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恋花と愛那
恋花と愛那の場合 6ー1
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「夏だよ! 恋ちゃん!」
「……そうだね」
「テンション低いよ!」
「……あんたのが高いだけよ。教室見渡してみ?」
愛那は恋花の机から手を離して顔を上げた。教室内は気温と湿度でぐったりとした生徒で溢れていた。
「むぅー。みんな弱いなー」
「で、今日は何だ? 放課後にアイスでも食べるか?」
「残念! それもいいけど、今日はこんなものを持って来ました!」
愛那は恋花の前の席である自分の机から一冊の雑誌を取り出した。『よく分かる相性占い』と書かれており、占い師の写真が表紙に載っていた。
「相性占いねえ……」
「やってみよ」
「お好きにどうぞ」
そう言うと、愛那は生年月日と星座と血液型を聞いた。恋花はそれに淡々と答える。
「出ました!」
「はい」
「恋ちゃんとあたしの相性は六十八パーセント!」
「…………微妙だな」
「待って。『今はまだ二人の距離はいまいちですが、これからの交流次第でさらに親しい関係になれるでしょう』だって!」
何を当たり前のことをと思いながら
「そりゃ良かった」
と答える。愛那はほとんど感情のないその返答に嬉しそうな顔をする。
「そうだよね、もっと仲良くしよ! またお泊まりしに来てね」
「うん」
面倒と思いながらも無下に出来ない。彼女には何か魔力のようなものがあるのではないかと思う。
チャイムが鳴り、教室のドアが開く。担任の北条先生が入ってきた。
「席に着けー。何ぐったりしてんだ、夏バテしそうなのはこっちだ」
と言うと、誰かが「先生歳だもんねー」と返す。
「うるせー。お前らもあと十年くらいでこうなる」
と冗談で流す。教室内に笑いが起きた。北条先生なりに気を使ったのだろう。
朝のホームルームが終わり、すぐに授業だ。
「……そうだね」
「テンション低いよ!」
「……あんたのが高いだけよ。教室見渡してみ?」
愛那は恋花の机から手を離して顔を上げた。教室内は気温と湿度でぐったりとした生徒で溢れていた。
「むぅー。みんな弱いなー」
「で、今日は何だ? 放課後にアイスでも食べるか?」
「残念! それもいいけど、今日はこんなものを持って来ました!」
愛那は恋花の前の席である自分の机から一冊の雑誌を取り出した。『よく分かる相性占い』と書かれており、占い師の写真が表紙に載っていた。
「相性占いねえ……」
「やってみよ」
「お好きにどうぞ」
そう言うと、愛那は生年月日と星座と血液型を聞いた。恋花はそれに淡々と答える。
「出ました!」
「はい」
「恋ちゃんとあたしの相性は六十八パーセント!」
「…………微妙だな」
「待って。『今はまだ二人の距離はいまいちですが、これからの交流次第でさらに親しい関係になれるでしょう』だって!」
何を当たり前のことをと思いながら
「そりゃ良かった」
と答える。愛那はほとんど感情のないその返答に嬉しそうな顔をする。
「そうだよね、もっと仲良くしよ! またお泊まりしに来てね」
「うん」
面倒と思いながらも無下に出来ない。彼女には何か魔力のようなものがあるのではないかと思う。
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「席に着けー。何ぐったりしてんだ、夏バテしそうなのはこっちだ」
と言うと、誰かが「先生歳だもんねー」と返す。
「うるせー。お前らもあと十年くらいでこうなる」
と冗談で流す。教室内に笑いが起きた。北条先生なりに気を使ったのだろう。
朝のホームルームが終わり、すぐに授業だ。
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