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キャサリンと絵美李

キャサリンと絵美李の場合 4-2

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 キャシーからの電話に慌ててスマホを落としてしまいそうになる。床スレスレで何とかキャッチして電話に出ようとすると切れていた。誤って通話終了を押してしまったようだ。こちらから電話しようと電話帳を開いたところでもう一度着信があった。

「もしもーし、エミリー? 慌てて出ようとしたら拒否ボタン押した?」
「……ええ。ごめんなさいね」

 何故かこういうことには鋭い。まるで見ていたかのような第一声にちょっと腹立たしいのと恥ずかしい思いだ。

「気にしてないよー。今ね、日本に帰ってきた」
「お帰り」
「お土産渡したいし、明後日あたり会えない?」

 カレンダーに目をやる。土曜日、何も予定はないはずだ。

「わざわざありがとう。場所と時間は?」
「うーん……。あっ、そうだ! うちに来てよ。十時くらいでいい?」
「分かった」
「じゃあねー」
「うん、じゃあね」

 数分後、『言い忘れてた、ごめん!』というメッセージとともに待ち合わせ場所である最寄り駅の名前が送られてきた。


 土曜日、二十分前に集合場所に到着した。気を使わせてはいけないので五分前になったら到着したことを伝えようと思った。
 それまで駅周辺を見て回ることにした。駅自体はそこまで大きいとは感じなかったが、快速急行が止まるだけあって周辺もそれなりに栄えているようだ。飲食店やアパレルショップが並んでいるあたりを目的もなく歩いてみる。美味しそうな匂いが漂ってくる。パンやケーキの売り場があるようだ。そういえば、以前キャシーが駅前にあるパン屋さんのキャラメルコロネが好きだと言っていたのを思い出した。ここかどうかは分からないが少し見てみようと思った。トレーとトングは持たずに店を一周すると最後の方でキャラメルコロネを見つけた。百五十円と手ごろな価格である。入り口付近へトレーとトングを取りに行く。

「あれ、エミリー? なんでここにいるの?」
「ちょっと早く着いたから散策しようと思ったの」
「そっか、偶然だね。ここのパン美味しいからエミリーにも食べてもらいたいなと思って」

 そう言うと、素早くトレーとトングを手に持ちいくつかのパンを乗せる。その中にはキャラメルコロネが二つあった。こちらを見て、「他に何か欲しいのあったら言ってね」と言う。折角なのでミルクフランスを一緒に乗せてもらう。お会計を済ませたキャシーにいくらかと尋ねると「いいよ」と断られる。ここで譲り合うと長くなるのは見えていたので、今度別の形で返すことにして好意に甘えることにした。
 その後少しだけ駅周辺を案内してもらい、キャシーの家へ向かう。
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