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第14話 想いの強さを実感してみた

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 限界を超えた疲労感と共に意識が浮上した。
 娼館で目覚めた俺は、昨晩の記憶を振り返る。

 嫉妬によるものか、ビビはとてつもなく激しかった。
 何度も求められたので、俺もそれに応えた。
 結果として瀕死状態に陥っている。
 心身が満ち足りた感覚があるが、それ以上に倦怠感が凄まじい。
 このまま半日くらいは寝たきりになりたかった。

 右側にはビビが抱き付いている。
 彼女は安らかな顔で熟睡していた。
 心なしか、肌が艶やかになっている。

 喉が渇いたが、起き上がるのも面倒だ。
 何もできずに横になっていると、額を軽く叩かれた。
 視界の端にハーフエルフの娼婦ミナがいた。
 彼女は俺の頬をつまんで引っ張る。

「そろそろ起きな。こっちも仕事が待ってるんだ」

 俺はビビが目覚めないように注意しつつ、上半身だけ起こした。
 そして頭を掻きながらミナに謝る。

「……色々とすまない」

「別に気にしなくていいよ。あんたは悪くないしね。ただ、女の嫉妬の怖さは思い知ったんじゃないかな?」

「まったくだ。これからは夜遊びできそうにない」

 俺は肩をすくめる。
 すると、ミナが首に手を回して身を寄せてきた。
 彼女は耳元で囁いてくる。

「寂しいことを言わないでおくれよ。内緒で来たらいいじゃないか。そういう男は多いよ。別に構いやしない――」

「臭いでわかる」

 冷静な声が雰囲気を打ち破る。
 ビビが起きていた。
 俺とミナを瞬きせずに凝視している。
 場の空気が凍り付いていた。
 耐え切れなくなった俺は、とりあえず挨拶をする。

「おはよう」

「うん。おはよう、ご主人」

 起き上がったビビはミナの前に移動した。
 何をするつもりだろうか。
 どうか喧嘩だけはやめてほしい。
 そう願っていると、ビビは真剣な顔で話しかける。

「ねぇ」

「ん? 何か用かな」

「技を教えて」

 ビビの言葉を聞いたミナは意外そうな顔をした。
 それから少し考え込み、慎重に確認する。

「技って……夜の技だよね」

「うん。ご主人を虜にしたい」

 ビビは前のめりになって頷いた。
 予想外の展開だが、まあ納得はできる。
 困り事は本職に聞くのが手っ取り早いだろう。
 嫉妬とは別に、ビビは今後のための情報収集を試みているのだ。
 なかなかの策士である。

 頼み込まれたミナは微笑した。
 ビビの心境を察した彼女は、顎を撫でつつ回答する。

「タダじゃ無理だね」

「ちゃんとお金を払って指名する」

「それはいい。物分かりが良い子は好きだよ」

 ミナがビビの頭を撫でる。
 されるがままのビビは、目を細めて嬉しそうにしていた。
 なぜか今のやり取りで意気投合したらしい。
 よく分からないが、喧嘩になるよりマシだと考えるべきだろうか。

 その後、俺とビビは退店のための支度をする。
 去り際にミナから「大事にしてあげなよ」と言われた。
 なので俺は「当然だ」と答えておく。
 ビビのことは気に入っている。
 見捨てるつもりは欠片もなかった。
 これからも仲良くやっていきたいと考えている。
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