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終章
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「このあと、遊びいかなーい?」
三学期が始まった。
今日は、三学期に向けての簡単なオリエンテーションだけだ。久しぶりの教室で、帰る準備をしていた私に、みこちゃんが声をかけてきた。にやにやしているみこちゃんは、私の返事を聞かずに身体を寄せてくると、額がくっつくくらい顔を寄せてきた。
「なーんて、今日もバイトでしょ?」
「まぁ、うん」
「あたしねぇ、見ちゃったー」
「見ちゃったって、なにを?」
「とげっちゃんが、石井先生と寄り添って歩くところ」
ひそめた声には、たっぷりとした好奇心が混ざっている。私は目を瞬いて、みこちゃんを見た。
「寄り添って?」
「うん」
「どこだろ。猿沢池? 大仏殿? あ、二月堂かな」
「……そんなに覚えがあるんだ」
「先生の気分次第だから」
「それって遊ばれてない? 大丈夫?」
「え? うん、大丈夫?」
「なんで疑問形なの! まぁ、でも、とげっちゃんが大丈夫なら、大丈夫なんだろうけど」
みこちゃんは、リュックを背負った私を見ると、促すように歩き出した。隣を一緒に歩き始める。今日は、ほかのお友達はいないのだろうか。
「あとで合流するの。現地集合ってやつ」
私の考えを読んだように、みこちゃんが言う。私は、ふぅんと返事をする。
「でも、まさか矢賀先生が急に退職するなんてねぇ。びっくらしたよね」
「そうだね」
「それも、一方的な辞職でしょ? 何かあったのかなぁ」
「矢賀先生にも、いろいろあるんじゃない?」
「だろうけどさー。結構お世話になったし」
みこちゃんは、唇を尖らせる。残念そうな表情に、罪悪感を覚えないわけではない。
今日、副担任から、矢賀先生が辞職されたと聞いた。手続きはすでに終えており、矢賀先生本人家族も海外へ引っ越したという。
三学期が始まった。
今日は、三学期に向けての簡単なオリエンテーションだけだ。久しぶりの教室で、帰る準備をしていた私に、みこちゃんが声をかけてきた。にやにやしているみこちゃんは、私の返事を聞かずに身体を寄せてくると、額がくっつくくらい顔を寄せてきた。
「なーんて、今日もバイトでしょ?」
「まぁ、うん」
「あたしねぇ、見ちゃったー」
「見ちゃったって、なにを?」
「とげっちゃんが、石井先生と寄り添って歩くところ」
ひそめた声には、たっぷりとした好奇心が混ざっている。私は目を瞬いて、みこちゃんを見た。
「寄り添って?」
「うん」
「どこだろ。猿沢池? 大仏殿? あ、二月堂かな」
「……そんなに覚えがあるんだ」
「先生の気分次第だから」
「それって遊ばれてない? 大丈夫?」
「え? うん、大丈夫?」
「なんで疑問形なの! まぁ、でも、とげっちゃんが大丈夫なら、大丈夫なんだろうけど」
みこちゃんは、リュックを背負った私を見ると、促すように歩き出した。隣を一緒に歩き始める。今日は、ほかのお友達はいないのだろうか。
「あとで合流するの。現地集合ってやつ」
私の考えを読んだように、みこちゃんが言う。私は、ふぅんと返事をする。
「でも、まさか矢賀先生が急に退職するなんてねぇ。びっくらしたよね」
「そうだね」
「それも、一方的な辞職でしょ? 何かあったのかなぁ」
「矢賀先生にも、いろいろあるんじゃない?」
「だろうけどさー。結構お世話になったし」
みこちゃんは、唇を尖らせる。残念そうな表情に、罪悪感を覚えないわけではない。
今日、副担任から、矢賀先生が辞職されたと聞いた。手続きはすでに終えており、矢賀先生本人家族も海外へ引っ越したという。
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