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第3章

第二皇国再建部

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雑誌部の処罰からの次の日
晴人は放課後に各部の部長と生徒会役員を生徒会堂に集めていた。
「皆さん、今日は集まって頂いて有難うございます。今日は、昨日決まった雑誌部の処分と僕が掲げる新部構想についてです」
と言っても、役員はともかく、各部の部長はいい顔をしない。それもそうだ。このままいけば、第二皇国再建部は凄まじい人気を誇ることになる。そんなことになれば、部員の確保と部費の確保が心配なのだ。この学校は、生徒の半分以上が部活に入っていて、文化部と運動部合わせると部の数は休眠の部も合わせて50以上になる。
「まず、雑誌部の処分についてですが、昨日付けで雑誌部部長大村与平を解任し、新聞部と統合し情報発信部を再興することになりました。また、生徒会幹部は新聞部部長渡部楓を、情報発信部の部長に推薦し、今日付け新聞部と雑誌部を統合し、渡部楓が新聞課、雑誌課を束ねる情報発信部の部長に就任しました」
後方の扉側の部長席で手が挙がる。それを吉彦が指名した。
「アーチェリー部部長の田上です。旧雑誌部、現情報発信部雑誌課の予算は8割減になると聞いたんですけど、その減った8割はどう使用されるんですか?」
晴人が答える。
「全部活に割り当てを見て割り当てます」
「その全部活には生徒会長の考える新部も含まれているのですか?」
思わず薄く笑ってしまった。良い流れが来た。
「では、それにも関連するので、僕の新部構想についても聞いてください。新部は、周知の通り第二皇国再建部であります。これは言わば一種の政治活動です。また日本の良くする、政治的にも環境的にも文化的にも。そして皇国。つまり、畏れ多くも天皇陛下を戴いて政治を行いたいという志士の集まりになります」
何人もが真剣に頷いている。行ける。
「なので、この部は兼部可能で、部費は一切学校に要求しません。では、どのようにして部を運営していくかと言うと、皇国再建部の方には何十年にも渡るそれ相応の蓄えがあるのでそれを活用します。何か質問はありますか?」
特に挙手は無かった。吉彦が続ける。
「では、新部構想について投票に移ります。役員は手元のボタンを押してください」
3分後、結果が出た。
「賛成71、反対9、棄権0で本案は賛成多数で成立しました」
まるで首相のように立ち、一礼する。清々しい気持ちだ。それが終わると今日の会議は終わって、会議は舞台の裏の生徒会幹部室に他の皇国再建部員達と入った。そこには既に高等部3年(6年)の楠村大佐と相沢大佐が待っていた。
「どうだった。結果は?」
そう楠村大佐が聞いてくる。
「可決されました」
「そうか、可決されたかっ」
2人は手を取って喜び合っている。本来で有れば派閥を作ってからのはずであったのにそれを無しでも可決されたのだ。支持されたのだから嬉しいに決まっている。
「早速ですが、僕等の部室を見に行ってみますか?文化部部室棟、一階の校舎側ですよ」
「言ってみるか」
と、言いながら楠村大佐と相沢大佐がが腰を浮かす。
「安藤と安倍は行かないのか?」
「え、ええ。この後まず大道寺元帥に報告に行ってきます。」
そう言うと晴人と吉彦を残して他の部員は出て行った。吉彦が来客用のソファに腰掛け、晴人も奥に卓とともにある生徒会長の椅子に座る。
「少し疲れたなぁ」
「ああ、流石になあ、」
コンコン。突然ノックされた。
「どうぞ」
「失礼します」
すると、いきなり8、9人の生徒が入って来た。学年は見た感じバラバラだ。
「何か用ですか?」
その内の一番年長の晴人の学年で見たことがある男が言う。
「僕らは、新部構想や、雑誌部処分の議決について不服があって来ました」
ああ、そう言えば生徒会役員の中に居たような気もする。
「聞きましょう」
「ではまず、雑誌部処分についてです。正直、新聞部と貴方は今回の選挙でかなりの協力関係がありました。今回の案は新聞部への恩返しのようにも見えます」
うーん、馬鹿では無いようだ。
「しかし、言わばお荷物の雑誌部を抱えて新聞部に何らかの得がありましょうか?」
「たしかに得はありませんりしかし、渡部楓が雑誌部を恨んでいたとすれば、そして貴方と協力関係にあったら」
と言って、その男は目を細めた。
「ふー、聞くにはまあ面白い推論でした。」
「では次、新部構想について。今日、生徒会で可決されましたが、このままではこの生徒会は貴方の独裁になってしまう。なんせ貴方は学校一の人数を誇る部活の長になる可能性があるんですから」
それに対しては吉彦が返す。
「その心配は無用です。会長は第二皇国再建部の部長にはなりません。部長は6年の楠村た……先輩が務めます。」
そう言うと相手はバツの悪そうな顔をした。そしてそれに追撃を与えるように晴人が言う。
「それに、第二皇国再建部は生徒会から部費を受け取りません。よって生徒会の介入は認められません。これは、会長命令です」
と言うと、その8.9人は1人ずつ諦めたように部屋を後にした。最後にリーダーらしき先程の男も出て行った。

「吉彦、どうやら俺等はまだまだ働かないかんらしいな」
「ふっ、まだ17だぞ」
そう言うと2人で色々とこれからのことを喋りながら裏山の小屋に向かった。

「失礼します………」
と、一連の挨拶をして中に入った。中には松岡大将と小松原中将と大道寺元帥しかいなかった。当然だ。今日は会議の日じゃ無い。大道寺元帥の前に立ち敬礼する。
「安藤君、生徒会長就任おめでとう。情報発信部については聞いた。第二皇国再建部の方はどうなった?」
と、入るなり大道寺元帥が聞いて来た。
「はい、今日可決されました。部室も獲得しました」
「これは僕からの細やかなお祝いだ」
そう言って、新品の日章旗と旭日旗、そして第二皇国再建部と書いた木の看板を渡してくれた。
「ありがとうございます。」
「それから、これが当面の第二皇国再建部の部費でだ」
そう言って小松原中将が茶封筒を渡してくれた。分厚さからして100万だろうか。少し驚いてしまった。
「小松原中将、こんなに……」
「うちの部活には安井会長からの寄付で数億単位の予算があるりその一部だ。」
「遠慮せず受け取ればいいさ。さて。我々は帰るか」
そう大道寺元帥が言うと他の2人も去り、晴人と吉彦も先程のお祝いを持って小屋を出た。

次の日の放課後
晴人と吉彦は早々に部室に向かい、扉の横に看板を掛けた。吉彦が鍵を開けて入る。教室1つよりもう少し大きいぐらいの部屋で、入るとすぐに他の部員も走ってやって来た。そして、今日から押し寄せるであろう入部希望者のためにパイプ机と椅子を出し、後ろにお祝いで貰った日章旗と旭日旗を掲げた。
「おお、やってるねぇ」
そう言いながら楠村大佐と相沢大佐も入ってきた。楠村大佐は今日から一応、第二皇国再建部の部長になる。それを向こうで相沢大佐が茶化している。それから2分もせずに準備が整い、扉を開けた。すると、既に廊下には入部願を持った生徒の長蛇の列が出来ていた。先頭は背の高い男子生徒だった。入部願は、学年とクラス別に分けて後日、こちらで判を押して返し、それを教師に提出することになっている。
「ゆっくり進んでください。ゆっくり」
「凄いぞ、校舎の奥の方まで続いていやが
る」
と、はあはあ言いながら列の後方を見に行っていた吉彦が報告する。その日は結局、下校時間になっても列が続いていたのでとりあえず途中で打ち切り、明日は土曜で午前授業なので、午後から受け付けることになった。 「凄いぞ、今日だけで入部願が1000を超えているぞ」
そう、相沢大佐が興奮気味に言った。

次の日、本当であれば今日も第二皇国再建部の方を手伝う予定であったが、授業後、急に大道寺元帥に呼び出されて小屋に向かった。
「失礼します……」
「おお、安藤君来たか」
今日は松岡大将と大道寺元帥しかいなかった。
「とうとう、安井会長に食糧や物を寄贈頂ける日が決まった。7月16日だ」
「随分急な話ですね」
「ああ、安井会長が大分急いでくれたようだ。明日にでも安藤君は教師に言われるだろうから」
そう言って大道寺元帥は愉快そうに笑った。計画が何もかもうまくいくのがこれ以上無く嬉しいのだ。これだけを見ればまるで凡庸に思われるが、間違い無くこの人物は大物で天才だ。人を惹きつける徳があり、計画を進める決断力、行動力がある。そして、頭脳明晰。何一つ落とすべき所が無い。
「安藤君、決めた。決起は…決起は8月3日」
「8月……3日……」
思わず繰り返す。何か分からない熱が体から出て熱くなった気がした。
「……夏期講座の最終日ですね」
「ああ。だが、まだ誰にも言うな。いずれ時期が来れば発表する」
「はいっ…分かりました」
結局、一週間で入部希望者は2723人に上り、この数は中等部高等部の5割を超え、その中には色々な部の部長まで混ざっていた。

7月16日土曜日 午前11時30分過ぎ
中等部、高等部の校舎につながる真正面の道を通って二台の黒塗りのセンチュリーが何十台かのトラックを率いて入ってきた。今は、どの車も自動運転なので特に運転手は居ない。トラックとセンチュリーが校舎前の運動場に次々と入って来る。校舎からは全校生徒が校旗を振り、運動場には上の地位の方の教職員と理事、校長などと、生徒会役員80人が並んでいた。何となく大日本皇国(X国)視察時の地元学校訪問を思い出した。生徒会役員の80人の丁度前に止まった二台目のセンチュリーの後方からビシッとスーツを決め、左手に帽子を持ったダンディで180センチ程の男が降りて来る。見てすぐに分かった。安井会長だ。すぐに校長と理事長が近付いて挨拶をする。そうすると、安井会長も腰を折って挨拶を返す。後ろではトラックが次々と入ってきて荷下ろしが始まっている。体育館と校舎の地下に保管するのだ。勿論、非常食として。見事に安井会長は母校に錦を飾ったことになった。安井会長が丁度生徒会役員の前に来て校長が晴人を紹介する。
「ご存知ですよね?」
「はい、彼から要望書を貰ったんでね」
そう、今回の緊急予備食糧の寄贈は晴人が要望してそれが叶ったと言うことになっている。
「安井会長、今回は僕等の願いを聞いていただいて感謝申し上げます」
「いや、母校のことを放っておくわけにはいかないよ」
と言って安井会長は笑いながら歩を進めた。

午後2時 
生徒会長と生徒副会長2人の安井会長との会見時間が設けられた。今、応接室には全校生徒への講演を終えた安井会長が疲れも見せずに応接室に入って来て向かいのソファに座る。安井会長と挨拶を交わして安井会長が座ってから晴人等もソファに座った。応接室には校長と理事長が残っていたが、安井会長が話しにくい事も有るだろうと、結局、安井会長と晴人、吉彦、東堂の4人になった。
「安井会長、お初にお目に掛かります。大日本皇国再建部、中佐、安藤晴人です」
それに続いて生徒副会長の2人も挨拶をする。
「僕にはこんな事しか出来ないが、こんな物品のことなど気にせず言いつけてくれ」
「安井会長、今回のこと、本当にありがとうございました」
安井は何度も頷いた。
「安藤君」
「はいっ」
「今こそ国家存亡の時ぞ、世界は変わる。再び日本が世界を率いる時代が来る。いいな、例え何人が死に絶えようとも、もう止まることはできないんだぞ」
そう言うと、安井会長が白封筒を滑らして来た。
「リストだ。君達が頼んで来た品がどこに入ってあるかが書いてある」
その後、数分話して安井との会見は終わった。
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