礼を受け改宗を行い、白い石の十字印を胸につけるようになりました。
そして冒険者ギルドは、帝国の後押しを得たギルドマスターに取って代わられ、名前をハンターギルドと改名します。その後多くの異教の冒険者達は、エリクシア本国との境界付近での盗賊や魔物魔獣の討伐の指名依頼を受け帰ってくることは無く、優秀な冒険者は他に散り、いまではならず者とほぼ変わらない人間ばかりとの事です。
「それでもまだ、ゾムニは良いほうなんだけどね。」
ニトラさんの話では、今のゾムニの領主は元々ゾムニを治めていた領主様で、帝国の侵攻時も住人の被害を考慮して、無条件降伏したそうです。今回のルキウス東方教会の一件にしても、ゾムニ特産の最上級のリネンを教会に喜捨することで、この地の安全を図るだけでなく、私兵を使って領内の魔物・魔獣を掃討しているから今のゾムニの繁栄があるとの事です。問題は、その領主様も帝国がこの国を占領してから40年という月日が経っており、高齢であること。そしてその後継者である息子さんも、帝国へ遊学という名の虜囚として、この地を去ってから、ずっと帰国をしていない事だそうです。
はぁ、一見幸福に暮らしているように見えるゾムニの人達にも、大変な苦労があるのですね。その日、僕はニトラさんの部屋の空きベットで知りえた事を纏めているうちに、久しぶりの入浴での開放感なのか、疲労が出たのか、いつの間にか眠ってしまいました。
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