35 / 111
第35話 力の高みを見据えてみた
しおりを挟む
ビビは金属製の腕輪を購入した。
腕側に術式が刻まれた代物で、風属性の補助具として機能してくれる。
安価な上、初級から中級の魔術に対応しているそうだ。
入門の触媒なので性能的に物足りなくなってくるらしいが、魔術を基礎から学ぶには最適とのことであった。
まさしく求めていた要望に沿っている。
俺達は店主に感謝しながらギルドを出た。
宿への帰り道、ビビが顔を曇らせて頭を下げてくる。
「ご主人、ごめん」
「いきなり何だ」
「魔力の実のこと。ご主人が食べるべきだった。全属性が使えて魔力が増えたら、とても強い」
どうやらビビは属性検査の時から気にしていたらしい。
確かに風属性のみと全属性なら、後者の方が魔術師に向いていると解釈できる。
彼女の悩みはよく分かる。
その上で俺はビビの頭に手を置いた。
「気にしなくていい。俺には既にたくさんの手札がある。ここに大量の魔術が加わっても、存分に活かすことができない。専門の魔術師になるつもりもないしな」
「…………」
「ビビの強さは、魔術を加えることで飛躍的に向上する。伸び幅で言えば俺の数倍は下らないだろう。だからこれでよかったんだ」
そもそも俺が魔力の実を食べたところで、ビビほどの効果があったかは不明だ。
彼女だからこそ劇的に魔力量が増えたのだ。
俺が食べても大した影響がなかった可能性は否めない。
実際問題、全属性の魔術を自在に扱えたとしても、俺がその強みを十全に発揮するのは不可能に近かった。
一属性だけでも持て余す自信があるのだ。
残る寿命を費やしても一人前の魔術師になれるか怪しいところである。
今くらいの制限があるのがちょうどいいと思っている。
俺は立ち止まってビビの目を見る。
それから頭を撫でながら告げた。
「もし罪悪感が消えないのなら、これからの結果で返してくれ。いいな?」
「――うん、わかった」
ビビは固い決意を以て答える。
それから俺の頬にそっと口づけをした。
翌日から俺とビビは魔術の勉強にさらに没頭した。
補助具を使った鍛練も交えて進めていく。
腕側に術式が刻まれた代物で、風属性の補助具として機能してくれる。
安価な上、初級から中級の魔術に対応しているそうだ。
入門の触媒なので性能的に物足りなくなってくるらしいが、魔術を基礎から学ぶには最適とのことであった。
まさしく求めていた要望に沿っている。
俺達は店主に感謝しながらギルドを出た。
宿への帰り道、ビビが顔を曇らせて頭を下げてくる。
「ご主人、ごめん」
「いきなり何だ」
「魔力の実のこと。ご主人が食べるべきだった。全属性が使えて魔力が増えたら、とても強い」
どうやらビビは属性検査の時から気にしていたらしい。
確かに風属性のみと全属性なら、後者の方が魔術師に向いていると解釈できる。
彼女の悩みはよく分かる。
その上で俺はビビの頭に手を置いた。
「気にしなくていい。俺には既にたくさんの手札がある。ここに大量の魔術が加わっても、存分に活かすことができない。専門の魔術師になるつもりもないしな」
「…………」
「ビビの強さは、魔術を加えることで飛躍的に向上する。伸び幅で言えば俺の数倍は下らないだろう。だからこれでよかったんだ」
そもそも俺が魔力の実を食べたところで、ビビほどの効果があったかは不明だ。
彼女だからこそ劇的に魔力量が増えたのだ。
俺が食べても大した影響がなかった可能性は否めない。
実際問題、全属性の魔術を自在に扱えたとしても、俺がその強みを十全に発揮するのは不可能に近かった。
一属性だけでも持て余す自信があるのだ。
残る寿命を費やしても一人前の魔術師になれるか怪しいところである。
今くらいの制限があるのがちょうどいいと思っている。
俺は立ち止まってビビの目を見る。
それから頭を撫でながら告げた。
「もし罪悪感が消えないのなら、これからの結果で返してくれ。いいな?」
「――うん、わかった」
ビビは固い決意を以て答える。
それから俺の頬にそっと口づけをした。
翌日から俺とビビは魔術の勉強にさらに没頭した。
補助具を使った鍛練も交えて進めていく。
10
お気に入りに追加
2,189
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる