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第63話 スカウトマン

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 ストレングスの逞しい背中に掴まり、バイクで市内を移動する。
 ヒュージセンチピードを倒すために必要な殺人鬼に会いに行くところだった。

 ネットの情報を駆使して候補は絞っている。
 戦闘能力は大前提として、交渉しやすい性質でなければいけない。
 問答無用でいきなり襲いかかってくるような者は論外だ。
 殺人鬼の中にはモンスターと区別が付かないような存在もいるという。
 何に執着しているのか不明な者は特に駄目だろう。

 次の条件は、なるべく近所で活動していることである。
 長距離の移動はそれだけリスクが高まる。
 それに時間がかかりすぎる。
 ヒュージセンチピードがいなくなるかもしれない。

 それはそれで解決になる気もするが、殺すと決めたのだからしっかりと仕留めておきたい。
 また舞い戻ってくる可能性もあるのだ。
 姿が見えるうちに殺せるのが一番だろう。

 そうして辿り着いたのは、ファミレスから三十分ほど移動した場所にあるボーリング場だ。
 ここを殺人鬼がアジトにしているという情報があった。
 動画も見つかったので信憑性は高いだろう。

 ストレングスは駐車場にバイクを停めると、近くに設置された車止めのブロックを指の力で引き剥がす。
 それらを両手で掴んで保持した。
 どうやらそれが彼女の武器らしい。
 投げるか叩き付けるのだろう。

 変容した膂力を駆使すれば、きっと破滅的な威力になる。
 頑丈なモンスターでも木端微塵にできるだろう。
 少なくともこちらに振るわれたいとは思えなかった。

 移動中の話し合いにより、ストレングスが前衛を務めることになった。
 基本的に彼女が危険を排除する。
 代わりに彼女から任されたのは情報提供と交渉係だ。

 こちらとしては実にありがたい話である。
 上手く協力者に引き込むばかりか、戦闘もこなしてくれるという。
 殺し合いでのリスクが劇的に低くなったのは言うまでもない。

 ただし、戦闘には参加させてもらうことを伝えてある。
 ストレングスに頼りすぎると、変容が進まなくなるからだ。
 確かに楽はできるものの、将来的に見れば損失と言える。

 やはりモンスターの殺害を経験して強くならねばならなかった。
 殺人鬼を味方に引き込むとは言え、ヒュージセンチピードとの戦いには身を投じるのだ。
 最低限の能力がなければ巻き添えで死ぬ恐れが非常に高い。
 今の状況を考えた場合、ストレングスを盾にモンスターを殺して変容を深めるのがベストだろう。
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