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第二章 少女失踪事件
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「それで、発明家がどうした」
高等部の屋上は、荒廃と呼ぶにふさわしい場所だった。野ざらしの地面は苔がわさわさと生えまくり、ぽつんとなぜか存在するプレハブの倉庫に、小さなベンチが備え付けてある。
プレハブ小屋の微々たる屋根の下に、押し込むように置かれたベンチに、防水性の敷物をしいて、座っている状態だ。
からっと晴れているので、見た目ほどじめじめした感じはしない。匂いも、青臭い緑の香りなら、左程匂うわけでもないし、問題はなかった。
それよりも。
姫島屋先生と、肩を並べてベンチに座っているこの状態のほうが、心臓に悪い。
乙女か、私は。
自分でつっこみながらも、だって初恋の人だからさ、と言い訳をする。
「あ、えっと。あれは、誤送信です」
「……そうか。なぞかけかと思った」
真剣な顔でそんなことを言う姫島屋先生に、思わず笑みがこぼれる。
真面目な人だなぁ、どこまでも。
「初メールです、って打ちたかったんですけど。てんぱっちゃって」
「ミスは誰にでもある。……早く食べてしまおう、時間もある」
私のお昼は、毎日手作り弁当だ。
といっても、そんな大層なものはない。卵焼きとか、焼いたハムとか、彩り重視のトマトとか。セオリーど真ん中の、お弁当になっている。
一方の姫島屋先生は、百円で数本入っているスティックパン。あと、自前だろう黒い水筒。
「それだけですか?」
「ああ」
「え、ええー。栄養面、大丈夫なんですか?」
「一応考えてはいるんだが、木金あたりは、どうも面倒でな。パンで済ますことにしているんだ」
「あ、わかります。週の後半って、支度が億劫ですよね」
お弁当もだけど、夕食もだ。
ここで、私が作ってきます! とでも言えたら女子力高いってなるんだろうけど、生憎私は料理が得意ではない。朝も苦手だし、到底人様のお弁当を作れるほどの余裕はなかった。
「私、屋上って初めて来ました。こんなふうになってるんですね」
「高等部側は立ち入り禁止だ」
「え、入っちゃってますけど」
「ああ」
ぱく、とパンにかじりつく姫島屋先生は、背後のプレハブを拳でコンコンと叩いた。
「ここに倉庫があるからな。生徒の立ち入りを禁止しているんだ。一応、貴重品がなくもない……大したものではないが」
「だから、ひと気がないんですね」
「中等部は立ち入り禁止ではないはずだぞ。屋上の柵も、中高一貫になる際に付け替えたしな」
え、と中等部の校舎を振り返る。
けれど、高等部より一階分低い中等部校舎は、ほとんど見えなかった。座っている位置から反対側にあるから、といえなくもないが、単純に建物の背が低めなのだ。
ここら一体でいうと、高等部の校舎がずば抜けて背が高い。
だから、高等部屋上にいれば、誰からも見下ろされることがないのだ。
私は、自作のお弁当をつつきながら、何か話題がないかと探した。何も話さなくても、姫島屋先生と一緒にいるだけで嬉しいんだけど。
せっかくだし、何か話したい。
高等部の屋上は、荒廃と呼ぶにふさわしい場所だった。野ざらしの地面は苔がわさわさと生えまくり、ぽつんとなぜか存在するプレハブの倉庫に、小さなベンチが備え付けてある。
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からっと晴れているので、見た目ほどじめじめした感じはしない。匂いも、青臭い緑の香りなら、左程匂うわけでもないし、問題はなかった。
それよりも。
姫島屋先生と、肩を並べてベンチに座っているこの状態のほうが、心臓に悪い。
乙女か、私は。
自分でつっこみながらも、だって初恋の人だからさ、と言い訳をする。
「あ、えっと。あれは、誤送信です」
「……そうか。なぞかけかと思った」
真剣な顔でそんなことを言う姫島屋先生に、思わず笑みがこぼれる。
真面目な人だなぁ、どこまでも。
「初メールです、って打ちたかったんですけど。てんぱっちゃって」
「ミスは誰にでもある。……早く食べてしまおう、時間もある」
私のお昼は、毎日手作り弁当だ。
といっても、そんな大層なものはない。卵焼きとか、焼いたハムとか、彩り重視のトマトとか。セオリーど真ん中の、お弁当になっている。
一方の姫島屋先生は、百円で数本入っているスティックパン。あと、自前だろう黒い水筒。
「それだけですか?」
「ああ」
「え、ええー。栄養面、大丈夫なんですか?」
「一応考えてはいるんだが、木金あたりは、どうも面倒でな。パンで済ますことにしているんだ」
「あ、わかります。週の後半って、支度が億劫ですよね」
お弁当もだけど、夕食もだ。
ここで、私が作ってきます! とでも言えたら女子力高いってなるんだろうけど、生憎私は料理が得意ではない。朝も苦手だし、到底人様のお弁当を作れるほどの余裕はなかった。
「私、屋上って初めて来ました。こんなふうになってるんですね」
「高等部側は立ち入り禁止だ」
「え、入っちゃってますけど」
「ああ」
ぱく、とパンにかじりつく姫島屋先生は、背後のプレハブを拳でコンコンと叩いた。
「ここに倉庫があるからな。生徒の立ち入りを禁止しているんだ。一応、貴重品がなくもない……大したものではないが」
「だから、ひと気がないんですね」
「中等部は立ち入り禁止ではないはずだぞ。屋上の柵も、中高一貫になる際に付け替えたしな」
え、と中等部の校舎を振り返る。
けれど、高等部より一階分低い中等部校舎は、ほとんど見えなかった。座っている位置から反対側にあるから、といえなくもないが、単純に建物の背が低めなのだ。
ここら一体でいうと、高等部の校舎がずば抜けて背が高い。
だから、高等部屋上にいれば、誰からも見下ろされることがないのだ。
私は、自作のお弁当をつつきながら、何か話題がないかと探した。何も話さなくても、姫島屋先生と一緒にいるだけで嬉しいんだけど。
せっかくだし、何か話したい。
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