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第二話 知り合いの暫定サイコキラー

論破する刑事

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 突如、警察を名乗った宮間に、榊は動揺する。
 彼女は後ずさって口を無意味に開閉させた。
 思考が追いついていないのかもしれない。

 対する宮間は頬を掻きつつ苦笑する。

「まあ、ご存知かと思うのですが、先日に起きた殺人事件について訊きたいんですよ。元カレさんが亡くなった事件です」

「…………」

 榊は露骨に視線を逸らす。
 先ほどまでの強気な姿勢は霧散していた。
 彼女はぽつりぽつりと話す。

「……彼、とはもう連絡を取っていなくて……私、何も知りません」

 宮間は芝居がかった仕草で驚いてみせる。

「ほう。おかしいですねぇ、折田さんのスマートフォンを解析したところ、着信履歴にあなたの電話番号が残っていたのですが。事件数日前に何度か話し込んでますよね?」

「プ、プライベートな内容だったので、あなたに教えたくなかっただけ、です……」

 榊は苦々しい表情で弁明する。
 見るからに青ざめた顔。
 取り繕うのは上手くても、目の前で追及されるのは弱いようだ。

 代わりに宮間は緊張感のない笑みを深める。

「いやはや、遺体はなかなか酷い有様でしたよー。特に体内が滅茶苦茶でして。あんな凶器、一体どうやって調達したんですか?」

「だから私はやっていません! そもそも毒の入手方法なんて知りませんし……」

 宮間は片眉を上げた。
 顎に手を当てて、わざとらしく首を傾げる。

「おや。なぜ遺体が毒殺されたと知っているんですか? テレビでは鈍器による全身殴打が死因だと報道されているはずですよ。まだ司法解剖が済んでいないのに勝手に決め付けちゃうなんて、メディアには困ってしまいますねぇ……」

「あっ……」

 宮間の言葉を受けて榊は絶句する。
 そんな彼女をよそに、宮間は悠々と言葉を続けた。

「確かに遺体は全身をボコボコに殴られていましたが、それが直接的な死因ではありませんでした。実は劇毒による毒殺だったんですね。それを知っているのは、警察関係者と実行した殺人者だけです」

 涼しい微笑を張り付けた宮間は、穏やかな口調で榊に告げる。

「榊あおいさん、犯人はあなたですね」
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