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第53話 メリッサ村2

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メリッサ村に到着して、護衛をして貰った『太陽の風』のメンバーと別れた俺たちは、アイル達の実家へ向けて歩き始めるとすぐに声が掛かる。


「お~!アイルじゃないか!無事に帰って来たか!良かった!!」


声をかけて来たのはこの村でアイルとパーティを組んでいた『ゲイブル』さんだ。


「うん!ただいま!当然、無事に帰ってきましたよ!!フッフッフ……。」


アイルは不敵に笑みを浮かべ大きな胸を突出し右手首の金色のプレートをこれでもかと言う程見せびらかしている。


「……?お?それ、まさか……」
「フッフッフ……そう。そうよ!!」
「……おまえ、またおっぱいデカくなったんじゃねぇか!?食い過ぎだろ!!」
「ちっがーーーーう!!見るとこ違うでしょ!こっち!!」
「痛い、痛い!アイル痛いって!目が!メガァァァァ!!!」


アイルはぷんすかしながら手首のギルドプレートをゲイブルの目に擦り付けている。
それじゃ逆に見えないだろ……。


「わーてっるよ!遂に金級ゴールドに昇格したのか。ソフィもか?」
「そうだよぉ~!へへへ~。ほらほら~。」


ソフィちゃんも首に下げている金色のプレートをヒラヒラさせている。


「そうか。これでおまえ達も一人前の冒険者だな。俺達がいないと森で迷っていたアイル達が金級ゴールドかぁ。」
「む……ま、まぁ確かに今回はパンツのお蔭だったのは認めるけどさ……。」
「パンツ、良くアイル達を守ってくれたな。同じ村民として礼を言う。
やはり君を一緒にいかせて良かったよ。」
「いえ、俺も色んな経験させて頂いたので良い旅でした。こちらこそ有難う御座いました。」
「ほんと、今までの旅と違って内容の濃い旅だったわね。ソフィ?」
「うん!お姉ちゃん!ソフィも楽しかったぁ!また行こうね!お姉ちゃん!お兄ちゃん!」


アイルは少しお疲れ気味だがソフィちゃんは元気一杯。
ホント、子供は元気だなぁ。
しかしアイルが言う様に、今回の旅の目的はウェアウルフの換金だけで終わる筈が俺のギルド登録から初依頼。そこから唐突なキラーアント討伐、太陽の風の救出劇にステフおっさんやギルマス、騎士団との出会いもあったり、初めて魔法を使える様になったりギガパイさん討伐したり、グリフォン便見に行ったり中々の面白い旅だった。
ゲイブルと別れた俺達はアイルとソフィちゃんの実家へ帰り付く。


「「たっだいまぁ!!」」
「アイル!ソフィ!おかえり!!無事で良かったよぉ!!」


玄関を開け家の中に入ると、そこにはアイル達の育ての母親の『コフィ』さんが出迎るやいなや、涙を流しながらアイルとソフィちゃんを強く抱きしめた。


「良かった。ホント良かった。無事だったんだねぇ……。」
「むぐぐ……おかぁさーん、いたぁーい。」
「え?ど、どうしたの?お母さん。」
「だって昨日来た商人連中が『ギガント・パイソンとドラゴンの戦いがあって、
ルク・スエルの街半分が吹き飛んだ!』とか言ってたからさぁ……。
心配だったんだよぉ。」
「「「えぇぇぇぇえ!?」」」


俺たち3人は同時に素頓狂な声を上げる。
コフィさんの安堵の仕方が尋常じゃない事を怪訝に思ったアイルが尋ねると、
俺達が向かった先の街、ルク・スエルの半分が無くなったと言う噂がこの村に出回っているらしい。

とんでもないデマだな。
アイルがその情報は間違いである事を説明するとコフィさんも胸を撫で下ろして安心していた。


「ルク・スエルにはステフ達もいるだろ?心配だったんだよ。全く、また商人どもがまた話を盛ってたのかい……。しょうがない連中だよ。」


商人連中は世界を巡っている為、商品を見て貰う掴みの話のネタとして各地で起きた事件、事故、ロマンスの類の話で人々を惹きつける術を持っているらしく、今回の騒動もかなり話を盛られて広められた様だ。
本当の所、ギガパイさんが街の周辺をうろちょろお散歩していたら俺が適当に放った魔法が不幸?にも偶然当った事で亡くなってしまい、ルク・スエルの外壁も壊してしまったのだが……。
それにあのギガパイさん……つがいだと言ってたからもしかしたら新婚さんだったかもしれない……。ギガパイパイさん……ごめんなさい……。


バタン!!
けたたましい音を立てて玄関の扉が開くと、そこにはアイル達の育てのもう一人の親、ガガン村長が立っていた。


「アイル!ソフィ!無事だったか!!」
「「お父さん!!」」


ガガン村長もコフィさんと同様に2人を強く抱擁してお互いの無事を確認しあっている。
家族っていいね。
俺の記憶の世界で、俺はこれ程心配された事があっただろうか……。
両親が他界した後、兄妹もいない俺は親戚とも親交が無くなり殆ど1人で生活し、それが普通の生活だったし何とも思っていなかったが……、こうやって目の前で見せつけられると家族がいる事が少し羨ましいな。
俺がそう1人で佇んでいると、ガガン村長がこちらにやって来る。


「パンツ君。娘たちをよく守ってくれたね。本当に有難う!」


ガバッ!

「ヒッ!」


ガガン村長はそういうや俺にまで抱擁して来た。
まさか抱き着かれるなんて想定していなっかったので変な声だしちまった……。
………。
……………。
……………………。
そろそろ離してほしい。
長くない?


「あの……ガガンさん?そろそろ……。」
「ん?あぁあ!すまんすまん!パンツ君、結構イイ身体してるな!!」


え!?
こっちの世界はそっちも有りなのか!?
二刀流が当然の世界なのか!?やだぁ!!
俺は咄嗟にガガンさんから離れて腕を交差させて身体を守る。


「お父さん!多分パンツが勘違いしてるよ……。」
「ん?あぁ!そう言う意味じゃないぞ!!見た目と違って意外と鍛えられとるなって事だぞ!ワシもそっちの気はないわい!!」


顔を赤くしてツッコミいれてるアイルもカワイイね!
ガガン村長が少し恥じらってるのが気になるけど……。
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