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第74話 穏やかな帰路

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 翌日、ボーリング場から四人で帰宅する。
 付近で仲間にできそうな殺人鬼もいないので、戻って計画を組み直すことにしたのだ。

 殺人鬼と接触するのはリスキーである。
 今回は偶然にも上手くいったが、次もそうなるとは限らない。
 数を揃えた方が戦力的に頼もしいものの、仲間内での争いを招く恐れがあった。
 一旦戻り、諸々と考えるのが最適かと思ったのだ。

 帰りは配達用のバイクにストレングスが乗り、その背中に道化王子がしがみ付いている。
 至福に満ちた顔は緩み切っているが、視線が合うと睨まれた。
 ストレングスを狙っていると勘違いされたらしい。
 戦闘中に背後から刺されるのは避けたいので、なるべく見ないようにする。

 一方、こちらは放置車両のオープンカーを運転していた。
 助手席には紙袋姫が乗っている。
 彼女は嬉しそうにラジオを弄り、気に入った曲が見つかると美声で歌唱する。
 基本的にその繰り返しだった。
 こちらもこちらで幸せらしい。

 帰路を阻むモンスターはいない。
 効率重視で目立つ道を選んでいるが、一度も遭遇することはなかった。
 彼らは本能的に危険を感じ取ったのだろう。

 こちらは四人グループで、そのうち三人が殺人鬼だ。
 よほどのモンスターでなければ負ける気がしない。
 実に安全な道程であった。

 ほどなくしてファミレスに到着する。
 ここならば物資が豊富で広々としている。
 足りないものは近所の家を使えばいい。
 拠点には打ってつけだろう。

 ファミレスに荒らされた形跡はなかった。
 これには密かに安堵した。
 誰かが侵入して盗みを働いて、ストレングスが怒り狂う可能性を考えていたからのだ。

 無事だったのは、付近の地域に人がいない証拠なのかもしれない。
 ヒュージセンチピードを目撃した者はまず逃亡を考えるだろう。
 なるべく離れたいと考えるはずだ。

 現在まで死んでいない者は、多かれ少なかれ生存術を身に付けている。
 大きな危険を避けるのは当然の判断だった。

 しかし、それでもいつかは覚悟を決めなばならない。
 この世界に安全地帯など存在しないのだ。
 ネットではそれらしき情報が流れているものの、真偽は怪しいものである。
 狡猾な人間狩りが獲物を呼び寄せるための罠かもしれない。

 だからどこかで戦う必要があった。
 死にたくなければ力を得るしかない。

 ヒュージセンチピードは必ず殺す。
 ファミレスを再訪した時からそう決めた。
 孤独な状態から殺人鬼を味方に付けられたのだから、やり方次第で不可能ではないだろう。
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