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第76話 殺人鬼狩り

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 人間狩りとは特に問題なかったが、殺人鬼を始末するのは骨が折れた。
 彼らは弱肉強食における捕食者の最上位だ。
 単独或いは少数でモンスターや人間を殺し続けてきた狂人で、変容は一般人の深度とは比較にならない。
 高い戦闘能力を持っており、この世界で最も油断ならない生物である。
 それが殺人鬼だ。

 しかし、彼らとて無敵ではない。
 現在はネットで弱点を調べることができる。
 有名な者ほど色々な情報が暴かれていた。
 その環境を維持しているのがまた殺人鬼であるのも皮肉な話だが。

 隣の市や県に出没した殺人鬼は常にチェックしていた。
 特に新規で掲載された者については、見逃さないように心がけている。
 そうして遭遇した殺人鬼とネットの情報を照らし合わせて、有効な戦法を組み立てていくのだ。

 ネットでヒットしない者については、しばらく尾行して生活ぶりや戦闘スタイルや執着心の対象を探る。
 殺人鬼は強い恐怖や殺気に敏感なので、平常心で監視していると案外見つからない。
 隠密技能はここでも役立ってくれた。

 この数日で六名の殺人鬼を始末した。
 即死させたのが一人。
 一撃目で瀕死に追い込み、そのまま殺せたのが二人。
 泥沼の削り合いになったのが二人。
 満身創痍で死にかけながら不意打ちで逆転できたのが一人。

 戦績としては悪くない。
 ネットの情報が役立つことがあれば、デマに騙されて失敗することもあった。
 最終的には自分の勘が最も頼りになる気がする。
 咄嗟の攻撃は意外と有効だ。
 生存本能が働いた結果、最適解を打てたのかもしれない。

 殺人鬼との戦いを繰り返して、一つはっきりしたことがある。
 人間の変容は、適性のある傾向に偏るものらしい。

 ストレングスなら単純な身体機能の向上。
 道化王子ならスライムの身体。
 紙袋姫なら植物を操る力。

 複数の能力を使いこなしているように見える場合でも、発想と工夫による応用であるのが大半だった。
 そして変容の深度が深まるほど、適性の低い能力は薄まって消えていく。
 強くなった者ほど一系統に特化しているということだ。

 今朝になって調べたところ、ネットでも似た仮説がいくつも挙がっていた。
 だから的外れな推測ではないはずだ。
 少なくともここまで見てきた現実はそこに当てはまっていた。

 だからこそ六名の殺人鬼の適性と弱点を洗い出して、仕留めることができたのだ。
 狂った世界は、極端な超人ばかりが生まれる状態になっていた。
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