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第72話 勝者の魅力
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思わぬ展開を経て、紙袋姫が仲間に加わった。
彼女は懐から予備の紙袋を取り出して頭から被る。
やはりトレードマークは外せないらしい。
不気味な容姿だが、ストレングスが同行している時点で考えるだけ無意味だった。
紙袋姫と和解できたのは嬉しい誤算である。
しかし、まだ気を抜いてはいけない。
彼女が生きているとなると、道化王子も死んでいない可能性があった。
道化王子はかなり強い殺人鬼だ。
ストレングスによって殺されたように見えたが、復活しているかもしれない。
窓際に駆け寄って地上を見下ろす。
血だまりの中に道化王子の死体はなかった。
それを認めた瞬間、すぐさま室内に顔を戻して武装を確認する。
銃器に弾を装填していつでも攻撃できるように備えた。
周囲の音に集中し、些細な違和感を逃さないように注意する。
間もなく階段から足音が聞こえてきた。
奇妙なリズムは、片脚を引きずっているからだろう。
やがて現れたのは満身創痍の道化王子だ。
タキシードは至る所が破れて血だらけで、へし折れた右脚は垂れ下がり、骨が飛び出している。
代わりに両手を床につけることで姿勢を安定させていた。
顔を隠すピエロマスクは大きく変形し、陥没して頭部にめり込んでいる。
その奥に覗く双眸は、ぎらぎらと熱狂的な光を発散させていた。
大量に吐血しながらも弱々しい気配はしない。
むしろ今の道化王子は、凄まじいほどの生命力を感じさせる。
嫌な予感は的中した。
道化王子はまだ死んでおらず、報復に来たのだ。
しかし瀕死なのは間違いない。
この三人で協力すれば殺すのは容易なはずである。
道化王子は両手と片脚の力で獣のように疾走した。
彼が真っ先に狙うのはストレングスだ。
やはり自分を追い込んだ相手に復讐したいようだった。
標的となったストレングスが嬉しそうに鉈と斧を掲げて、猛速で叩き付ける。
道化王子の右手が吹き飛び、胴体が一気に引き裂かれた。
止めを刺すには十分すぎるダメージだった。
ところが彼の勢いは止まらない。
少しも怯まず前のめりになって突っ込むと、ストレングスの身体に手を回して掴まった。
そして笑顔を湛えながら見上げる。
あの体勢からどうする気だ。
自爆でもするつもりなのだろうか。
退避も視野に入れて構えていると、ざらついた声で道化王子が発言する。
その内容は、ストレングスへのプロポーズだった。
彼女は懐から予備の紙袋を取り出して頭から被る。
やはりトレードマークは外せないらしい。
不気味な容姿だが、ストレングスが同行している時点で考えるだけ無意味だった。
紙袋姫と和解できたのは嬉しい誤算である。
しかし、まだ気を抜いてはいけない。
彼女が生きているとなると、道化王子も死んでいない可能性があった。
道化王子はかなり強い殺人鬼だ。
ストレングスによって殺されたように見えたが、復活しているかもしれない。
窓際に駆け寄って地上を見下ろす。
血だまりの中に道化王子の死体はなかった。
それを認めた瞬間、すぐさま室内に顔を戻して武装を確認する。
銃器に弾を装填していつでも攻撃できるように備えた。
周囲の音に集中し、些細な違和感を逃さないように注意する。
間もなく階段から足音が聞こえてきた。
奇妙なリズムは、片脚を引きずっているからだろう。
やがて現れたのは満身創痍の道化王子だ。
タキシードは至る所が破れて血だらけで、へし折れた右脚は垂れ下がり、骨が飛び出している。
代わりに両手を床につけることで姿勢を安定させていた。
顔を隠すピエロマスクは大きく変形し、陥没して頭部にめり込んでいる。
その奥に覗く双眸は、ぎらぎらと熱狂的な光を発散させていた。
大量に吐血しながらも弱々しい気配はしない。
むしろ今の道化王子は、凄まじいほどの生命力を感じさせる。
嫌な予感は的中した。
道化王子はまだ死んでおらず、報復に来たのだ。
しかし瀕死なのは間違いない。
この三人で協力すれば殺すのは容易なはずである。
道化王子は両手と片脚の力で獣のように疾走した。
彼が真っ先に狙うのはストレングスだ。
やはり自分を追い込んだ相手に復讐したいようだった。
標的となったストレングスが嬉しそうに鉈と斧を掲げて、猛速で叩き付ける。
道化王子の右手が吹き飛び、胴体が一気に引き裂かれた。
止めを刺すには十分すぎるダメージだった。
ところが彼の勢いは止まらない。
少しも怯まず前のめりになって突っ込むと、ストレングスの身体に手を回して掴まった。
そして笑顔を湛えながら見上げる。
あの体勢からどうする気だ。
自爆でもするつもりなのだろうか。
退避も視野に入れて構えていると、ざらついた声で道化王子が発言する。
その内容は、ストレングスへのプロポーズだった。
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