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第96話 戦況を俯瞰してみた

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 聖騎士が全力で仕掛けてくる。
 消耗を考えない猛攻だ。
 これまでよりもさらに速く、そしてどこまでも力強い。
 残像を発しながら繰り出される剣術は、軌道上に転がる的や障害物を切り裂きながら迫る。

 周囲に毒煙が充満しているが、聖騎士は光魔術で強引に無効化していた。
 僅かに吐血するも、怯む気配がない。
 力尽きる前に俺を殺す気なのだ。
 短期決戦のための立ち回りに切り替えている。

 対する俺は防戦を演じていた。
 幾度となく攻撃を受けながらも、まだ大きな怪我はしていない。
 ひとえに防具の性能が良いからだろう。
 まさか属性付与された聖騎士の斬撃を凌ぐほどとは。
 普通の装備だったら、もっと死にものぐるいになっていたに違いない。

 気を抜けない展開が続いている。
 風の防御は既に分解された。
 聖騎士の攻撃は高威力で、最初の光線も容赦なく多用してくる。
 一撃で形勢を覆される恐れがあった。

 それに魔力の減りが激しい。
 長期戦になって困るのは俺も同じなのだった。
 服用した解毒薬の効果時間にも限りがあり、呼吸のたびに毒煙を吸い込んでいる状態だ。
 肉体の負荷は計り知れない。
 あまり無茶をすると、聖騎士に斬られる前に毒で自滅しそうである。

 それでも俺は、冷静でいられた。
 背筋を伝う死の気配を感じ取りつつ、湧き上がる焦りを精神力で抑える。
 徹底した防戦と牽制により、とにかく致命傷を負わないように気を付けた。
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