猫と話をさせてくれ

ねぎ(ポン酢)

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第二話

猫と呪いとハンバーグ⑤

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 「…何でまた来たんだよ?」


草むらから顔を出した猫は、心底、面倒臭そうな顔をした。

俺は早朝のランニングを装って、あの草むらに来ていた。


「色々報告があってさ!!」


俺は興奮ぎみにそう言った。
誰よりも早く、猫に報告したかったんだ。

猫は物凄くどうでもよさげな顔をしたが、急にすんすんと鼻を動かした。


「なるほど、手ぶらって訳でもねぇのか。」


そう言うとニヤッと笑って茂みの中に引っ込んだ。

俺はいつものようにお邪魔しますと言って、しましまのロープを跨ぎ、猫だと思われる草の揺らめきを追いかけた。


「で?何だよ?」


空き地に出ると、猫は気だるそうに伸びをして、ごろんと寝転んだ。


「会社から、今後の事とかの連絡が来たんだよ!」

「あ~そりゃ良かったな~。」

「仕事をどうするかも決まったし!ちゃんと給料くれるって!」

「あ~ハイハイ。」

「何だよ!真面目に聞けよ!!」


欠伸をしながらごろごろする猫。

猫に興味のない話なのはわかっていたし、むしろこのどうでもいいという、猫らしい対応に安心感を覚えた。


「そんな態度なら、やらないぞ!」

「なら、いらねぇ~。」

「何でだよ!頑張って作ったのに!!」


まぁ、思い描いたようにはいかないのが、猫の良いところ(?)なんだけど。

誰かから餌をもらった後なのか、食べ物に対してなのに、食い付きが悪い。

むしろ…。


「作っただぁ~?!お前がかよ!?」

「そ、そうだけど、、、。」

「あのさ、それ、ちゃんと食えるのか??」

「酷すぎる!」


物凄く疑わしい物を見るように、猫は俺を一瞥した。
険しい顔を崩さないまま、鼻だけひくひくと動かす。

大丈夫だと思うんだけど、あまりの態度に心配になってくる。


「これなんだけどさ…。」


とりあえず、持ってきたタッパーから、箸で1つ、つまみ出して見せた。


「何それ?」

「ハ、ハンバーグ、、、。」

「ふ~ん。」

「大丈夫だから!ちゃんと調べて、猫用に作ったヤツだから!」

「俺が心配してるのは、そいつが食える代物か否かだけどよ。」


猫はまだ、疑わしそうな顔をしていたが、興味はあるようで、ハンバーグを凝視していた。

とりあえず、ハンバーグを左右に動かす。

猫の顔が、ハンバーグを追って動いた。


「てめえ!俺で遊ぶな!!」

「悪い。やってみたい衝動を押さえられなかった。(笑)」

「ふざけんなー!!」


食べてくれそうなので、安心した。

だが、茶碗に入れようとしたら、猫はジャンプして俺に頭突きを食らわせた。


「何すんだよ!」

「そりゃこっちの台詞だ!!」

「何がだよ?!」

「てめえは汚れた茶碗で毎日飯食ってんのか~!!」


猫はシャーと鳴いて、背中を丸く持ち上げた。


「え?ごめん、洗えるもの持ってない。」

「とりあえず拭けよ!!」

「なにで?」

「そこにタオル持ってんだろうが!!」

「これは汗を拭くタオルで…。」

「てめえの汗なんぞ、知ったことか!汗より俺の健康を気遣え!!」

「ええええぇ~?!」


なんか理不尽だな~とも思ったが、確かに汚れた器にいれるのは失礼だ。

俺は仕方なく、汗を拭く為に持っていたタオルで猫の茶碗を拭いた。


「それでよし。じゃあ入れろ。」


偉そうに言っているが、何気に楽しみなのか、目が爛々としている。

俺はハンバーグを1つ、茶碗に入れた。


猫はふんふん、すんすん、匂いを嗅ぎまくっていた。


「玉ねぎとか、入れたら駄目な物は入ってないから大丈夫だぞ?」


あまりにも念入りに嗅ぐものだから、何だか不安になってきた。

猫は少し考えるように顔を離した後、がぶりとハンバーグに噛みついた。


「?!?!」

「ど、どうだ?食えなくはないだろ?」

「、、、。1個じゃわからん。」

「まだあるけど?」


猫は要求するように、茶碗の縁に前足をかけた。

俺は2つ目のハンバーグを茶碗に入れた。



「で?どうなんだよ?」

「思ったより、旨いな。」


猫の思っていた位置が解らないので、どの程度旨かったのかは計りかねたが、ひとまず合格の位置だった事はわかった。


「ただパサパサだな。」

「玉ねぎとか入れられなかったし、仕方ないだろ。」

「そこは工夫するだろ、普通。」

「わかったよ!次はもっと上手くやってやるよ!!」

「おう、頑張れよ~。」


猫は何だか楽しそうに、ニヤニヤしていた。

もしかして俺は、また乗せられたのだろうか?


「ところでよ、もう1つないのか?はんば~ぐ?」

「…喰いすぎ。腹壊すぞ?」
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