100 / 107
第100話 最終手段
しおりを挟む
百足の頭蓋にそっと触れる。
その際、自分の指が何本か欠損していることに気付く。
きっとどこかで千切れたのだろう。
必死すぎて分からなかったし、今はどうでもいい。
頭蓋を包み込むようにして掴み、残る指に力を込めていく。
小さく軋む音が鳴るも、砕ける気配はない。
急所を守っているだけあって頑丈な造りになっているのか。
今度は拳を勢いよく叩き付ける。
頭蓋には傷一つ付かず、それどころか指が折れてしまった。
鈍い痛みを無視し、鋼鉄の爪で引っ掻いてみる。
やはり頭蓋が切り裂けるようなことはない。
他にも色々と試行錯誤するも、結果は芳しくなかった。
頭蓋は一向に壊せない。
だんだんと焦りが募ってくる。
犠牲となった三人の殺人鬼なら、それぞれの得意な攻撃手段で頭蓋を破壊できたはずだ。
ここまで生き残っておきながらも苦戦するのは、きっと自分だけである。
その事実が重く胸にのしかかる。
身体にかかる圧迫感が増していく。
頭部の中に詰まった肉が引き締まり、異物を潰そうとしているのだ。
瞬く間に動きづらくなり、凄まじい密度によって思考が上手くできなくなる。
外殻の破片らしき物体が腰にめり込んで刺さった。
新たな痛みに顔を顰めながら、絶体絶命の状況を悟る。
このままでは、死ぬ。
最後の一歩のところで届かない。
誰にも知られず、無惨な死を遂げるのだ。
――そのような結末は、断固として認められなかった。
幾度となく間近まで迫った死が、この場における最終手段を提案する。
それは既に使った攻撃だが、結果として有効打になったものだった。
この場面においても必ず役に立つ。
すなわち爆破だ。
前回は肉片を使った。
今回は自分の身体そのものを材料にする。
おそらく死ぬことになるだろうが、ここで無力感に苛まれながら潰されるよりはマシだ。
恐怖などとっくの昔に捨てていた。
それより許せないのは、ここで何もできずに死ぬことだ。
意地と殺意がすべてを凌駕した。
だから自爆しようとしている。
他に策も思い付かず、悠長に考えている場合でもない。
手遅れになる前に使った方がいいだろう。
決心すれば行動は早かった。
血みどろの手を頭蓋の上に置くと、爆破の変容を発動させる。
体内で膨れ上がる熱量を感じながら、視界が光に包まれていった。
その際、自分の指が何本か欠損していることに気付く。
きっとどこかで千切れたのだろう。
必死すぎて分からなかったし、今はどうでもいい。
頭蓋を包み込むようにして掴み、残る指に力を込めていく。
小さく軋む音が鳴るも、砕ける気配はない。
急所を守っているだけあって頑丈な造りになっているのか。
今度は拳を勢いよく叩き付ける。
頭蓋には傷一つ付かず、それどころか指が折れてしまった。
鈍い痛みを無視し、鋼鉄の爪で引っ掻いてみる。
やはり頭蓋が切り裂けるようなことはない。
他にも色々と試行錯誤するも、結果は芳しくなかった。
頭蓋は一向に壊せない。
だんだんと焦りが募ってくる。
犠牲となった三人の殺人鬼なら、それぞれの得意な攻撃手段で頭蓋を破壊できたはずだ。
ここまで生き残っておきながらも苦戦するのは、きっと自分だけである。
その事実が重く胸にのしかかる。
身体にかかる圧迫感が増していく。
頭部の中に詰まった肉が引き締まり、異物を潰そうとしているのだ。
瞬く間に動きづらくなり、凄まじい密度によって思考が上手くできなくなる。
外殻の破片らしき物体が腰にめり込んで刺さった。
新たな痛みに顔を顰めながら、絶体絶命の状況を悟る。
このままでは、死ぬ。
最後の一歩のところで届かない。
誰にも知られず、無惨な死を遂げるのだ。
――そのような結末は、断固として認められなかった。
幾度となく間近まで迫った死が、この場における最終手段を提案する。
それは既に使った攻撃だが、結果として有効打になったものだった。
この場面においても必ず役に立つ。
すなわち爆破だ。
前回は肉片を使った。
今回は自分の身体そのものを材料にする。
おそらく死ぬことになるだろうが、ここで無力感に苛まれながら潰されるよりはマシだ。
恐怖などとっくの昔に捨てていた。
それより許せないのは、ここで何もできずに死ぬことだ。
意地と殺意がすべてを凌駕した。
だから自爆しようとしている。
他に策も思い付かず、悠長に考えている場合でもない。
手遅れになる前に使った方がいいだろう。
決心すれば行動は早かった。
血みどろの手を頭蓋の上に置くと、爆破の変容を発動させる。
体内で膨れ上がる熱量を感じながら、視界が光に包まれていった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 〜強面、筋骨隆々、とても強い。 でもとっても優しい男が異世界でのんびり暮らすお話〜
かむら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞にて、ジョブ・スキル賞受賞しました!】
身長190センチ、筋骨隆々、彫りの深い強面という見た目をした男、舘野秀治(たてのしゅうじ)は、ある日、目を覚ますと、見知らぬ土地に降り立っていた。
そこは魔物や魔法が存在している異世界で、元の世界に帰る方法も分からず、行く当ても無い秀治は、偶然出会った者達に勧められ、ある冒険者ギルドで働くことになった。
これはそんな秀治と仲間達による、のんびりほのぼのとした異世界生活のお話。
名もなき朝の唄〈湖畔のフレンチレストランで〉
市來茉莉(茉莉恵)
ライト文芸
【本編完結】【後日談1,2 完結】
写真を生き甲斐にしていた恩師、給仕長が亡くなった。
吹雪の夜明け、毎日撮影ポイントにしていた場所で息絶えていた。
彼の作品は死してもなお世に出ることはない。
歌手の夢破れ、父のレストランを手伝う葉子は、亡くなった彼から『給仕・セルヴーズ』としての仕事を叩き込んでもらっていた。
そんな恩師の死が、葉子『ハコ』を突き動かす。
彼が死したそこで、ハコはカメラを置いて動画の配信を始める。
メートル・ドテル(給仕長)だった男が、一流と言われた仕事も友人も愛弟子も捨て、死しても撮影を貫いた『エゴ』を知るために。
名もなき写真を撮り続けたそこで、名もなき朝の唄を毎日届ける。
やがて世間がハコと彼の名もなき活動に気づき始めた――。
死んでもいいほどほしいもの、それはなんだろう。
北海道、函館近郊 七飯町 駒ヶ岳を臨む湖沼がある大沼国定公園
湖畔のフレンチレストランで働く男たちと彼女のお話
★短編3作+中編1作の連作(本編:124,166文字)
(1.ヒロイン・ハコ⇒2.他界する給仕長の北星秀視点⇒3.ヒロインを支える給仕長の後輩・篠田視点⇒4.最後にヒロイン視点に戻っていきます)
★後日談(続編)2編あり(完結)
ダンジョンが出現して世界が変わっても、俺は準備万端で世界を生き抜く
ごま塩風味
ファンタジー
人間不信になり。
人里離れた温泉旅館を買い取り。
宝くじで当たったお金でスローライフを送るつもりがダンジョンを見付けてしまう、しかし主人公はしらなかった。
世界中にダンジョンが出現して要る事を、そして近いうちに世界がモンスターで溢れる事を、しかし主人公は知ってしまった。
だが主人公はボッチで誰にも告げず。
主人公は一人でサバイバルをしようと決意する中、人と出会い。
宝くじのお金を使い着々と準備をしていく。
主人公は生き残れるのか。
主人公は誰も助け無いのか。世界がモンスターで溢れる世界はどうなるのか。
タイトルを変更しました
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです
紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。
公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。
そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。
ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。
そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。
自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。
そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー?
口は悪いが、見た目は母親似の美少女!?
ハイスペックな少年が世界を変えていく!
異世界改革ファンタジー!
息抜きに始めた作品です。
みなさんも息抜きにどうぞ◎
肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!
防御魔法しか使えない聖女はいらないと勇者パーティーを追放されました~そんな私は優しい人と出会って今は幸せです
土偶の友
ファンタジー
聖女のクロエは歴代最強クラスの防御魔法を使うことが出来た。しかし、その代償として彼女は聖女なのに回復魔法が一切使えない。
「お前、聖女なのに回復魔法使えないってホント?」「付与術師の私でも回復魔法使えるのに、聖女の貴方が使えないってどういうこと?」勇者パーティーではそのことを言われ続け、使えない聖女として扱われる。
そんな彼女には荷物持ち、夜の見張り番、料理当番。そういった雑用全てを押し付けられてきた。彼女の身も心もボロボロになっていく。
それでも懸命に人類の為にとこなしていた彼女だが、ついには役立たずはいらないからと危険な森で1人、勇者パーティーを追放される。
1人彷徨っていたところを真紅の髪の冒険者に助けてもらう。彼は聖女の使う防御魔法を褒めてくれて、命の恩人だとまで言ってくれる。
勇者パーティーから追放された聖女の幸せな旅が始まり、聖女を追放した勇者パーティーは様々な不都合が起きていき、機能しなくなっていく。料理が出来るものはいない。見張りは長時間になり体力の消耗が激しくなる。そして、敵の攻撃が強くなったような気がする。
しかし、そんなことは知ったことかと聖女は身分を隠して自分のやりたいことをやって人々に感謝される。それでも結局彼女は聖女と呼ばれて、周りと幸せになっていく聖女の物語。
小説家になろう様でも投稿しています。あらすじを少し変更しました。
2020.12.25HOTランキングに載ることが出来ました! 最初から読んでくださった方も、新しく読みに来てくださった方も本当にありがとうございます。
【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~
うり北 うりこ
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。
絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。
今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。
オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、
婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。
※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。
※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。
※途中からダブルヒロインになります。
イラストはMasquer様に描いて頂きました。
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる