立てば芍薬、座れば牡丹、歩けば咲くは百合の花

キャサリンと絵美李

キャサリンと絵美李の場合 3

  キャサリンがフランスに旅行に行くまで、あと一日となった。その間、部活にも出ておらず、連絡もとっていない。三日間なんのやり取りをしなかったのは、これが初めてかもしれない。
  絵美李は一緒に宿題をした翌日から、毎日、キャサリンにメッセージを打とうとしては消しを繰り返している。

「何て送ろう……。邪魔じゃないかな……」

  などとベッドで横になりながら、一人で逡巡している。そのとき、自室のドアがノックされる。

「お姉ちゃん、ご飯だよー」 
「うん……。今行く」

  妹の真里が夕食を知らせに来た。洗面所で軽くうがいをしてから、ダイニングのテーブルに着く。

「お姉ちゃん、大丈夫？  食欲無いの？」
「ん……？  あ、ごめん。へーきへーき」 

  目の前に座る真里が心配して声をかけると、続くように両親もやさしい声をかけてくれた。
  家族にいらぬ心配をかけぬように黙々と食事を進め、自室に戻った。


  スマホの通知ランプが点滅していることに気付いた。広告メールはどうでもいい。ゲームの回復通知もどうでもいい。絵美李の心が震わせる一文がそれらと並んでいた。

『明日からだけど、お土産何が良い？』

  こっちの気も知らずにという気持ちと連絡してくれた嬉しさとその他色々な感情がごちゃ混ぜになる。ショートしそうな頭で返信を考えようとする。

  なんて返すかはすぐに決まった。

『何でもいいけど早く会いたい』