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第62話 戦略的な判断をしてみた

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 意気込みながら歩いていると、ビビが手で制してきた。
 彼女は顔を顰めて俺に告げる。

「前から来るよ……臭い」

 物陰から足音がした。
 呻き声を洩らして姿を現したのは、体表が腐敗した人間だ。
 破れた衣服を揺らしながら、ふらついた足取りで迫ってくる。
 俺はすぐさま剣を抜いて盾を構えた。

「グールか」

「アンデッド?」

「そうだ。怪力と再生能力を持っている。首を飛ばすか心臓を破壊すれば死ぬが、少し面倒な相手だ」

 グールは中位のアンデッドだ。
 対峙して死を覚悟するような魔物ではないものの、決して雑魚ではない。
 弱点を確実に狙う技量がないと、苦戦は必至とされる。

 もっとも、俺は過去に何度もグールを倒したことがあった。
 どうやって対処すればいいかは心得ている。
 ビビは初対面だが、彼女の才能と経験があれば問題ないだろう。
 風魔術を使うことで安全に攻撃できる。

「協力して倒すぞ」

「待って。何かおかしい」

 ビビが深刻な顔をしている。
 その直後、周囲の廃虚から続々とグールが出てきた。
 見える範囲だけでも数十体の規模だ。
 雪崩れるように溢れる様を見るに、まだ他にも控えているらしい。

 大量のグールが押し合いながら接近してくる。
 後ずさろうとするも、退路もとっくに塞がれていた。
 突発的に魔物が湧き出てくるのは迷宮特有の現象である。
 漂う霧が魔力を誤魔化して感知を遅らせたのだろう。
 俺は苦い顔でグール達を睨む。

「不味いな、囲まれた。何らかの罠が発動したようだ」

「どうするの」

「逃げる。この数と戦うのは危険すぎる。さっさと次の階層への階段を探すぞ」

 俺は近くの建物へと駆け出した。
 進路上のグールを盾で殴り飛ばしつつ、ビビと共に室内に退避する。
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