悪役令嬢こと私は、ヒロインの娘です。

あたしはヒロインなのにっ!

その言葉が母の口癖だった。

薄暗い牢の中、自分の名も知らずに、ただ生きていた。

意味の分からない言葉を繰り返す母と、狂ってしまった父と一緒に。

そんな、いつまで続くかわからないような日々は突然終わりを告げる。

突如正気を取り戻した父の凶行によって。

母に私を見てほしかった。
父に私を知ってもらいたかった。
ただそれだけを願っていただけなのに。

「やっぱりあたしはヒロインなのね!」

そのわけのわからない言葉を妹が叫んだ瞬間、私は唐突に理解した。

この人は私の母だった人だ、と。
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