16 / 43
キャサリンと絵美李
キャサリンと絵美李の場合 2
しおりを挟む
駅から歩いて十三分、白が基調のマンションの三階。エレベーターから最も遠い部屋のインターホンが鳴る。
「いらっしゃい、キャシー。さ、入って」
「やあ、エミリー。お邪魔するよ」
とある土曜日、珍しく部活が休みだったので、キャサリンは絵美李の家に来ていた。
「これお土産」
「ありがとう!これ良いものじゃないの?」
「そんな大したものじゃあないよ」
キャサリンが渡したのは有名なお菓子ブランドの焼き菓子セットだ。5個入りで千円と決して安くない。絵美李はこういったお菓子とはあまり縁が無かったので、笑顔を隠せない。
「今、物音がしなかった?」
「ごめんね、今日は私以外みんな出かけるはずだったんだけど、妹の友達が体調悪いらしくて……」
絵美李は両親と妹の真里との四人暮らし。両親は小旅行に、妹は友人と遊びに出かける予定だった。
「こんにちはー」
「あ、どーも。お邪魔します」
「真里、今日は大人しくしててね」
「分かってるよー。ちょっとお茶取りに来ただけ」
姉に小言を言われた真里は、少し不機嫌そうにコップにお茶を注いで自室へと戻った。
「マリーちゃん、エミリーに似てるね」
「そう?」
「うん、可愛いとこが特に」
「……」
絵美李は赤と緑のコップを二つ出してお茶を注ぎ、緑の方をキャサリンにさし出す。その間、終止無言だった。
「で、何するんだっけ?」
「宿題! 提出物が全然出てないって言われたでしょ」
「あー、そうだったね」
「私の部屋行くわよ」
少し不機嫌そうな絵美李の後ろをキャサリンは足取り重そうについていく。部屋に入って教材を広げようとしたときだった。
「一緒に勉強してもいい?」
「キャシー、良い?」
「いいよ」
二人は四角いテーブルに隣どうしで座っていた。真里は絵美李の隣、キャサリンと向かい合うところに座った。
「はじめまして、島津真里です。お姉ちゃんがいつもお世話になってます」
「山崎キャサリンです。お姉さんにはいつものお世話になってます」
初対面らしい普通の会話だが、絵美李には違和感があった。
二時間後、宿題を一通り終えたキャサリンは部屋に寝転がった。見計らったように真里が声をかけた。
「お疲れさまです。山崎さん」
「ありがとう。気軽にキャシーって呼んで」
「私にも何か一言無いの……?」
「エミリーも、ありがとね」
少しの休憩を挟んだ後、キャサリンは旅行の荷造りがあるからと真っ直ぐ帰った。絵美李が駅まで送ると言ったが、大丈夫だと答えて少し足早に向かった。
「お姉ちゃん、寂しいの?」
「え!? べ、別にそんなわけないわよ!」
「じゃあ、ドアの前から離れたら? いつまでもボーッとしてないで」
「……」
「キャシーさんとどういう関係なの?」
「ただの学校の友達」
「ふーん……。じゃあ、わたし狙っても良い?」
「はぁ!?」
「別にお姉ちゃんの恋人ってわけじゃないんだし、いいじゃん」
「そ、そうじゃなくて!」
「……あー、ごめんごめん。二人の間には何人も立ち入れないのは、見てれば分かったから。お幸せにね」
「だから、違うって!!」
キャサリンの旅行まであと四日。
「いらっしゃい、キャシー。さ、入って」
「やあ、エミリー。お邪魔するよ」
とある土曜日、珍しく部活が休みだったので、キャサリンは絵美李の家に来ていた。
「これお土産」
「ありがとう!これ良いものじゃないの?」
「そんな大したものじゃあないよ」
キャサリンが渡したのは有名なお菓子ブランドの焼き菓子セットだ。5個入りで千円と決して安くない。絵美李はこういったお菓子とはあまり縁が無かったので、笑顔を隠せない。
「今、物音がしなかった?」
「ごめんね、今日は私以外みんな出かけるはずだったんだけど、妹の友達が体調悪いらしくて……」
絵美李は両親と妹の真里との四人暮らし。両親は小旅行に、妹は友人と遊びに出かける予定だった。
「こんにちはー」
「あ、どーも。お邪魔します」
「真里、今日は大人しくしててね」
「分かってるよー。ちょっとお茶取りに来ただけ」
姉に小言を言われた真里は、少し不機嫌そうにコップにお茶を注いで自室へと戻った。
「マリーちゃん、エミリーに似てるね」
「そう?」
「うん、可愛いとこが特に」
「……」
絵美李は赤と緑のコップを二つ出してお茶を注ぎ、緑の方をキャサリンにさし出す。その間、終止無言だった。
「で、何するんだっけ?」
「宿題! 提出物が全然出てないって言われたでしょ」
「あー、そうだったね」
「私の部屋行くわよ」
少し不機嫌そうな絵美李の後ろをキャサリンは足取り重そうについていく。部屋に入って教材を広げようとしたときだった。
「一緒に勉強してもいい?」
「キャシー、良い?」
「いいよ」
二人は四角いテーブルに隣どうしで座っていた。真里は絵美李の隣、キャサリンと向かい合うところに座った。
「はじめまして、島津真里です。お姉ちゃんがいつもお世話になってます」
「山崎キャサリンです。お姉さんにはいつものお世話になってます」
初対面らしい普通の会話だが、絵美李には違和感があった。
二時間後、宿題を一通り終えたキャサリンは部屋に寝転がった。見計らったように真里が声をかけた。
「お疲れさまです。山崎さん」
「ありがとう。気軽にキャシーって呼んで」
「私にも何か一言無いの……?」
「エミリーも、ありがとね」
少しの休憩を挟んだ後、キャサリンは旅行の荷造りがあるからと真っ直ぐ帰った。絵美李が駅まで送ると言ったが、大丈夫だと答えて少し足早に向かった。
「お姉ちゃん、寂しいの?」
「え!? べ、別にそんなわけないわよ!」
「じゃあ、ドアの前から離れたら? いつまでもボーッとしてないで」
「……」
「キャシーさんとどういう関係なの?」
「ただの学校の友達」
「ふーん……。じゃあ、わたし狙っても良い?」
「はぁ!?」
「別にお姉ちゃんの恋人ってわけじゃないんだし、いいじゃん」
「そ、そうじゃなくて!」
「……あー、ごめんごめん。二人の間には何人も立ち入れないのは、見てれば分かったから。お幸せにね」
「だから、違うって!!」
キャサリンの旅行まであと四日。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
女の子なんてなりたくない?
我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ―――
突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。
魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……?
ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼
https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる