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1 イケメンの無駄遣い

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ここは勤務先、都内高級タワーマンションの一室。
俺は貧乏大学生(19)兄ちゃんの紹介でイケメン投資家の家事代行をしに来たんだけど。

大理石が敷かれた玄関先で、全裸の男が倒れていた。

「大丈夫ですか!生きてますか!?」
仕事道具を投げ出し、全裸の依頼主(?)に駆け寄った。
下手に動かしてはいけないと思い、意識確認をする。

目鼻立ちの整った、四肢がスラリと伸びた精悍な長身。
確かにモデルのような容姿だが、「全裸」のインパクトが強過ぎて全てを台無しにしていた。

呼びかけに反応してか、全裸のイケメンは俺の服を掴み、微かに薄い口を戦慄かせ、言葉を発しようとしていた。
耳を傾け、静かに言葉を待つ。

「おうちカレー、食べたい…」

がくり。

全裸男の顔は達成感で満ち溢れた表情になり、スヤァと寝息を立て始めた。
確かにリクエストをされてはいたが。

「もっと他に言う事、あるのでは?」

突っ込まずにはいれなかった。

数十分後。

「ん…」
「あ、おはようございます」
「えっと…?」

ここは現場の玄関先。
全裸男を寝室へ運ぼうとしたが、男が俺の服を掴んで離さなかったので、仕方なくその場で腰かけ、膝枕をしていた。

「初めまして、家事代行で来た、志乃 凛(しの りん)です。
インターホンで反応無かったんで、合鍵使わせてもらいました」
合鍵は兄経由で預かっていた。
二人は「親友」らしい。

「初めまして、か」
「?」
「じゃあ「しのりん♪」って呼ぶね」
「イントネーションに悪意があるのでダメです」

ちぇっ、といじけて見せる全裸イケメン。
つられて突っ込んだが、結構ノリのいい人だな。
「俺は高見玲(たかみ れい)。24歳で気鋭の投資家だよ」
残念ながら、全裸かつ俺の膝枕で名乗られても説得力に欠けていた。
それより。

「あの、そろそろ起きてもらえると助かるんですが」
「ぐー」
「聞いてます!?」

食い気味で狸寝入りをするイケメン。
24歳で投資歴14年という変わった投資家と聞いたが、中身は残念系男子かも知れない。

「いやあ、久し振りに熟睡出来たのが嬉しくて、つい」
切れ長の目を細め、人懐っこい笑顔。
女性ならコロリといくのだろうか。
膝枕を通して伝わる髪の感触がくすぐったい。

「不眠症ですか?」
「わかる?普段は海外の輸入サプリ飲んでるんだけど、眠りが浅くて」
一見、日常会話なのだが。
「でも、起きた方が…」
ごにょごにょ、と言葉を濁す。

先程から視界の端にちらちら映る、イキり勃った「アレ」が気になってしょうがない。

膝を貸している間、流石に裸は如何なものだろうと思い、俺のシャツを高見さんの下半身に被せたのだが。
股間は立派なテントを張っていた。

「わお!ピ〇の斜塔かな!?」
「股間を世界遺産で例えないでください!」
確かにご立派なお持ち物ですけども!
「いやあ、嬉しいなぁ」
「?」

「俺、EDだから」

「!?!?」
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