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第69話 到着1

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ブラッドボアのBBQで腹を満たした俺たちは後片付けをして出発の準備をする。


「ではパンツ殿。そろそろ出発しようか。」
「ファムさん、その前にちょっといいですか?」
「ん?何だ?」


既に俺が冥魔法を使える事は知られてしまっているので回収した馬車を収納魔法ストレージマジックから取り出す。


「これも一応回収してきたんですが……どうします?」
「こ、これは……野盗に襲われた際に、途中で逸れてしまった2両目の馬車ではないですか!どこでこれを!?」
「さっき食料調達の為に倒したブラッドボアの辺りに横倒しになってましたよ。」


食料調達したブラッドボアは、俺が真っ二つにしたブラッドボアだとは言っていない。
言えば俺が空間移動ワープまで使える事がばれてしまうからだ。
流石に第5位階魔法の空間移動ワープまで使える事は黙っていた方がいいだろう。
相手は王室関係者だしきっと面倒な事に巻き込まれかねない。
するとファムさんは馬車の中を検め始めた。


「馬車に積んでいた収納袋ストレージバッグは全て残されています。パンツ殿……。感謝致します。」


ファムさんは膝をついて仰仰しく俺に礼の言葉を口にする。


「パンツ殿、誠に申し訳ないのだが、ルク・スエルまでお主の収納魔法ストレージマジックで運んでくれないだろうか?」
「ええ。勿論いいですよ。」


当然、俺もそうするつもりだったし。
そして軽い休憩を終えた俺達は、ルク・スエルへ向けて馬車を走らせる。
道中、野盗やモンスターに襲われる事もなく明け方、ルク・スエルに無事に到着する事が出来た。
まだ街の門は開いていなかったので、俺達は門の前で適当に時間を潰していると、徐々に街の中から衛兵達が出て来て開門の準備をし始める。
すると一人の若い20歳前後だと思われる衛兵が俺に近付き話しかけてきた。


「おまえ、もしかして噂のグネグネか?」
「……?グネグネ化?何ですかグネグネ化って。」


誰?いきなり?俺に衛兵の知り合いはいないぞ?しかも何だ突然。
グネグネ化て。


「あれ?違ったか?グネグネル・パンツって黒髪の奴だって聞いてたんだが。」


何だその足首を捻りそうな名前は。
グネグネグネール・パンツな。
自分で訂正するのも恥ずかしい。と言うか苗字?のグネグネの方で呼ばれたのは初めてだから気づかなかったわ。
と言うか、普通にこの名前を受け入れている自分が悲しい……。


「あ、多分俺の事だと思います。」
「え?やっぱりそうか!ほぉ~、君が1週間足らずで金級ゴールドに昇格したって言う冒険者か!」
「何で俺の事を知ってる……と言うか分かったんですか?」
「そりゃおまえさんが黒髪だったからな!この辺りじゃ見ないから直ぐにおまえさんだと察しが付いた訳さ。それ本物か?」
「いてて!引っ張らないで下さいよ!」
「あ、すまんすまん。本物なんだな……。」


いきなり髪を引っ張るなよ……。おっさんになると抜け毛に気を遣うんだぞ?
今はピチピチの17歳☆キャピッ だからフサフサだけどさ……。
確かアイルも出会った時に言っていたな。
この辺りに黒髪は見た事ないと。

外見だけでも有名になってしまっているな。
髪も隠した方がいいか?フード被るとかいっその事、赤い彗○さんみたいに仮面でも被るか?
あ、でもあれは顔だけしか隠してないから意味ないか。
そんな事を思案していると、衛兵が続けて話しかけてくる。


「それにギルド冒険者や衛兵達の間でもおまえの噂で持ちきりだよ。」
「ええ!何故!?」
「そりゃこんな短期間に金級ゴールドに昇格すれば嫌でも目に付くって。期待の新人冒険者ってギルマスも嬉しそうに言いふらしてたしな。ギルドの広報誌にも載せてやるんだぁー!って嬉しそうに話してたぞ?」


『人の口に戸は立てられぬ』とは良く言ったもんだ。
と言うか、ギルマスめ……個人情報を言いふらさないで欲しい。
クソッ。本人は控えめにしていても周りから情報が駄々漏れて行くパターン……。
ギルマスに俺の事を余り広めない様、釘を刺しておく必要があるな。ったく。
…………。
…………………ん?


「……って、え!?ギルドの広報誌?何ですか?それ?」
「ギルドに所属してるのに知らないのか?ギルドが毎月1回発行してる広報誌の事だよ。」


ええ。知りませんよ。
だって俺、まだギルドに登録して1ヶ月経ってないし。


「その広報誌ってどんな内容の事が掲載されてるんですか!?」
「各地で起きた事件・事故とか、どこどこでどんなモンスターが出たとか、モンスターの討伐方法とか、薬草の採取場所とか載ってるな。最近は各地のギルマス達のコラムとか人気だぞ。俺も毎月楽しみにしてんだぁ!」


その衛兵はその広報誌が楽しみなのか、本当ににこやかに話している。
そんな物があったのか。
各地ギルドの出来事や情報が掲載されているフリーペーパーみたいなもんか。
しかしその広報誌はフリー(ただ)ではないらしい。
銅貨5枚(¥5,000)との事。
ギルドの有用な情報を売る訳だから流石にただとはいかないか。

しかし、その広報誌に俺の事を……載せる……だと!?
イヤイヤイヤ……本人が知らぬ間にギルド界隈だけじゃなくて、各国の兵士達にまで情報が共有(漏れる)されるって事じゃないか!!それはマズい!!
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