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第71話 愛愛愛と殺戮
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予想だにしない行動を受けて、思考が停止する。
その間、紙袋姫は赤面して抱き付いていた。
締め殺すわけでもなく、人肌を感じる程度の密着具合である。
とりあえず身体の調子を確認した。
特に攻撃を受けている感じはしない。
口づけやハグも何らかの作戦かと疑ったが、別に異常は見当たらなかった。
植物系統の変容なので、てっきり種や蔦を体内に仕込んできたものかと思った。
どうやらそういうわけではないらしい。
いつの間にか紙袋姫から生える蔦が大人しくなっている。
ストレングスは不思議そうにこちらを見ていた。
狂気に浸る彼女も攻撃すべきか迷っている。
つまり紙袋姫は殺気を出していない。
熱心ではあるが、その方向性は些か異なっていた。
突然の事態でよく分からないものの、彼女から対話できそうな雰囲気は感じ取れた。
しっかりと抱き付く紙袋姫を少し離す。
目を見て話しかけると、照れる彼女はぽつぽつと事情を説明し始めた。
曰く、徹底的に嬲られた挙句に完敗したことで惚れてしまったらしい。
徐々に首を斬られる感覚で愛が芽生えたそうだ。
道化王子に半殺しにされたことで彼に執着した紙袋姫だが、今回の負け方はその時の衝撃を上回ったとのことだった。
だから思わず抱き付いてキスをしたのだという。
内容は理解できる。
しかし、とても共感できる話ではなかった。
それでも紙袋姫は真剣だ。
誤魔化しや冗談を言っているわけでないことはよく分かる。
真摯な眼差しが逆に辛い。
ちなみに彼女はまだいくつかの能力を温存していた。
ネットで知った飛行や分裂の他にも、格下の植物系統のモンスターを操れるという。
使い方次第ではとんでもない能力だろう。
紙袋姫が能力を万全に使いこなした場合、勝てる見込みは非常に低かったのではないか。
そう思って率直に尋ねたところ、やはり予想外の答えが返ってきた。
彼女がそれをしなかったのは、戦い方の好みとは違うためらしい。
紙袋姫という殺人鬼は、上空からの遠距離攻撃や、分裂やモンスター使役といったやり方が好きではない。
近距離で血みどろの殺し合いを演じるのが快感だという。
うっとりとした様子で主張されたが、生憎と共感できる内容ではなかった。
それでも一応は答えになっている。
だから無理やり納得することにした。
色々と突飛な話で混乱してしまいそうだが、紙袋姫は降参して仲間になった。
正確には恋人志望であるものの、そこは濁しておく。
イエスにしろノーにしろ、ここで答えをはっきりさせると取り返しのつかないことになりそうな予感がした。
回答を曖昧にして先延ばしにする術は、サラリーマン時代に習得した。
だから何も難しいことではなかった。
誰も傷付かないのだからそれでいいのだ。
その間、紙袋姫は赤面して抱き付いていた。
締め殺すわけでもなく、人肌を感じる程度の密着具合である。
とりあえず身体の調子を確認した。
特に攻撃を受けている感じはしない。
口づけやハグも何らかの作戦かと疑ったが、別に異常は見当たらなかった。
植物系統の変容なので、てっきり種や蔦を体内に仕込んできたものかと思った。
どうやらそういうわけではないらしい。
いつの間にか紙袋姫から生える蔦が大人しくなっている。
ストレングスは不思議そうにこちらを見ていた。
狂気に浸る彼女も攻撃すべきか迷っている。
つまり紙袋姫は殺気を出していない。
熱心ではあるが、その方向性は些か異なっていた。
突然の事態でよく分からないものの、彼女から対話できそうな雰囲気は感じ取れた。
しっかりと抱き付く紙袋姫を少し離す。
目を見て話しかけると、照れる彼女はぽつぽつと事情を説明し始めた。
曰く、徹底的に嬲られた挙句に完敗したことで惚れてしまったらしい。
徐々に首を斬られる感覚で愛が芽生えたそうだ。
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だから思わず抱き付いてキスをしたのだという。
内容は理解できる。
しかし、とても共感できる話ではなかった。
それでも紙袋姫は真剣だ。
誤魔化しや冗談を言っているわけでないことはよく分かる。
真摯な眼差しが逆に辛い。
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使い方次第ではとんでもない能力だろう。
紙袋姫が能力を万全に使いこなした場合、勝てる見込みは非常に低かったのではないか。
そう思って率直に尋ねたところ、やはり予想外の答えが返ってきた。
彼女がそれをしなかったのは、戦い方の好みとは違うためらしい。
紙袋姫という殺人鬼は、上空からの遠距離攻撃や、分裂やモンスター使役といったやり方が好きではない。
近距離で血みどろの殺し合いを演じるのが快感だという。
うっとりとした様子で主張されたが、生憎と共感できる内容ではなかった。
それでも一応は答えになっている。
だから無理やり納得することにした。
色々と突飛な話で混乱してしまいそうだが、紙袋姫は降参して仲間になった。
正確には恋人志望であるものの、そこは濁しておく。
イエスにしろノーにしろ、ここで答えをはっきりさせると取り返しのつかないことになりそうな予感がした。
回答を曖昧にして先延ばしにする術は、サラリーマン時代に習得した。
だから何も難しいことではなかった。
誰も傷付かないのだからそれでいいのだ。
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