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第一章 5、須藤先生は、やっぱり少し、変わっている

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 目をぱちくりさせていると、いい加減に座れとベンチをぽんぽんされる。素直に座ったが、先生を凝視した。
 気まずそうに、先生は、視線を逸らす。
 ややそわそわした様子を見せつつも、ポケットに手を突っ込むと、アンティークゴールド色をしたチェーンを取り出した。
 それはネックレスだった。トップは、丸いレジンの球体をワイヤーアートで包んだものだ。羽のような形で球体を包み込むワイヤーと、その中心で守られた宝石のような球体の姿は芸術的で、レジンの透明な色合いにマッチしていた。
「ほら」
「え、見てもいいんですか」
「きみにやろう」
 さすがに貰うなんて、と思いながらも、近くで見たくて手を伸ばした。そっとワイヤーアートを包み込むように持ったとき、球体のいびつさに気づいた。
 これは、昨日私が研磨した球体だ形がいびつであると共に、なかなかうまくすべすべにならなかった失敗作。だが、こうして手の中にある球体は、いびつだし所々擦り傷のようなざらめがあるが、透明度はとても高かった。
「あのあと、透明度と出す液にくぐらせた。単体だと見目は微妙だろうから、アンティーグゴールドのワイヤーと合わせてみたんだ」
「すごく綺麗です。いびつだからこそ、ワイヤーに支えられる相乗効果が、特別感を醸してて。先生のセンス、すごいですね!」
「私はセンスの塊だ。……そんな当たり前なことはいい。それをきみにやる。昨日言っていたように、捨てるか?」
「いいえ、まさか。大切にします」
 そっと、チェーンをもって宙に掲げてみる。ゆらゆらと揺れるワイヤーアート。そのなかでころんと動く球体のレジン。昨日の時点では透明度も低くて見えなかったが、球体のなかは、海のような青い揺らめきが輝いていた。どこまでも深く、穏やかで、澄んだ、海の青が、手の中にある。
「私がいる」
 それは、小さな、やっと耳に届く声だった。先生を見ると、なぜか向こうのほうを見ており、夕陽で赤く染まりつつある耳しか見えない。
「きみは私に雇われている。きみに何かあれば、私が困るんだ」
「そうですね」
「悩みを話せとは言わないが、こうして、息抜きにも付き合え」
「はい」
「間違えても、一人突っ走った行動はするな」
「よくわかりませんが、わかりました」
「日本語になっていない」
 なんだか、心配されているようだ。
 もしかして、私が犯罪者視点でモノを見たり、犯罪行為を連想してしまうなどと言ったから、私が犯罪者予備軍だと思ったのだろうか。
 ふと、笑みがこぼれた。
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