上 下
99 / 109

第98話 魔導書2

しおりを挟む
既にやらかし気味ではあるのだが、平穏に生活する為にはこれ以上注目を集める訳には……。


「でもお兄ちゃん、強い魔法使って有名になればランクアップも出来て、お金も稼げるよ?」
「お金は程々稼げればいいんだ。それよりもお兄ちゃんはのんびり平穏に過ごしたいんだ。」
「そうなの?」
「そうそう。」
「じゃぁ、ソフィもそうするね!」
「え?ソフィちゃんは将来有望な魔法使マジックキャスターいなんだから、どんどん魔法を覚えた方がいいよ。魔法好きでしょ?」
「うん!好き!!」


俺はここで邪な事を思い出してしまう。
そう。
『ソフィちゃん魔法少女化計画』だ。
ソフィちゃんにコスプレ衣装を着せてツインテールに三日月のシンボルマークの杖を……ゲフンゴフン……。
何だろう……これ以上言ってはいけない気がする。
でも分かりますよね?なんちゃらに変わっておしおきされる奴。

…………
……………いや違う。
おしおきする方だった。
アイルにいつもおしおきされているから言葉選びを間違えてしまった。
兎も角、ソフィちゃんにコスプレさせるのだ!


「ソフィちゃん?聞きたい事があるんだけど、魔法使いって今着ている様なローブを着ないと駄目とか決まりがあるものなの?」
「これ?決まってる訳じゃないよぉ。でもこれが一番着やすいんだぁ。」


ソフィちゃんはローブの裾を持ち上げてヒラヒラさせる。
ふむ。なるほど。
服装を変えたからと言って魔力が少なくなったり、魔法が使えなくなるって事ではなさそうだな。
それに残念白銀級プラチナパーティ『太陽の風』の魔法使マジックキャスターいのエチルさんはミニスカートで動きやすい恰好してたし、杖さえ無ければ一見、魔法使マジックキャスターいには見えなかった。

そもそも、ソフィちゃんと出会ってからずっと同じ様なローブ姿なんだよな。
色違いで白とか黒はあるけど。
ちなみに今日は淡い緑色のローブを着ている。
よし!今度、こっそりサプライズプレゼントをしてみるか!
今は魔法のお勉強だ!

その日、俺はソフィちゃんと2人でお昼まで魔法の勉強をする。
勉強と言っても、第※※位階の魔法がどういった魔法効果なのかイメージを教えて貰っただけなんだがかなり有意義な時間だった。
しかし、この都市ギルド図書館の魔導書には殆どが第3位階までしか記載されていないのだ。
そもそも第4位階以上の魔法の使い手がほぼいないからと言う理由だからだとソフィちゃんに教えて貰う。
だがマニアックな本はあるもので、各属性毎に各位階だけで纏められている専門魔導書もあるらしい。


「ソフィちゃん。その魔導書はどこにあるの?ここにある?」
「各属性の第4位階までの魔導書はここにあるけど、それ以上は王都の王立図書館にあるってお父さんから聞いた事あるぅ。行きたいなぁ~。」


ソフィちゃんは椅子に座って足をブラブラさせながら頬をぷっくり膨らませて残念そうにそう呟く。


「じゃあ、今度、王都に行ってみようか?」
「え!?ホント!!」
「俺が向こう(王国)で鑑定された後の話になるけどね。」
「うん!!やったぁあ!!!……///」


ソフィちゃんは大声を上げて喜んだが、図書館の中だと直ぐに気づきエルフ特有の長い耳まで真っ赤にして恥ずかしそうに俯いてしまった。
フフ、カワイイ。


「ソフィちゃん。そろそろ昨日討伐したモンスターをギルドに売りに行こうか。その後、お昼ご飯を食べに行こう。」
「うん!分かったぁ!じゃぁ私、これ借りてくるね!」


ソフィちゃんはそう言うと、『水魔法属性大全』と言う分厚い魔法書を手にとり受付へと走って行った。
ソフィちゃんとマンツーマンで魔法の事を教えて貰い、お昼前に図書館を後にして、昨日討伐したモンスターを買い取って貰う為にソフィたんとお手々を繋いでギルドへと向かう。
これで第4位階までの魔法効果は大体理解出来たぞ!!
やらかす頻度は少なくなる筈だ!!
………きっと。多分。恐らく。


「あら、パンツさん。お久しぶりです。」
「ミリィさん。ご無沙汰してます。」


ギルドの受付へ向かうと、このギルドで最初にお世話になった受付嬢Aのミリィさんに話しかける。今日もお綺麗ですね。


「今日はどういったご用件ですか?ギルマス呼びましょうか?」
「いえいえ、ギルマスもお忙しいでしょうから……今日はモンスターの買い取りをお願いしようかと思いまして。」
「素材の買い取りですか?分かりました。では解体所にご案内しますので私について来て下さい。」


俺達はミリィさんに連れられてギルドの裏口から少し離れたた場所にある魔獣解体所へと移動する。


「ここにギルドの解体専門の職員がいますので、受付を済ませたら、これからは直接こちらに持ち込んで下さいね。」


ミリィさんに連れられ、ギルドの建物のすぐ裏手に移動すると、そこにはまるで航空機を整備する為の格納庫(ハンガー)の様な大きな倉庫だった。
ミリィさんに促されるまま倉庫の入り口の扉を開けると、受付の長机が一つ置かれており、本来そこに居るであろう受付担当者の姿は無かった。


「あの……ミリィさん?担当の方がいらっしゃらないみたいです。」
「恐らく、奥で解体作業をしているのでしょう。その机に置いてある魔石に魔力を流してみて下さい。」


ミリィさんが指さす先には、親指程の魔石が埋め込まれているラッパの置物が置いてある。
そこには『御用の方はこちらをお使い下さい。』とその置物の横に木彫りの案内板が記されていた。


「何ですか?これ?」
「それは魔導具(マジックアイテム)の一つです。その魔石には風魔法が付与されていて、魔力込めると、風が流れて音が鳴る様になっているんですよ。」


成る程。呼び鈴的なアイテムか。
俺はそのラッパの形をした置物に嵌めこまれているマジックアイテムの魔石に手を翳し魔力を流す。


「プォプォオオオオオォオオオオオオオォオオオオオオオ!!!!」
…………!!!!!!
「「「ウルサッ!!」」」


俺が魔力を込めると同時にそのラッパの置物からけたたましい音が鳴り響き俺達3人は一斉に耳を塞ぐ。
すると倉庫の奥から猛ダッシュでこちらに走って来る男が見えた。


「うッるせぇぇぇっぇえええええ!!!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

チートスキルで無自覚無双 ~ゴミスキルばかり入手したと思ってましたが実は最強でした~

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
北野悠人は世界に突如現れたスキルガチャを引いたが、外れスキルしか手に入らなかった……と思っていた。 が、実は彼が引いていたのは世界最強のスキルばかりだった。 災厄級魔物の討伐、その素材を用いてチートアイテムを作る錬金術、アイテムを更に規格外なものに昇華させる付与術。 何でも全て自分でできてしまう彼は、自分でも気づかないうちに圧倒的存在に成り上がってしまう。 ※小説家になろうでも連載してます(最高ジャンル別1位)

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八
ファンタジー
スキルが全ての世界で、主人公──レイは、スキルを持たない無能力者であった。 そのせいでレイは周りから蔑まされ、挙句の果てにはパーティーメンバーに見限られ、パーティーを追放させられる。 そんなレイの元にある依頼が届き、その依頼を達成するべくレイは世界に十本ある塔の一本である始まりの塔に挑む。 そこで待っていた魔物に危うく殺されかけるレイだが、なんとかその魔物の討伐に成功する。 そして、そこでレイの中に眠っていた《殺奪》という『スキルを持つ者を殺すとそのスキルを自分のものにできる』という最強のスキルが開花し、レイは始まりの塔で数多のスキルを手にしていく。 この物語は、そんな《殺奪》のスキルによって最強へと駆け上がるレイと、始まりの塔の最上階で出会った謎の堕天使の美少女が力を合わせて十本の塔を巡る冒険譚である。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

異世界でのんきに冒険始めました!

おむす微
ファンタジー
色々とこじらせた、平凡な三十路を過ぎたオッサンの主人公が(専門知識とか無いです)異世界のお転婆?女神様に拉致されてしまい……勘違いしたあげく何とか頼み込んで異世界に…?。  基本お気楽で、欲望全快?でお届けする。異世界でお気楽ライフ始めるコメディー風のお話しを書いてみます(あくまで、"風"なので期待しないで気軽に読んでネ!)一応15R にしときます。誤字多々ありますが初めてで、学も無いためご勘弁下さい。  ただその場の勢いで妄想を書き込めるだけ詰め込みますので完全にご都合主義でつじつまがとか気にしたら敗けです。チートはあるけど、主人公は一般人になりすましている(つもり)なので、人前で殆んど無双とかしません!思慮が足りないと言うか色々と垂れ流して、バレバレですが気にしません。徐々にハーレムを増やしつつお気楽な冒険を楽しんで行くゆる~い話です。それでも宜しければ暇潰しにどうぞ。

【2章開始!】元最強執事の迷宮攻略記〈ダンジョン・ノート〉〜転職したら悠々自適な冒険者ライフを……送れなかった!?〜

美原風香
ファンタジー
「フェール、そなたに国境守備隊への異動を命じる!」  執事として王女に仕えてきたフェールは、国王から理不尽な理由で国境守備隊に異動させられそうになる。 「王女の頼みを聞けない」 「王女に冷たい」  成人した王女の「一緒に寝て?」なんて頼み聞けるわけないし迅速に仕事をこなしているだけなのに。  国境守備隊は過酷な任務として有名で、しかも国王はフェールを飼い殺しにしようとしていた。  もう我慢できない! 「今を持って辞職させていただきます」  辞表を叩きつけて王宮を飛び出したフェールは憧れだった冒険者になる。 「迷宮攻略、楽しみだな」  これは理不尽な扱いを受けた執事がブラックな王宮を飛び出し、ホワイトな冒険者生活を満喫する......はずが何故か様々な事件に巻き込まれ無自覚に人助けをする、そんなお話。 *カクヨム、小説家になろうでも連載中です。 1月29日HOTランキング6位! ありがとうございます!

処理中です...