44 / 97
SS版奇異見聞録【うわさ】(ショートショートホラー集)
雨の糸
しおりを挟む
何かはわからない。だがその視線に晒され息ができない。鋭く重い圧迫感。唾すら飲み込めず口の脇から涎が伝った。泡を吹く人がいるが、こうやってそうなるのだなとどこかで思った。
山の夜の闇は濃く鬱蒼と匂い立っている。知人とは違い私にはそれが見えない。だが「見られてる」と言う事だけはひしひしと感じた。皮膚を刺すそれは私を雁字搦めにする。傘を手放した身に雨は纏わりつき、全身に伝う。
『雨には気ぃつけな。』
見失った老婆に言われた言葉。その言葉通り、見えない視線が雨と混ざり心身を締め付けてくる。私は糸に縛られる傀儡の様にもがく。何も見えない筈なのに、糸を手繰り自分を締め上げようと伸ばされた手が見える気がした。
「!?」
だが突然、ふっとその糸が緩んだ。
何故かはわからない。私は反射的に体を動かし知人に駆け寄ろうとして、無様にすっ転んだ。
その手に硬いモノが当たる。
「写ルンです」だった。
山の夜の闇は濃く鬱蒼と匂い立っている。知人とは違い私にはそれが見えない。だが「見られてる」と言う事だけはひしひしと感じた。皮膚を刺すそれは私を雁字搦めにする。傘を手放した身に雨は纏わりつき、全身に伝う。
『雨には気ぃつけな。』
見失った老婆に言われた言葉。その言葉通り、見えない視線が雨と混ざり心身を締め付けてくる。私は糸に縛られる傀儡の様にもがく。何も見えない筈なのに、糸を手繰り自分を締め上げようと伸ばされた手が見える気がした。
「!?」
だが突然、ふっとその糸が緩んだ。
何故かはわからない。私は反射的に体を動かし知人に駆け寄ろうとして、無様にすっ転んだ。
その手に硬いモノが当たる。
「写ルンです」だった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
悪魔を狩る者 ~ツェザリ・カレンバハの生涯~
京衛武百十
ホラー
連続妊婦殺害犯<ツェザリ・カレンバハ>は、いわゆる私生児だった。彼の母親は大きな力を持った商人の愛人の一人で、子供ができた時点で少しばかりの金を持たされて捨てられた。その後の母は、何人もの男の間を転々としながら彼を育てた。しかも次々と父親も分からない子を宿していたこともあり、彼の記憶にある母の姿はいつも大きな腹を抱えて面倒臭そうに自分を見る<売女>そのものだった。
母親は大きな腹を抱えて彼を奴隷のようにこき使った。糞の後で尻を拭かされたことさえある。それでも、普段から優しくしてくれたなら彼の方も大きな腹を抱えて尻を拭くのもままならない母の為にと思えたかもしれない。だが実際には、
「この為にお前を産んだんだよ! さっさとしろ!」
と怒鳴りながら命令したのだ。しかもすぐにやらなかったということで、暖炉の炭を掻き出す火かき棒で殴られもした。その時にできた額の傷を隠す為に髪を伸ばしているというのもある。
だから彼にとって腹の大きな女性は、自分を虐げ苦しめる<魔物>なのだ。彼の最初の標的は、自身の母親だった。しかも母親が彼に刺されて死んだ時、母親は赤ん坊を産み落とした。それを見たことで、彼にとって胎児は、<母親を魔物に変えた悪魔そのもの>という認識になった。
そう。彼にとって<妊婦殺し>は、魔物や悪魔を狩るという、<自らに与えられた使命>だったのだ。
彼は、『悪魔から人間を守る為に正義を執行していた』のである。
筆者より
この物語に<救い>はありません。ただただ胸糞悪いだけです。
聖女の証を義妹に奪われました。ただ証だけ持っていても意味はないのですけどね? など 恋愛短編集
にがりの少なかった豆腐
恋愛
こちらは過去に投稿し、完結している短編(2万字未満の作品)をまとめたものになります
章毎に一作品となります
これから投稿される『恋愛』カテゴリの短編は投稿完結後一定時間経過後、この短編集へ移動することになります
※こちらの作品へ移動する際、多少の修正を行うことがあります。
※タグに関してはおよそすべての作品に該当するものを選択しています。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
【R18】平凡な男子が女好きのモテ男に告白したら…
ぽぽ
BL
"気持ち悪いから近づかないでください"
好きな相手からそんなことを言われた
あんなに嫌われていたはずなのに…
平凡大学生の千秋先輩が非凡なイケメン大学生臣と恋する話
美形×平凡の2人の日常です。
※R18場面がある場合は※つけます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる