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第16話 森の中

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俺たちは今、ギルドへからの依頼を受けて、ポーションの葉っぱ採取の為に徒歩でルク・スエル郊外の森へ移動している。

街から出る際に、ギルドカードと依頼証明書を出すと入門パスを一時預かりで保管してくれた。



「このポーションの薬草って、どんな形をしてるんだ?」

「葉っぱがギザギザしてるから直ぐにわかるわよ。」

「葉っぱがギザギザって…。特徴それだけ?」



アイルがポーションの葉の説明をしてくれたが大ざっぱすぎて困惑しているとソフィが追加情報を教えてくれる。



「ギザギザも特徴だけど、葉っぱの表面に水玉模様があるんだよ~。」

「水玉!?むしろそっちの方が特徴的じゃないか!!」



そんな抗議の声を俺が上げると、「あ~そんなのもあったっけ?」何てアイルが恍けて頭をポリポリ掻いている。



「あ、あたしは銀級冒険者なの!シェル級の依頼なんて受けないから分からないの!」



「お姉ちゃん、探索系の依頼は苦手だから避けてるんだよ…。」

「よくそんな事でランクアップ出来たなぁ‥。」

「あ、あたし達はどちらかと言うと護衛とか討伐依頼の方が得意だから!!」



アイルがおどおどしながらそんな事を言うとそこへソフィの細やかな抗議の声が聞こえてくる。



「わたしは探索系の方が好きなんだけどな…。そこまで危なくないし…。」

「……」

「……」

「…アイルさん?」

「…はい。」

「…余りソフィちゃんを危ない所に連れて行くなよ?」

「…今後……配慮するわ!」



そう言うとぷいと顔を背ける。



「しかし葉っぱの採取依頼なのにギルドにわざわざ依頼するなんて物臭な依頼者だなぁ。」

「ポーションの原材料になっている『復癒草』は、モンスターが発生しやすい場所に群生しやすいから普通の一般人じゃ採取が難しいんだよ。」

「なるほど、それで依頼がある訳ね‥。」



…え?と言う事は必然的にモンスターと遭遇する事も高いって事?

そう思い身震いしているとソフィちゃんが続けて襲えてくれる。



「モンスターと言ってもE~Fランク程度なのでそこまで難しい相手じゃないよ。それにモンスターと遭遇する確率もそこまで高くないし。」



「ほんと?それ本当?またいつぞやみたいにウエアウルフが襲って来るって事はないよね?」



「そんな事わからないでしょ!何をびくびくしてるのパンツ。それにウェアウルフぐらいならパンツが又ぶっとばしちゃえばいいじゃない!!討伐報酬ももらえるし一石二鳥よ!!ムフフ」



そんな商魂?逞しい事を言っちゃうアイル団長である。



「そう言えばこの間のウェアウルフの報酬は貰ったのか?」

「当然!!これで村に帰ってパーティ出来る!!うっふふふふ」

「ちなみにお幾ら万円の報酬になったんだ?」

「おいくらまんえんて、パンツはお金の事を聞いてるのよね?

フフ…聞いて驚くよぉ?何と!!王国金貨32枚よ!!」



「……え?王国金貨32枚?金貨…確か俺の知ってる通貨換算なら…320まんえん!?」

「んふふふ…すごいでしょ…。私も驚いたけどね…。私がギルドに登録してから最高額だったわ!」



アイルは胸を張って鼻高々で腕組みをして満足そうな表情だ。

あいつを討伐するだけでそんなに稼げるのか…。



「…でもよかったわ。これで先日亡くなった仲間の家族達に少しでも生活の足しにしてあげられるから。」



そっか…。先日のウェアウルフ襲撃で亡くなった仲間の遺族に報酬を渡す為にいそいそとアイル達だけで討伐報酬を受け取りに来たのか…。



「でも、パンツ一人で討伐した様な物だし…。」

「いや、別にかまわないよ。俺こそ逆に助けてもらった様なもんだし…。全部貰ってくれていいよ。」

「流石に全部はダメでしょ!!」

「…じゃあ俺のギルド登録料と魔法属性審査料もそこから引いておいて。それに宿代とか食費も俺の分で余計に必要だと思うから金庫番はアイルが管理しておいて。」

「う、うん。分かった。けど、村に帰ってからちゃんと取り分は受け取ってよね?全部貰うなんて烏滸おこがましいし…。」



俺は構わないんだけどなぁ…。

魔物草原でアイル達に出会えた事はもの凄い幸運だと言わざる得ない。

もし出会う事がなければ今頃まだあの草原をウロウロしていたかもしれない‥と言うか飢え死にしていたかも…。

出会って早々にボコボコにされたのは良い?思い出(ご褒美)だ‥。」



しかしウェアウルフをを討伐するだけでこれだけ稼げるなら冒険者も悪くないなぁ…。



「アイル、今、何の目標もなく森の中に入って行ってるけど、街には帰れるんだよね?」



今はアイルを先頭にしてソフィちゃんを挟み俺が殿を務めている。



「当たり前じゃない!!あたしを誰だと思ってるの!?森で迷う冒険者なんている訳ないじゃない!!」



…何か物凄く嫌なフラグをこの団長殿は立てた気がするが今はその言葉を信じておこう…。



そんな事を思っているとソフィちゃんが「お姉ちゃん、方向音痴なんだよねぇ…。」何て呟いてるではないか。既に街は見えない…。

…ヤバい。
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